今夜は帰らナイト!
- 山崎行政書士事務所
- 2025年1月31日
- 読了時間: 5分
登場人物
森田修平(もりた・しゅうへい)
31歳。フリーランスエンジニアだったが、先日こっそり法人化したばかりの“社長”。
亜季(あき)
バーで隣に座っていた女性。帰りたがっていたが、ある一言で態度を豹変させる。
第一幕:バー「スコッチ&スコッチ」
(店内:木目調カウンター。店内BGMは軽快なジャズ。場面は夜9時頃。)
森田「……あ、あの、良かったらもうちょっと話しませんか? お酒、もう一杯どうです?」
亜季「んー……ごめんなさい、ちょっと疲れてて。実は明日早いし……。そろそろ帰ろうかな、って。」
森田「そ、そうですか。やっぱり突然隣に座っただけじゃ、あれですよね。うん、そりゃそうだ……(うつむく)」
亜季「でも、楽しかったですよ。あ、このオリーブ食べます? 私もうお腹いっぱいで……。ほら、早く帰らなきゃって思うのに、こんな時間まで飲んじゃってるし。」
森田「そうなんですね……。あ、でも僕、最近ちょっとした変化があったんですよ?」
亜季「えっ、変化? 何かこう、人生の転機とか?」
森田「ええ、実は――法人化 しまして。あっ、フリーランスのエンジニアだったんですけど、会社を作ったんです。まあ、社長っちゃ社長なんですけど、はは……」
第二幕:えっ、社長さん?
(亜季、突然表情がぱっと明るくなる。店内のライトがひときわ輝くような演出。)
亜季「社長?! すごいじゃないですか! いつからですか?」
森田「いえいえ、ほんの先月ですよ。資本金も小さいし。まだ名刺も数十枚くらいしか用意してなくて――」
亜季「へぇぇ〜……社長さん、なんだ。あ、なんか急に――あくびが出そうな……眠い、ですね……。ああ、うん、私……眠いかも……。」
森田「あ、あれ? さっきまでは帰らないとって……眠いならますます帰ります? タクシー呼びましょうか?」
亜季「い、いえ。眠気はあるんだけど、不思議とこのままここにいたい気分……。もうちょっと、一緒にいられますよね?(ウインク)」
森田「へ? え、ええ。もちろん、僕は全然大丈夫ですけど……」
第三幕:ガタンゴトンの会話劇
(店内、微妙な沈黙。森田が照れながら目を泳がせている。)
森田「……あの、法人化したって言っても、まだ仕事量はそこまで変わってなくて。役員も僕一人で、書類上は“代表取締役”って肩書きですけど、実質フリーランスみたいなもんなんです。」
亜季「ううん、すごいと思う。(急に森田のグラスを持って乾杯の仕草) 社長さんってだけで、やっぱり夢があるというか……ロマンを感じます、私。」
森田「は、はい……ロマン、感じる……。そうなんですか。僕なんか、確定申告の書類が増えて大変になっただけのような……」
亜季「ところで、新事業の展望とかあるんですか? 大きな融資を受けてオフィスを構えるとか、IT業界のトップになって世界を相手にするとか……!」
森田「え? そ、そんなすごい話は今のところ……。とりあえずひとりぼっちで地道にシステム作って、少しずつ人を雇えたらいいな、くらいで……」
亜季「そ、そう……でも、社長さんならいつか絶対大きくなりますよ! 私、こう見えて“見る目”あるんです。ああ……なんだか本当に眠いわ、頭がボーッとして……でも帰りたくない……」
(亜季、森田の肩にもたれかかる仕草。森田は挙動不審になる。)
第四幕:店員さんのツッコミ
(ここでバーテンダーが登場。三谷幸喜風に場をかき回すキャラ。)
バーテンダー(坂下)「お客様、お水いかがですか? 眠気にはやっぱり水分補給ですよ。ねぇ、社長さん。」
森田「あ、ええ、すみません。じゃあウーロン茶をお願いします。亜季さんにも……」
亜季「あら、ご丁寧に。お気づかい、社長は違うわねぇ〜」
坂下「おやおや。最初は “もう帰る” とおっしゃってましたよね。急に元気になられたんですか?」
亜季「ふ、ふふ、そうなの。ほんっと、不思議。社長さんの隣にいると、帰りたくなくなっちゃって……眠い、のに……帰らない、この矛盾。あれ、私ってヘン?」
坂下「いえ、そういうお客様、時々いらっしゃいますよ。肩書きのカクテルは強烈ですからね、くいっと酔っちゃうんでしょう。」
(坂下、森田に意味深なウインク。森田は苦笑いするしかない。)
第五幕:本音と建前
(ウーロン茶が届く。亜季はちびちびと飲みながら、森田の腕を袖口から軽くつかむ。)
亜季「ねえ、ここを出たら、どこ行きましょうか。あっ、迷惑? ごめん、眠くなったのに帰りたいわけじゃないって、おかしいよね……」
森田「い、いえ、迷惑だなんてそんな。うちの事務所、いや、オフィス……は無いんですけど、家で仕事してるし……えっと、よかったらタクシーで家まで送ってあげますよ? ほんとに寝不足になっちゃうから。」
亜季「……家に送るって? それだけ? 社長さんだし、もっと豪華なプランとかないの?(笑)」
森田「ゴ、ゴージャスなプラン!? ええと、いや、僕、そんなにお金持ちでもないし……あ、でも“社長”っていうのはフリーランスがスライドしただけで、年商はまだ大したことないんですよ?」
亜季「……なーんだぁ。年商、まだ大したことないのか……。ふーん……(しれっと表情に落胆が浮かぶ)」
(微妙な沈黙。亜季の視線が一瞬だけ冷めるが、すぐにニコッと笑顔を取り繕う。)
最終幕:眠気のその先へ
(そんな微妙な空気を残しつつ、場面はクローズアップ。)
森田「じゃ、そろそろ出ましょうか。タクシー、呼んできますよ。」
亜季「う、うん……ありがとう。ああ、急に……眠いのに、なんだか気力が湧いてきたのに……ちょっと複雑な気分。」
(2人で会計を済ませる。坂下(バーテンダー)は見送りながら、小声で「お気をつけて……社長さん、がんばって」と声をかける。)
森田「あ、ありがとうございました……」
(ドアを出た瞬間、亜季は森田の腕に絡む。途中で肩書きの話がまた出るが、森田は苦笑しながらはぐらかす。亜季は「ねえ、やっぱり会社ってすごいの?」「眠いのに、もっと教えてほしい」と絡んでくる。森田は内心で「この展開、どうなるんだ……?」と動揺しながら歩き出す。)
(ラスト、二人の後ろ姿が夜の街へと消えていく。その影を店内から見守る坂下が、ホワイトボードに “今夜は帰らナイト!” と書き込み、クスッと笑っている。)





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