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氷と光の交錯――ウィーン市庁舎前のアイススケートリンク

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月6日
  • 読了時間: 3分

1. 冬の夕暮れ、ライトが照らす市庁舎

 ウィーンの冬、カフェやストリートではグリューワイン(ホットワイン)の香りが漂い、街にはどこかクリスマスの余韻と寒さを楽しむムードが残っている。**市庁舎(Rathaus)**は壮麗なゴシック様式の建物で、夜になるとライトアップによってその尖塔が金色に浮かび上がる。 その前の広場では、毎年恒例のアイススケートリンクが設置され、冬の街を彩る一大イベントが行われる。遠くから見れば、ライトアップされた市庁舎を背景に、まるで氷の舞台と化した広場が、やわらかな光を放っているのがわかる。

2. 木々の間をすべる小径と光のトンネル

 普通のスケートリンクとは違い、Wiener Eistraumでは市庁舎前の広場だけでなく、公園の木々の間にも氷の小径が敷かれる。カラフルなランプが枝に巻き付けられ、夜の闇を背景に光のトンネルができあがる。 滑る人々はおしゃれなウィーンっ子や観光客、子ども連れまでさまざまで、楽しげな歓声が絶えず響いてくる。「注意してください!」という係員の声に耳を傾けながら、木立の間をくねくねと回り、時には友人や恋人と手を繋ぎながら、氷の上を進む姿が微笑ましい。

3. 屋台とホットドリンクの香り

 広場の端には屋台が並び、温かい飲み物やフードが販売されている。**ホットワイン(Glühwein)**やホットチョコレート、スパイスを効かせたパンチ、さらには簡単なスナックやソーセージまで取り揃えられ、寒空の下で滑り疲れた身体を温める人々がひと息ついている。 スケート靴を脱いでベンチに腰を下ろすカップルは、ホットワインを片手にマフラーを巻き直し、「もう一度滑る?」と顔を見合わせて笑っている。夜風が少し冷たくても、ホットドリンクを味わいながらキラキラと光る氷上を眺めれば、その寒さも特別なものと感じられるのだ。

4. ゴシックの尖塔に映る人々の影

 ウィーン市庁舎の高い尖塔を見上げると、ライトアップされたゴシック建築が闇夜にくっきりと映える。その足元には氷上を行き交う人々の影が青白く投影され、まるで建物と氷の織り成す別世界が広がっているかのよう。 BGMに合わせて子どもたちが速いスピードで滑り去り、時折転びそうになりながらも笑みを浮かべる。大人たちも寄り添って支え合いながら滑り、写真や動画に収める瞬間を探している。

5. 夜更けのワルツと最後の余韻

 日がすっかり落ち、時刻が進むにつれてリンクの賑わいは少しずつ落ち着いてくるが、まだまだ多くの人が氷上で舞っている。アナウンスが流れ、「もうすぐクローズのお時間です」と告げられると、少し物寂しい空気が漂い始める。 しかし、最後にはウィーンのワルツがBGMとして流れ、リンク上の人々が心地よいフィナーレを彩るように滑り続ける。市庁舎のライトが鮮やかに瞬き、氷面に映る光がゆらゆらと揺れる――この光景が長い冬の一夜を美しく締めくくるのだ。

エピローグ

 ウィーン市庁舎のアイススケートリンク――ゴシック様式の市庁舎を背景に、氷の上で人々が楽しそうに滑る冬の風物詩。 色とりどりのライト、温かい屋台の飲み物、そして夜の寒さを忘れるほどの興奮と笑顔。もしこの季節にウィーンを訪れるなら、市庁舎前の氷の道を一度は体験してほしい。風に乗る笑い声と、くるくる回るワルツの調べが、ウィーンの夜をいっそう華やかにしてくれるだろう。

(了)

 
 
 

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