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ガラスのドームに映る歴史――ドイツ国会議事堂

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月5日
  • 読了時間: 3分

1. 朝の光とレンガの重み

 ドイツの首都ベルリン。ブランデンブルク門を背にして少し歩くと、重厚な外観を持つ**国会議事堂(Reichstagsgebäude)**が立ち上がる。朝の清々しい陽射しを受け、レンガと石で築かれた正面にはまだ夜の冷気が残っているようだが、玄関口には観光客が集い始めている。 この建物は19世紀末に建造され、ドイツの近現代史を象徴する場として激動の時代をくぐり抜けてきた。爆撃の痕や、長い間放置された荒廃の記憶を経て、現代のガラスドームを冠した姿へ再生された様は、まさにドイツ再統一のシンボルとも言われている。

2. ガラスのドームへの道

 館内へ入ると、厳格なセキュリティチェックを受け、ガイドツアーあるいは予約者向けに上階へのエレベーターが案内される。そこには、建築家ノーマン・フォスター氏の設計による大きなガラスドームが待っている。 クリアなガラス越しに見えるのは、ベルリンの街並み――歴史的建造物や近代的な高層ビル、そして遠方にはテレビ塔などが点在するパノラマだ。ドーム内部に設けられたスパイラル状の通路を進むにつれ、空に近づくような感覚とともに360度の絶景が広がる。

3. 歴史を映す壁面とドームの仕掛け

 国会議事堂を歩くと、各所に歴史を感じさせる展示がある。旧ドイツ帝国時代、ヴァイマル共和国、ナチス政権時代、東西分断、そして再統一へ――その道のりを物語るパネルや写真が、無言の説得力をもって迫ってくる。 ドーム下の議場近くには、光を反射・収束させる鏡柱(コーン)などの環境工学的な仕掛けもあり、自然光が議場を照らすことで“透明で開かれた政治”の象徴を示している。ガラスの壁に自らの姿が映り込むたび、歴史に触れながら“いま”という時代を自分自身で反省するような感覚を覚えるかもしれない。

4. 屋上テラスから望むベルリン

 ドームを回りきったあとは、屋上テラスに出るといい。ここでは青い空と雲、そしてベルリンの街が水平線まで見渡せる。ブランデンブルク門はすぐ向こうに小さく見え、その先にはポツダム広場やティーアガルテン、公園の緑が涼しげに広がっている。 ティーアガルテンを挟んで遠方には連邦首相府や各国大使館、さらに川沿いには新しく建てられた近代建築が林立し、ドイツの政治と経済の中枢を形作っていることを改めて実感できる。

5. 夕暮れとライトアップの変貌

 夕方になると、レンガや石の壁面が金色に染まり、ガラスドームはオレンジの光を内側から放つ。観光客が減り、ゆったりと時が流れる中で眺める国会議事堂は、昼間の厳粛さとは打って変わってどこか柔らかく、夜のベルリンにゆっくりと溶け込んでいく。 夜にはライトアップが施され、浮かび上がるドームはまるで未来的な彫刻のようにも見える。かつての爆撃や分断の歴史を想像するのが難しくなるほど、美しい反射と光の調和を見せる姿は、「過去から未来へと続く政治の殿堂」のイメージを強く呼び起こす。

エピローグ

 ドイツの国会議事堂(Reichstagsgebäude)―― そこには近代ドイツが歩んだ道のりの象徴であり、同時に再統一後の民主政治を体現するガラスドームがそびえている。 壁を隔てていた時代を超え、いまは世界中から訪れる人々に開かれた空間となった。歴史的なレンガと近未来的なガラスが同居する姿は、過去と現在の融合を物語る。 もしベルリンを訪れたなら、ぜひ国会議事堂へ足を運び、ガラスドームから街を見下ろしてみてほしい。そこにはドイツの歴史と未来、そして世界への視線が交差する、とてつもなく広大な空間が広がっているのだ。

(了)

 
 
 

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