アップルパイプリングは笑いの香り!? 林檎とベリーの小さな大騒動

登場人物

• 佐々木（ささき）まどか

  
  

  30代OL。アフタヌーンティーの新作を追いかける“スイーツ探検家”。

• 野村（のむら）舞（まい）

  
  

  まどかの同僚。冷静なツッコミ担当だが、実はプリンに目がない。

• 店長・林田（はやしだ）

  
  

  Afternoon Teaの店長。声とジェスチャーが大きく、“テンション7割増し”がデフォルト。

• 謎の「アップルパイ・オタク」北川（きたがわ）

  アップルパイに命を注ぐ謎の男。店に現れてはパイの香りを嗅ぎ分けるらしい。

  
  

第一幕：新作の誘惑

「舞、聞いた！？ アフタヌーンティーから新作スイーツが出るんだって！」昼休み、オフィスの休憩室。佐々木まどかがスマホ片手に舞い上がっている。

「ああ、どうせまた“期間限定”とかいうやつでしょ？　でも、どんなやつ？」珍しく興味を示す野村舞。

「その名も、林檎とベリーのアップルパイプリング！　アップルパイとプリンの良いとこ取りだって、SNSでめちゃくちゃバズってるの！」「アップルパイ…プリン…さらにベリーまで？ なんか豪華すぎない？」舞は少し驚いた様子。

「そう！　リンゴの甘酸っぱさとベリーのジューシーさ、そしてプリンのとろける食感が三位一体となり……って、だいぶレビューがヒートアップしてる。これは行くしかないでしょ！」「はいはい。まどかがそこまで言うなら週末、私もついてくわよ」

そうして二人は週末、Afternoon Teaの新作「林檎とベリーのアップルパイプリング」に挑むことを決意するのだった。

第二幕：Afternoon Teaへ！

週末、開店前のAfternoon Tea。すでに長蛇の列ができている。「うわ、こんなに並んでるの!?」まどかは衝撃を受け、舞は「まあ、想定内でしょ」と淡々。

店員が整理券を配りつつ、「新作のアップルパイプリングは午前中で売り切れる可能性が高いです～！」とアナウンス。「大丈夫かな……私たち買える？」「早く前に進んで！」舞が少しイラつきながら急かす。

なんとか店内に入ると、そこにはエプロン姿でテンション高めな店長、林田が待ち構えていた。「いらっしゃいませ～！　お待ちかね、新作の“林檎とベリーのアップルパイプリング”ですよ～！　只今なら数に余裕がございま～す！」まどかと舞はほっと一安心。さっそく「２つください！」と注文する。

第三幕：事件の予感？ “アップルパイ・オタク”登場

ところが、注文を済ませた瞬間、店の奥から不思議な気配が……。「スンスン……この香り、正真正銘アップルパイの芳醇な匂い……だが、ただのアップルパイじゃない。プリンの甘い余韻が混ざっている…」

振り返ると、グリーンのジャケットにリンゴの柄をあしらった不気味な男が鼻をクンクンさせている。「え、なにあの人……？」舞が固まる横で、男はずかずかと二人に近づいてきた。

「あなたたち、この“アップルパイプリング”を買ったのか……！？　いったいどんな味がするんだ、教えてくれ！」「いや、まだ食べてないんですけど……誰ですかあなたは！」まどかが警戒気味に尋ねると、男は胸を張る。

「私は北川。通称“アップルパイ・オタク”だ。世界中のアップルパイを食べ歩いており、リンゴ菓子の匂いを嗅ぎ分ける能力を持っている……！」「（すごい能力？ いや、要らない能力じゃ……）」と舞は内心ツッコみつつ、顔には出さない。

第四幕：奪われるアップルパイプリング？

北川は店長・林田に詰め寄る。「店長、私にもその新作を食べさせてくれ！ そもそもアップルパイは生地がサクサク、リンゴがジューシー、そこにベリーとプリンまで加わるというのは革命的だ！ 一体どんな魔法を使ったのか、私の舌で確かめる必要があるんだ！」

店長の林田はオーバーアクションで応じる。「もちろんですとも！ 今ならまだ在庫がありますので、ぜひお試しくださ～い！」「ありがとう店長！ ……と言いたいところだが、実は私、今月のカード限度額を使い果たしていてな……。後払いってダメか？」「いやダメに決まってるでしょ！」と舞が思わず割り込む。

途方に暮れる北川。しかし目をギラリと光らせ、まどかの注文した２つのアップルパイプリングを見つめる。「な、なんですか、その目は…？」「もし良かったら、少しだけ分けてくれないか！ たったひと口でも構わない！ ああ、アップルパイプリングの実態が知りたい……！」

まどかと舞は顔を見合わせる。せっかくの新作を譲るのか？ いや一口くらいなら……？ と迷っていると、店長が「ちょっとお客様同士でのやり取りは……」と困り顔。だが北川は「ほら、あなたがた優しそうだし、きっと分けてくれるさ！」とずいずい詰め寄ってくる。

第五幕：店長の神対応・秘策発動

「お客様、そういうことでしたら……当店にはこんなオプションもございます！」店長・林田が奥から小瓶を取り出した。「“追加アップルパイ風味ソース” です！　うちオリジナルのリンゴの甘煮とベリーシロップを混ぜ込んだ特製ソースで、アップルパイプリングにかけるとさらに濃厚な味わいに！」

「へえ！ そんなソースがあるんだ」まどかが興味津々で覗き込むと、店長はさらに続ける。「北川さん、このソースならワンコインでお求めいただけますよ。そしたら、お客さま（まどか＆舞）のアップルパイプリングにちょっとかけさせてあげて、“アップルパイ度”をアップして、一口味見させてもらえばウィンウィンじゃないですか？！」

「おお、それはナイスアイデアだ！」すぐに飛びつく北川。「私がお金を出してこのソースを買う。そのソースをあなたたちのアップルパイプリングにかけてもらう……その代わり、一口だけ味見させてくれればいいんだな！」

まどかと舞は顔を見合わせ、「ま、いいか。ソース代は向こうが負担してくれるし、ちょっと楽しそう」と微妙に納得。「じゃあ、一口ならいいですよ？」「おお、助かる！ ありがとう！」

店長は嬉しそうに笑って「それでは皆さま、お席へどうぞ～」と案内するのだった。

第六幕：いよいよ実食！ そして爆笑

席に着くと、まどか・舞・北川の３人に「林檎とベリーのアップルパイプリング」が運ばれてきた。上にはパイ生地のカリカリしたフレークとベリーソース、そしてりんごの果肉がとろりと絡む。まるでスイーツの玉手箱だ。

「すごい……予想以上に映えるわね、これ」舞も思わず笑みを浮かべる。

さらに、北川が買った追加ソースを店員がひとさじかけてくれると、アップルパイプリングはリンゴとベリーの香りが濃厚に立ち上る。「うわあ、すっごく良い匂い！」まどかは興奮してスプーンを手に取る。

まずは舞から一口。「いただきまーす……」パリッとしたパイの食感、甘酸っぱいリンゴの果肉とベリー、そして下の層にはとろとろのプリンが！

「……ん、んん……これは……おいしすぎる！！」舞が無意識に声を張り上げる。続いてまどかも一口。「わぁ、アップルパイの濃厚な風味の後から、プリンがまろやかに追いかけてくる！ そこにベリーのジューシーさが重なって……最高…！」

3人で「うまい」「すごい」「革命的！」と大興奮していると、北川が「そろそろ私にも一口…」と待ちきれない様子。まどかが端っこをすくって差し出すと、彼は息を飲んでパクッ。

「……なんだこれは……」北川は一瞬目を見開くと、そのまま感動で身じろぎせず固まる。

「おいしい？」舞が聞くと、北川は震える声で叫んだ。「アップルパイのサクサク感と、プリンのコク！ そしてベリーの甘酸っぱさ……これこそ私が求めていた“究極のリンゴスイーツ”だああああ！」

店内の客が一斉にこっちを見る。が、北川はそんな視線を一切気にせず「ブラボー！」と拍手。まどかと舞も苦笑いしつつ、なんだか嬉しい気持ちになる。

第七幕：幸せの後日談

あっという間に完食し、もう一皿いけそうと思うほど。だが在庫は限られているらしく、「今日は１人１点までなんですよ～」と店員に丁重に断られる。

店長の林田が見送りに来てくれ、「皆さん、またのご来店をお待ちしてま～す！ 期間限定なのでお早めにね！」といつもの明るい声。

「いや～、まさか変な“アップルパイ・オタク”さんと一緒に味わうことになるとはね」店を出た後、まどかが思い返して苦笑。舞はクスッと笑いながら、「でも、おかげであの追加ソースっていうオマケも知れたし、面白い体験だったわね。味もほんと最高だったし」

「だよね！ 絶対また食べたい！」まどかの頬は緩みっぱなし。

すると少し離れたところで、北川の姿が。何やら手帳に必死でメモを取っている。「本日のリンゴ密度は80%。プリン度は50%、ベリー度は30%……いや、こんなデータは当てにならないな……！」何やらつぶやき、迷走している様子。二人はそっと見なかったことにして立ち去る。

エピローグ

翌日、SNSには続々とアップルパイプリングの感想が投稿され、「#アップルパイプリング最高」「#林檎とベリーの神コラボ」などのハッシュタグが大盛り上がり。そこには、まどかと舞が投稿した「アップルパイプリング＋追加ソース最強説！」という写真付きレポートも混ざっていて、早くも話題に。

そして、どこかの街角では、“アップルパイ・オタク”北川が新たなリンゴスイーツの匂いを追いかけ、スンスンと嗅ぎまわっているとか、いないとか……。

甘くてサクサク、でもトロリとプリンな「林檎とベリーのアップルパイプリング」。そのユニークさと美味しさは、多くの笑いと幸せを運んできてくれる――そんな一日を、まどかと舞はまたひとつ“甘くてバカみたいに楽しい思い出”として胸に刻むのだった。

（終）