タイムスリップ夫の逆襲!?〜坂口あやめの悲喜こもごも9:赤ちゃん大暴れ!? ベビーシッターは未来人!?〜
- 山崎行政書士事務所
- 2025年1月25日
- 読了時間: 11分

1.新生活スタート! でも寝不足は続く…
老舗出版社「米星社」の文芸編集者・坂口あやめ。 先日、あやめは自宅のリビングで激しい陣痛に耐えながら、筋肉配達員カリブや時空修理人のコンビ、中年トレンチコート姿の未来バージョン・裕作など、ありとあらゆる未来人(?)に見守られ、奇跡のカオス出産を果たした。 赤ちゃんは元気いっぱいの女の子。名前はまだ公表していないが、両親ふたりで「あれこれ迷っては幸せに浸る」という、“初めての育児あるある”のど真ん中を突っ走っている。
出産直後はもうドタバタだったが、いまはようやく病院も退院して、赤ちゃんを連れて本格的な新生活が始まったところだ。 夜泣き対応、おむつ替え、沐浴…何もかもが初めてで、**「もう寝不足でヘロヘロ……」**とあやめは毎日クマを作っている。 夫の裕作はフリーライターの仕事をしつつ、「俺も頑張るから!」と深夜のミルク作りをやってくれるものの、やはり疲労は隠せない。
「でも、こんなのみんな通る道だしね……」 あやめは赤ちゃんを抱きながら、あやし方の動画を見て頭を悩ませる。「うちの子、意外とパワー強いのよね。泣き声がご近所迷惑になってないか心配……」
そんなふたりの生活を、今のところは**“未来人襲来ゼロ”**で過ごしている。 「ほんと、やっと平和だ……」と思った矢先、それは起こる。
2.産後ケアで一息つくはずが…
ある朝、あやめのスマホに通知が届く。 「**区 産後ケアセンター無料体験キャンペーン! 先着3名、プロのベビーシッターを自宅に派遣します!」 「あっ、これ前に市役所でもらったチラシと同じやつかな……?」と気になったあやめは、寝不足も限界だったこともあり、思わず申し込んでしまう。 数時間後、すぐに電話がかかってきて、「ぜひお試しください! 本日夕方にも伺えます!」とのこと。
「え、そんなに早く!? でも助かるわ〜…」 というわけで、あやめは午後のうちに慌ててリビングを片付け、赤ちゃん用グッズを整理。夕方、ピンポーンとチャイムが鳴る。 玄関を開けると、そこには若い女性が立っていた。黒髪をきりっとまとめ、エプロン姿でにこやかに微笑んでいる。 「初めまして! ベビーシッターの橘(たちばな)アヤコと申します! 本日から数日間、お世話になりますね。よろしくお願いします!」 あやめはホッとした。見た感じ、普通の明るくて優しそうな人。未来人の香りもしない。よかった……。
3.シッター・橘アヤコの“謎の神業”
ところが、このベビーシッター・アヤコ、どうにも妙に手際が良すぎるのだ。 赤ちゃんが泣きだすや、さっと抱っこして一瞬で泣き止ませてしまう。沐浴も完璧。さらに哺乳瓶や消毒グッズの並べ方にも「こうすると深夜の対応が楽になりますよ」と驚くほど的確なアドバイス。 あやめは感心するやら呆れるやら。「まさかプロってここまでレベルが高いの? 私たち親よりはるかに上手いんだけど……」 橘アヤコは「ふふっ、私、ちょっと早すぎるくらい研修を受けましてね〜!」と笑顔でごまかすが、その“研修”がただ者じゃない気配がビンビンする。
夜、赤ちゃんがぐずり始めた時も、アヤコが抱くと10秒でスヤァ……。 あやめは驚き過ぎて目が点。「え……どうやったの? 何か薬でも使った!?」 「いえいえ、こんなの慣れですよ〜。赤ちゃんのツボを心得ているとすぐ落ち着くんです」 そう言ってアヤコはさらっと流すけれど、あまりに神業めいている。後ろで見ていた裕作も、「いったいどこで習得したんだ、そんなスキル……?」と首をかしげる。
4.決定的瞬間! 未来人バレちゃった!?
翌日の昼下がり。あやめと裕作は、束の間の睡眠時間を確保しようとベッドへ。ベビーシッターのアヤコがリビングで赤ちゃんをあやしてくれるというので、「お願いします!」と任せっきりに。 しかし、あやめがなんとなく喉が渇いてキッチンに立った時、リビングのアヤコの声が聞こえてきた。
「よちよち、いい子ね。あなたは将来“心音(ここね)”ちゃんと呼ばれる可能性が高いわ。ママとパパはこんなに愛してくれてる……だからあなたは幸せになるのよ……。ああ、でもWi-Fiパスワードやネギ事件には巻き込まれないように気をつけてね……」
……な、なんでそんなことまで知ってるの!? そう、未来人たちが散々口にしてきた“心音”という名前や、“Wi-Fiパスワード”と“ネギ事件”のくだり。この人は公的ベビーシッターのはずなのに、どうしてあんな内輪の事情を……? 不審に思ったあやめが、そっとリビングのドアを開けると、まさにその瞬間、アヤコが謎の小型端末を取り出し、“ホログラム”のような画面にデータを送信しているのを目撃してしまった。 これ、明らかに“現代のシステム”じゃない……!
「えっ……もしかしてあなたも未来人!?」 勢いよくドアを開けると、アヤコは「ひゃあっ!?」と悲鳴を上げ、端末を慌てて隠す。
5.もう誤魔化せない! 橘アヤコの正体とは
あやめの問い詰めに、アヤコは観念したようにうつむいて言い始める。
「ごめんなさい……実は私、未来の‘ベビーシッター養成機関’のエリート候補なんです。研究課題で‘伝説の家族(=あなたたち)を担当してみよう’と提案され、過去に来ちゃいました……」 あやめは絶句。「で、でも、そんなの無許可で来たの? 時空警察とかにバレたらまずいでしょ?」 アヤコは苦笑。「一応、研修名目の許可証は取得したんです。でも本当は“坂口あやめ一家のリアル育児現場を学ぶ”という理由までは申請してなくて……。いわゆるグレーゾーンなんです……」
やっぱりか〜……。 あやめは呆れながら赤ちゃんを見つめ、「本当にうちの子のことを思ってシッターしてくれてたの?」と一抹の不安を口にする。 アヤコは真剣な眼差しでうなずく。「もちろんです! 私は心から赤ちゃんを大事に思ってます。あなたたちが過去に大変な目に遭ってきたのも知ってるし、こうして近くでサポートできるなら……と思って。でも、研究データも必要で……」
ああ、なんだか昔、同じように“研究目的”で押しかけてきた未来人がいたような……と思い出してしまうあやめ。でも今回は悪意があるようには見えないし、実際、育児をすごく助けてもらっているのも事実だ。 そこへタイミング悪く(いつもどおり?)、後ろからひょっこり筋肉配達員・カリブが姿を現す。「ども〜、ちょうどおむつの定期配送に来ました〜って……ん? また怪しい未来人の匂いが……?」 あやめは「そうなのよ! こっちもまたタイムトラベル系だった……」と天を仰ぐ。
6.時空警察の捜査が入る…と思いきや?
当然、カリブは時空警察パート勤務の権限で、アヤコを取り調べようとする。 「橘アヤコさん、とりあえず許可証を見せてもらいます。研修ってどの期間まで? 目的はちゃんと記載してありますか?」 アヤコはシュンとしながら金色のカードを差し出す。「期間は“2週間”です。ちゃんと認可は受けてますが……‘対象不特定の家庭で育児体験’という書き方にしています。坂口さん一家と明記してないんです……これ、やっぱり違反ですよね?」 カリブは難しい顔をしつつカードを確認。「うーむ、厳密には嘘の申請だけど、完全な違法ではない。ただ、重大な過去干渉の恐れがあると判断したら中止命令を出さなきゃいけない。どうするかな……」
あやめがちょっと待って、とカリブに割り込む。「確かに申請の不備はあるだろうけど、私たち、今マジで育児大変なの。アヤコさんは本当に役に立ってくれてるし、赤ちゃんに優しい。正直もう少しお願いしたい気持ちもあるんだけど……」 すると裕作も後ろから首を縦に振る。「うん、初めての子育てで右往左往してるから、経験豊富(?)な人がそばにいると助かるんだよね……。うちは今のところ干渉とかはされてないし…」
カリブは困ったように腕を組む。「違反かどうかグレーだけど、当事者が問題を感じてないなら、オレとしては大騒ぎにしたくないですね。じゃあ**‘しばらく様子見’**ということで、上には内密に……。ただし、万が一おかしなデータ集めとかやりすぎたら即アウトですよ?」 アヤコは深々と頭を下げる。「ありがとうございます! 絶対に余計なことはしません! あやめさんと赤ちゃんのため、全力サポートします!」
7.前代未聞!? 「未来式ベビーケア」のお試し
こうして、アヤコは期間限定で正式に(?)あやめ宅の“ベビーシッター”として滞在許可を得ることになった。 とはいえ、やはり未来技術をフル活用した“ベビーケア”のノウハウは凄まじい。
超高性能寝かしつけアプリ…赤ちゃんの脳波を解析し、最適な音楽&温度&照明を自動調整してあっという間に入眠させる。
スマート哺乳瓶ウォーマー…ミルクの温度を0.1℃単位で自動調節。さらにSNSに「ただいま授乳中…」と投稿してしまう副機能まで(オフにしてあるが)。
瞬間おむつ分析器…ウンチの成分を即チェックし、健康状態を数値化。
「なんかすごいなぁ……いや、便利だけど、ちょっと監視されすぎな気もする……」 あやめは若干の抵抗感を覚えつつも、赤ちゃんがお世話される姿を見て「こんなにラクならまぁいいか……」と感謝してしまう。 裕作も「おかげで原稿書く時間が確保できるし、あやめも少しはゆっくり休めるね」と嬉しそう。
カリブは「くれぐれも‘過度のデータ収集’はしないように〜!」と牽制するが、アヤコは「大丈夫、個人情報の取り扱いは厳守しますから〜」と人懐っこく笑う。
8.ベビーの成長に涙、しかし“未来予知”は要らない!
そんなアヤコのサポートもあって、あやめたち夫婦は初育児の地獄を少しずつ乗り越え始めた。 赤ちゃんは次第に首がすわり、たまにニコッと笑うようになった。するともう、あやめと裕作はメロメロで、カメラを片手に「あーかわいい!」とデレデレしっぱなし。 アヤコも「いいですねえ、その微笑み。きっと将来、笑顔の素敵な女の子に育ちますよ!」と微笑むが、そこで言葉を飲み込む。「……あ、いけない。“未来予知”みたいなこと言っちゃダメですよね」
あやめは首を振る。「ううん、そこまで気にしなくても。私たち、未来の話はもう‘今は今’って割り切るようにしてるの。あなたがどう思っていても、私たちがこの子と向き合っていけばいいだけだから」 裕作も「うん、あんまり先のことを全部知っちゃうと、かえって不安にもなるしね。子どもの成長はサプライズの連続だって思ってるから」 アヤコはその言葉を聞いて、じわっと目を潤ませる。「……優しいですね。私、やっぱりここに来られてよかったかも。こんなに愛にあふれた家族と過ごせるなんて、研修じゃなくて本当に素敵な体験です」
9.惜しまれつつも、ベビーシッター卒業
そうこうしているうちに2週間があっという間に過ぎ、アヤコの“研修期間”も終了。 ラストの日、赤ちゃんを抱き上げたアヤコは名残惜しそうにスリスリ頬を寄せる。「もう明日には未来へ戻らないといけないなんて……。あなたがもっと大きくなるところも見たかったな……」 あやめは「ありがとう、本当に助かったわ。おかげで私たち、ずいぶん慣れてきたし、夜泣きも前より怖くなくなった」と微笑む。 裕作も深々と頭を下げる。「お世話になりました。あ、でも未来で‘坂口家の赤ちゃんはこうだった’とか、あんまり大々的に研究発表しないでね? 個人情報あるし……」 アヤコはくすっと笑う。「もちろんわかってます! ここは私なりに配慮して、しっかり守りますね。……それと、これをどうぞ」
そう言ってアヤコが差し出したのは、小さな紙切れ。 「そこに“未来式の育児テク”をまとめたメモを簡単に書いておきました。私がいなくなったあとも、何か困ったら参考にしてみてください。あまり依存しすぎない程度にね!」 あやめはそっとそれを受け取り、「ありがとう。大事にするわ」と頭を下げる。
夕刻、アヤコはバッグを背負い、玄関のドアに向かう。ふり返ってペコリとおじぎし、「またいつか……今度は合法的に会いに来ますね!」と笑顔を見せる。 ドアを開けたとたん、外には筋肉配達員・カリブが控えていた。「あ、送迎きましたよ〜。タイムポータルの入口を確保するんで、一緒に行きましょ?」 アヤコは笑顔で「お願いします!」。こうして玄関を出ていく姿がスッと消え、あやめたちの前に静かな夜が広がった。
エピローグ:私たちの“手探り”が一番の愛
アヤコが去ってから数日。 夜泣きは相変わらずあるし、哺乳瓶が倒れてミルクをぶちまけるハプニングもあった。ネギを腐らせないように必死で気をつけているのは変わらないし、Wi-Fiパスワードはちょこちょこ変えないと不安になる二人だが、それでも幸福感は以前の数倍だ。
「なんだかんだあったけど、私たち、かなり助けられたよね。未来式がどうこうより、‘私たち自身が実践した’っていう達成感は大きいし」「あやめと赤ちゃんがいてくれるから、俺はもうちょっと頑張れそう。いつかこの子が‘ママ、パパ’って呼んでくれたら、もう泣いちゃいそうだな」
まだまだ手探りな育児。思うようにいかないこともある。けれど、それこそが“今”を生きる夫婦の醍醐味――そう信じることで、あやめはママとして一歩ずつ成長していく。 かつて未来人たちが警告していた「離婚危機」なんて、今のところ影も形もない。これから先どうなるかはわからないけれど、大切なのは**「自分たちの力で乗り越える」**という気概なのだ。
そうして夜。赤ちゃんを寝かしつけたあやめと裕作は、そっと顔を見合わせる。 「やっと寝た……今のうちにちょっとだけ Netflixでも見ようか……?」 「OK、でも音量小さめでね。……あ、Wi-Fiのパスワード、アヤメBaby2025に変えたんだっけ?」 「もうちょっとセキュリティ強化したほうがいいんじゃ……いや、まあ、いっか!」
笑い合う二人のそばで、赤ちゃんが小さく寝息を立てている。その小さな胸には、きっと“未来”への力がたくさん詰まっているんだろう――それは、どんなタイムスリップよりも今ここでの成長が何より尊いことを、二人に教えてくれる。
(了)




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