top of page

「トリチウム・ハブ」としての融合・分裂ハイブリッド炉燃料・廃棄物統合管理による2050年核融合移行の加速


要旨

私は、融合・分裂ハイブリッド炉、すなわち二重炉の最大の経済的価値は、従来言われてきた「発電」や「未臨界核変換」だけにはないと考える。2050年の核融合産業で最も不足する戦略資源は、炉そのものでも、リチウムでも、電力需要でもなく、起動可能な形で計量・貯蔵・輸送・貸与できるトリチウム在庫である。純粋D-T核融合炉は、理論上はリチウムブランケットでトリチウムを自己増殖する。しかし、その炉を最初に起動し、燃料サイクルを満たし、停止・再起動リスクを吸収し、次号機を立ち上げるためには、外部からの初期トリチウムが必要である。ここに、純粋核融合炉の見落とされがちな「燃料流動性ボトルネック」がある。

本稿で私は、二重炉を「純粋核融合炉と競合する複雑な発電所」ではなく、核融合時代の燃料工場、廃棄物処理工場、戦略備蓄機関、そしてトリチウム中央銀行として再定義する。二重炉は、自炉のD-T燃料を賄うだけでなく、マイナーアクチニドを含む核分裂性廃棄物をサブクリティカルに燃焼・核変換しながら、外部の純粋核融合炉へ初期トリチウムを供給する「Tritium Hub Reactor」として設計されるべきである。私はこの価値を、単なるLCOEではなく、一基のハブが年間にどれだけの純粋核融合発電容量を起動可能にするかという新指標、Tritium Transition Multiplierで評価することを提案する。

1. 問題設定:2050年の核融合市場は「電力市場」ではなく「燃料在庫市場」から始まる

2050年に向けて、原子力全体の市場環境は明らかに変わりつつある。IEAは、世界で63基・70GW超の原子炉が建設中であること、さらに2050年までに世界の原子力容量を3倍にする多国間イニシアチブが立ち上がっていることを報告している。原子力投資も2020年以降の3年間で約50%増え、年600億米ドルを超えたとされる。これは、脱炭素・電力安定供給・データセンター需要が、再び原子力を大規模インフラ市場へ押し戻していることを意味する。

核融合も同じ文脈に入っている。IAEAのWorld Fusion Outlook 2025は、世界で多数の核融合プラント概念が各段階で開発され、政策・投資・規制・サプライチェーンを含む「核融合エコシステム」が形成されつつあると整理している。DOEの2025年Fusion Science and Technology Roadmapも、商用化に向けた重点領域を、構造材料、プラズマ対向機器、閉じ込め系、燃料サイクル、ブランケット、プラント工学・統合に分けている。ここで燃料サイクルとブランケットが独立領域として扱われている点は決定的である。核融合の主戦場は、炉心物理だけでなく、トリチウムを含むプラント統合へ移っている。

私は、ここに二重炉の新しい市場価値を見出す。核融合炉が多数建設される時代には、最初に不足するのは「発電所」ではない。最初に不足するのは、安全ケースに組み込める、監査可能で、商業契約に載せられるトリチウム初期在庫である。石油産業に油田だけでなく備蓄基地、精製所、タンカー、先物市場、国家備蓄が必要だったように、D-T核融合産業にはトリチウム生産・精製・貯蔵・貸与・回収・会計を担うハブが必要になる。

2. 現状の問題点

2.1 純粋核融合炉は「自己増殖」できても、起動前には自己増殖できない

純粋D-T核融合炉は、リチウムブランケットでトリチウムを増殖し、燃やした分を自給する構想である。しかし、これは炉が既に運転している状態を前提にしている。起動前には、プラズマに投入する燃料、排気系・同位体分離系・貯蔵系・配管・ブランケット抽出系を満たす初期在庫が必要になる。

Kovariらの解析では、ITERに必要なトリチウムはCANDU由来で供給されるが、その後にOntarioからDEMO向けに供給できる量は楽観シナリオでも限定的であり、2055年頃に8kgまたは16kg程度というシナリオが示されている。また、複数国がDEMO級炉を建設すれば、在庫を分け合う必要があるとも指摘されている。さらに、外部トリチウムなしで起動する理論的可能性はあっても、トリチウム1kgを節約するコストが約20億米ドルに達し得るため、経済的に合理的ではないとされる。

この論点は、しばしば過小評価される。TBRが1.05であっても、起動在庫、燃料サイクル滞留、在庫減衰、漏えい、精製遅れ、再起動余裕を考慮すれば、外部トリチウム需要は消えない。トリチウムの物理半減期は12.33年であり、保有するだけで毎年約5.5%の実効価値が失われる。

2.2 燃料サイクルは、まだ「周辺設備」ではなく未成熟な主機器である

F4E/EUROfusionの2025年燃料サイクル技術マッピング報告書は、磁場閉じ込め核融合では注入燃料のうち燃える割合が最大でも数%にとどまり、未燃D-T、He、不純物を排気・分離・精製・再投入する必要があると整理している。その処理は大きなトリチウム在庫を動員し、結果として高価で供給制約のある大きな起動在庫を要求する。さらに、トリチウムプラントには燃料貯蔵、ブランケット由来トリチウム処理、空気・水の除染、トリチウム計測・アカウンタンシーが必要である。

同報告書は、燃料サイクル内の多数のサブシステムや処理機器にトリチウムが部分的に保持されるため、高度な在庫管理と信頼できる精密測定が必要であるとも述べている。欧州では意味のある量のトリチウムを扱える試験施設が限られ、100g超級のトリチウム取扱能力を持つ試験施設の整備が戦略的優先事項とされている。

私は、この現状を「純粋核融合炉の燃料プラントが未成熟」と見るだけでは不十分だと考える。むしろ、トリチウム燃料サイクルは、個別炉ごとに重複して未成熟なまま建設するのではなく、ハブ化して産業インフラとして成熟させるべき工程である。

2.3 核分裂側には、処理すべき巨大なバックエンド資産がある

核分裂側にも、未解決の巨大な資産、あるいは負債が存在する。IAEAの2025年版Status and Trends報告は、2019年末時点を中心とするデータに基づき、世界に約301,000 tHMの使用済燃料が貯蔵され、固体放射性廃棄物の総量は約3,200万m³に達すると推定している。使用済燃料は、国によって「廃棄物」として扱われる場合も、「資産」として再処理される場合もある。

ここで重要なのは、マイナーアクチニドが単なる廃棄物ではなく、中性子経済の中では「処理サービスの対象」であり得る点である。ARCベースの融合・分裂ハイブリッド解析では、再処理燃料を核変換層へ挿入し、TRU/Th酸化物燃料とTRU/Th窒化物燃料を比較する研究が行われ、窒化物系がマイナーアクチニド核変換効率で有利になり得ることが示されている。

つまり、核融合側には「初期トリチウムが足りない」という問題があり、核分裂側には「長期放射毒性・発熱・社会受容性を持つバックエンド負債」がある。私は、この二つを別々に解くのではなく、二重炉を介して同じ制度・同じ中性子経済の中で結合すべきだと考える。

3. 中心仮説:二重炉は発電所ではなく「トリチウム・ハブ」である

従来、融合・分裂ハイブリッド炉は、核融合中性子で未臨界核分裂ブランケットを駆動し、発電、燃料増殖、廃棄物核変換を行う装置として論じられてきた。過去の米国研究ニーズ報告も、ハイブリッドではトリチウム増殖と核分裂燃料増殖・核変換を同時に満たすブランケット中性子工学が核心課題であると整理している。一方で、ハイブリッドは新しい核技術であり、ライセンス、保障措置、安全ケース、経済性、廃棄物処分を十分に分析する必要があるとも指摘している。

私は、このハイブリッド炉を次のように再定義する。

二重炉は、純粋核融合炉に置き換わる電源ではない。二重炉は、純粋核融合炉を増やすための燃料・廃棄物統合インフラである。

この再定義により、二重炉の評価軸は変わる。二重炉を「安い電気を売る炉」として評価すると、融合コア、核分裂ブランケット、再処理燃料、トリチウム設備、保障措置を統合する複雑性のため、LCOEで苦戦する可能性が高い。しかし、二重炉を「トリチウムを供給し、マイナーアクチニドを処理し、核融合炉群の立ち上げを早めるインフラ」と見れば、その価値は電力市場だけでは測れない。

私は、二重炉の価値を四つの収益束に分ける。

第一に、トリチウム燃料サービスである。自炉燃料を超えて、外部炉へ初期在庫を貸与・販売・備蓄する。

第二に、マイナーアクチニド処理サービスである。既存核分裂炉由来の長寿命核種を受け入れ、核変換し、処分場負担を下げる。

第三に、安定電力・熱供給サービスである。サブクリティカル核分裂ブランケットから取り出す熱により、売電・産業熱・水素製造等へ展開する。

第四に、核融合移行加速価値である。トリチウム不足で純粋核融合炉の商業運転が遅れることを防ぎ、核融合産業全体の導入速度を上げる。

4. 定量モデル:TBRではなく「輸出可能トリチウム増殖比」を見る

4.1 通常のTBRは経済指標として不十分である

私は、二重炉を評価するために、通常のTBR、すなわちTritium Breeding Ratioだけでは不十分だと考える。なぜなら、TBRは「生成されたトリチウム」を数えるが、事業価値を持つのは「回収され、精製され、計量され、規格化され、契約上移転可能なトリチウム」だからである。

そこで私は、次の指標を導入する。

eTBR=Trecovered,qualified,exportableTburnedeTBR = \frac{T_{\mathrm{recovered,qualified,exportable}}} {T_{\mathrm{burned}}}eTBR=Tburned​Trecovered,qualified,exportable​​

ここで分子は、単なる生成量ではない。ブランケット内に残ったもの、配管・構造材・冷却材に滞留したもの、同位体純度が不足するもの、計量誤差が大きいもの、規制上移送できないものは除外する。私はこれをqualified exportable tritium、すなわち「認証済み輸出可能トリチウム」と呼ぶ。

自炉運転に必要な分を超える外販可能量は、次で表す。

YT=(eTBR−1−ϵloss−ϵreserve)M˙T,burn−λITY_T = \left(eTBR - 1 - \epsilon_{\mathrm{loss}} - \epsilon_{\mathrm{reserve}}\right) \dot{M}_{T,\mathrm{burn}} - \lambda I_TYT​=(eTBR−1−ϵloss​−ϵreserve​)M˙T,burn​−λIT​

ここで、ϵloss\epsilon_{\mathrm{loss}}ϵloss​ は燃料サイクル損失、ϵreserve\epsilon_{\mathrm{reserve}}ϵreserve​ は自炉再起動・事故時対応の予備在庫、λIT\lambda I_TλIT​ は在庫減衰損失である。トリチウムの半減期12.33年を考えると、備蓄が大きいほど減衰損失も無視できない。

4.2 Tritium Transition Multiplier

私は、二重炉の本質的価値を示すために、次の指標を提案する。

TTM=YTIstart,pureTTM = \frac{Y_T}{I_{\mathrm{start,pure}}}TTM=Istart,pure​YT​​

ここで、TTMTTMTTM はTritium Transition Multiplier、YTY_TYT​ は二重炉一基が年間に外部供給できるトリチウム量、Istart,pureI_{\mathrm{start,pure}}Istart,pure​ は純粋核融合炉1GWeを起動するために必要な初期トリチウム量である。

D-T反応では、1GWthの融合出力を1年間維持するために約56kgのトリチウムが燃焼する。これは17.6MeV/反応というD-T反応エネルギーからの化学量論的計算である。したがって、融合中性子源出力 PfP_fPf​、設備利用率 CFCFCF、外販可能余剰率 ΔeTBR\Delta eTBRΔeTBR を置くと、

YT≈56×Pf×CF×ΔeTBR[kg/year]Y_T \approx 56 \times P_f \times CF \times \Delta eTBR \quad [\mathrm{kg/year}]YT​≈56×Pf​×CF×ΔeTBR[kg/year]

となる。

4.3 概念シナリオ

以下は、設備利用率75%、外販可能余剰率 ΔeTBR\Delta eTBRΔeTBR を0.05〜0.30とした概念計算である。これは炉設計値ではなく、二重炉の経済価値を把握するためのスケール解析である。

融合中性子源出力

外販可能余剰率

外販T量

5kg/GWe起動時

10kg/GWe起動時

20kg/GWe起動時

0.25 GWth

0.10

1.05 kg/年

0.21 GWe/年

0.11 GWe/年

0.05 GWe/年

0.50 GWth

0.20

4.20 kg/年

0.84 GWe/年

0.42 GWe/年

0.21 GWe/年

1.00 GWth

0.20

8.41 kg/年

1.68 GWe/年

0.84 GWe/年

0.42 GWe/年

1.00 GWth

0.30

12.61 kg/年

2.52 GWe/年

1.26 GWe/年

0.63 GWe/年

2.00 GWth

0.20

16.81 kg/年

3.36 GWe/年

1.68 GWe/年

0.84 GWe/年

この表から分かるのは、二重炉が「大量発電所」でなくても、核融合移行に対して非常に大きなレバレッジを持ち得るという点である。0.5GWth級の融合中性子源でも、外販可能余剰率20%を実現できれば、年4kg級のトリチウムを供給できる。これは、純粋核融合炉の初期在庫を5〜10kg/GWeと見る場合、数年に1〜数GWeの起動を支える規模である。

5. 経済価値:二重炉の収益はLCOEではなく「移行加速価値」で評価する

通常の発電所評価では、売電収入からCAPEX、OPEX、燃料費、保守費を差し引く。しかし、トリチウム・ハブ型二重炉では、価値関数は次のように書くべきである。

NPVhub=Relectricity+Rtritium+Rwaste+Rcapacity+Rtransition−Ccapex−Copex−Csafety−CsafeguardsNPV_{\mathrm{hub}} = R_{\mathrm{electricity}} + R_{\mathrm{tritium}} + R_{\mathrm{waste}} + R_{\mathrm{capacity}} + R_{\mathrm{transition}} - C_{\mathrm{capex}} - C_{\mathrm{opex}} - C_{\mathrm{safety}} - C_{\mathrm{safeguards}}NPVhub​=Relectricity​+Rtritium​+Rwaste​+Rcapacity​+Rtransition​−Ccapex​−Copex​−Csafety​−Csafeguards​

ここで最も重要なのは、RtransitionR_{\mathrm{transition}}Rtransition​ である。これは、トリチウム不足によって純粋核融合炉の商業運転が遅れることを防ぐ価値である。

たとえば、1GWeの純粋核融合発電所が設備利用率85%、電力単価80米ドル/MWhで稼働できると仮定すると、年間売電収入は約6億米ドルである。もし5kgの初期トリチウム不足で商業運転が5年遅れれば、単純な売上機会損失は数十億米ドル規模になる。したがって、トリチウム1kgの価値は、単なる同位体価格ではなく、数百MWから1GW級の発電資産を前倒し稼働させるオプション価値として評価すべきである。

これは、二重炉の経済性を大きく変える。トリチウムを1gあたりいくらで売るか、という商品市場的な議論は二次的である。より重要なのは、トリチウム不足による商用核融合炉の遅延を何年短縮できるかである。私はこの価値を、Tritium Time-to-Market Premiumと呼ぶ。

6. 炉設計思想:トリチウム増殖層とMA核変換層を混ぜすぎてはいけない

私は、トリチウム・ハブ型二重炉のブランケットを、単純な混合ブランケットとして設計すべきではないと考える。最初の世代では、機能を明確に分けるべきである。

第一層は、高速中性子・マイナーアクチニド核変換カセットである。ここでは、未臨界度、核分裂出力分布、燃焼度、FP蓄積、残留発熱、冷却、保障措置、燃料交換性を管理する。

第二層は、リチウム主体のトリチウム増殖・抽出層である。ここでは、eTBR、トリチウム抽出速度、透過抑制、同位体純度、オンライン計量、非常時隔離を最適化する。

第三層は、遮蔽・熱回収・廃棄物分類層である。ここでは、磁石・構造材保護、熱利用、放射化物管理、交換部品の廃棄物パスポートを扱う。

この分離が重要なのは、MA核変換とトリチウム増殖は同じ中性子を奪い合うからである。MAを燃やすには高速中性子が欲しい。トリチウムを増やすにはリチウム、増倍材、減速材、抽出系が必要である。両者を同一体積内で最大化しようとすると、熱流動、腐食、トリチウム滞留、ガンマ発熱、未臨界度、安全解析が複雑化しすぎる。

したがって、私は「最高TBR」ではなく「最も説明可能なeTBR」を重視する。規制当局、投資家、需要家、国際監査機関に対して、どのトリチウムがどこで生まれ、どこを通り、どの測定誤差で保管され、どの契約で貸与されたかを説明できることが、ハブの商業価値になる。

7. 市場設計:トリチウムは売るより「貸す」べきである

私は、トリチウムを通常の商品として売買すべきではないと考える。トリチウムは半減期を持ち、保有中に減衰し、漏えいリスクがあり、軍事・安全保障上の機微性もある。したがって、トリチウム・ハブが形成すべき市場は、単純なスポット市場ではなく、初期在庫貸与市場である。

この制度では、純粋核融合炉事業者は、商業起動時にハブからトリチウムを借りる。炉が安定運転し、自炉ブランケットで余剰トリチウムを生産できる段階になったら、減衰補正後の同等量を返済する。これは燃料ローンであり、私はこれをTritium Reserve Bankと呼ぶ。

この市場で必要なのは、kgではなく、kg-T-year単位の会計である。たとえば、10kgのトリチウムを5年間貸与する場合、貸与者は減衰損失、保険、漏えいリスク、規制対応コストを負う。したがって、契約には物理量、減衰補正、返済時期、同位体純度、容器規格、測定不確かさ、事故時責任を組み込む必要がある。

私は、各トリチウムバッチに「Tritium Passport」を付与すべきだと考える。そこには、生成炉、ブランケット領域、抽出方法、精製履歴、同位体純度、測定不確かさ、容器履歴、減衰補正、貸与先、返済義務、漏えい履歴を記録する。これは、化学物質SDS、核物質管理、金融証券台帳、ブロックチェーン的監査ログを統合した制度である。

8. 廃棄物処理価値:MAを「負債」から「処理サービス市場」へ変える

二重炉ハブの第二の収益柱は、マイナーアクチニド処理である。ただし、私は「二重炉が核廃棄物問題を完全に解決する」とは言わない。これは過大主張である。地層処分や長期管理は依然として必要である。

二重炉の現実的価値は、処分場設計を支配する長寿命・高放射毒性・高発熱核種の一部を選択的に減らし、廃棄物の性状、発熱履歴、長期リスク、社会受容性を改善することである。IAEAの廃棄物管理報告が示すように、放射性廃棄物管理は長期的な制度・資金・責任配分を必要とし、多くの国で廃棄物管理機関や資金制度が整備されている。

私は、MA処理収益を次のように定式化する。

Rwaste=M˙MA[Cbaseline−Cresidue]−Cseparation−Cfabrication−CsafeguardsR_{\mathrm{waste}} = \dot{M}_{\mathrm{MA}} \left[ C_{\mathrm{baseline}} - C_{\mathrm{residue}} \right] - C_{\mathrm{separation}} - C_{\mathrm{fabrication}} - C_{\mathrm{safeguards}}Rwaste​=M˙MA​[Cbaseline​−Cresidue​]−Cseparation​−Cfabrication​−Csafeguards​

ここで、CbaselineC_{\mathrm{baseline}}Cbaseline​ はMAを処理しない場合の処分・長期管理コスト、CresidueC_{\mathrm{residue}}Cresidue​ は核変換後残渣の管理コストである。二重炉の価値は、M˙MA\dot{M}_{\mathrm{MA}}M˙MA​ を最大化することではなく、差分価値を最大化することにある。

9. 規制・保障措置:ハブ価値は「信頼」から生まれる

二重炉ハブは、純粋核融合炉より規制が軽くなるとは限らない。むしろ、トリチウムと核分裂性・親核分裂性物質の双方を扱うため、安全ケースは重くなる。米国のハイブリッド研究ニーズ報告も、ハイブリッドの安全ケースは純粋核融合より大きな説明責任を負う可能性があり、核分裂ブランケット、LOCA、融合固有のエネルギー源、システム全体の複雑性を扱う必要があると指摘している。

一方で、核融合規制そのものは発展途上である。米NRCは2026年2月、核融合装置を既存のbyproduct material frameworkに組み込む規則案を公表し、技術中立・リスク情報型の枠組みで、核融合装置に伴う放射性物質の保有・使用・生成を規制対象とする方向を示した。また、記録管理・検査・物質管理が重要であることも明記している。

ただし、二重炉ハブは単なる核融合装置ではない。サブクリティカル核分裂カセット、MA燃料、再処理燃料、トリチウム外販、国際移送が入るため、通常の核融合ライセンスだけでは済まない可能性が高い。私は、二重炉ハブを国際保障措置付きの準公共インフラとして設計すべきだと考える。これは事業上の制約ではなく、むしろ価値の源泉である。なぜなら、2050年の核融合市場で流動性を持つのは、単に存在するトリチウムではなく、国際的に監査され、契約上引き渡せるトリチウムだからである。

10. 技術開発ロードマップ

10.1 2030年代前半:トリチウム会計と燃料サイクル標準化

最初に作るべきものは、炉ではなく会計システムである。私は、トリチウム・ハブ研究の第一段階を、Tritium Passport、kg-T-year会計、オンライン計測、容器規格、貸与契約、返済契約の標準化に置く。F4E/EUROfusionが示すように、トリチウム計測・アカウンタンシーは燃料サイクル技術の核心課題であり、欧州でも専用コミュニティ形成やベストプラクティス整備が必要とされている。

10.2 2030年代後半:非発電トリチウム・ブランケット実証

次に、発電を目的としないトリチウム増殖・抽出・精製ループを作る。ここでは、TBRではなくeTBRを測る。発生量ではなく、回収量、抽出時間、計量精度、滞留量、透過率、除染能力、保守時残留在庫を測る。

DOEの2026年資料では、Integrated Blanket and Fuel Cycle Test Facilityの焦点として、関連スループットでのトリチウム生成・処理・閉ループ取扱い、融合関連中性子照射下での材料・ブランケット試験、TBR・遮蔽性能のベンチマーク、連続運転による技術成熟が挙げられている。これは、まさにトリチウム・ハブに必要な基盤である。

10.3 2040年代:MA核変換カセットとの統合

その後、MAを含むサブクリティカル核変換カセットと結合する。ただし、最初から最大処理量を狙うべきではない。最初の目標は、未臨界度、出力分布、燃焼度、残留発熱、FP処理、取り出し後分類、保障措置を実測で示すことである。

私は、初号ハブでは「大量に燃やす」より「説明可能に燃やす」ことを優先する。高いMA処理量を目指して安全ケースが複雑化し、トリチウム計量が不確かになるなら、本末転倒である。

10.4 2050年前後:商用トリチウム・ハブ

商用段階では、二重炉ハブは純粋核融合炉群、再処理・廃棄物管理施設、既存原子力サイト、重電・同位体産業、規制機関の近くに置かれるべきである。発電所というより、空港・港湾・石油備蓄基地・核燃料工場を統合したような存在になる。

11. 反論と限界

私は、二重炉ハブを万能技術として扱うべきではないと考える。

第一に、技術的複雑性は高い。融合コア、未臨界核分裂カセット、トリチウム増殖層、燃料サイクル、再処理燃料、遠隔保守、廃棄物分類を統合するため、純粋核融合炉より工学的に難しい部分がある。

第二に、保障措置と社会受容性が重い。トリチウムの大量取扱い、MA燃料、再処理由来物質を扱うため、透明性の低い民間プロジェクトとしては成立しにくい。

第三に、eTBRの実証は容易ではない。発生したトリチウムをすべて輸出可能在庫にできるわけではなく、材料保持、透過、冷却材溶解、酸化物トラップ、計測不確かさが事業価値を削る。

第四に、MA処理の経済価値は国ごとの廃棄物制度に依存する。処分費用、再処理政策、地層処分計画、核燃料サイクル政策が異なれば、同じ技術でも収益性は変わる。

それでも、私はこの構想に価値があると考える。理由は単純である。純粋核融合炉を各社・各国が個別に建てるだけでは、トリチウム初期在庫、燃料サイクル設備、計量制度、規制対応、備蓄機能が重複し、全体として非効率になる。核融合時代には、炉そのものより先に、燃料流通インフラが必要になる。

12. 結論

私は、融合・分裂ハイブリッド炉を「核融合と核分裂の折衷案」としてではなく、核融合社会へ移行するためのトリチウム・ハブとして再定義すべきだと結論づける。

純粋核融合炉の最も深い制約は、炉心でD-T反応を起こせるかどうかだけではない。最初に炉を起動し、燃料サイクルを満たし、再起動余裕を確保し、次号機へトリチウムを回すための初期在庫があるかどうかである。CANDU由来トリチウムは限定的であり、時間とともに減衰し、複数のDEMO・商用炉計画が同時に走れば、kg単位の在庫競争が起きる。

一方、核分裂側には、使用済燃料、MA、長期廃棄物管理というバックエンド負債がある。二重炉は、融合中性子を使ってサブクリティカル核分裂ブランケットを駆動し、MA処理、熱生産、トリチウム増殖を同時に行う可能性を持つ。ただし、その価値は「最安の電気」ではなく、「他の核融合炉を起動できる燃料を供給すること」にある。

私が提案する最重要指標は、TBRではなくeTBRであり、LCOEではなくTritium Transition Multiplierである。すなわち、二重炉一基が年間にどれだけの純粋核融合容量を起動可能にするかである。

最終的に、核融合社会を本当に加速するのは、最初に最安の電気を売る炉ではない。最初に、他の核融合炉を何基も起動できるトリチウムを、安全に、計量可能に、国際的に信頼される形で供給できる炉である。私は、その役割を担う最有力候補が、トリチウム・ハブ型二重炉であると考える。

 
 
 

コメント


Instagram​​

Microsoft、Azure、Microsoft 365、Entra は米国 Microsoft Corporation の商標または登録商標です。
本ページは一般的な情報提供を目的とし、個別案件は状況に応じて整理手順が異なります。

※本ページに登場するイラストはイメージです。
Microsoft および Azure 公式キャラクターではありません。

Microsoft, Azure, and Microsoft 365 are trademarks of Microsoft Corporation.
We are an independent service provider.

​所在地:静岡市

©2024 山崎行政書士事務所。Wix.com で作成されました。

bottom of page