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契約書チェックは“交渉”のためではない

(山崎行政書士事務所・生活法務サポート室/署名前チェックの現場から)

こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。契約書チェックのご相談で、たまに空気がこうなる瞬間があります。

「チェックって、相手と戦うためですよね?」「ここ直せって言ってください!」「交渉に勝てるやつ、お願いします!」

……ちがいます。落ち着いて。深呼吸。契約書チェックは “交渉の武器づくり”ではなく、“事故を防ぐ整備” です。

戦うために鎧を作ってるんじゃない。そもそもケガしないようにヘルメットを被る話です。

※先に業務範囲の注記です。当室(行政書士)は、契約書・合意書等の内容確認(チェック)、条文の整理、修正案の文案作成、リスクの見える化など「書類面のサポート」を行います。相手方との交渉の代理、紛争解決の代理、裁判手続の代理は行いません。必要に応じて弁護士等の専門家相談をご案内します。(本記事は一般的な考え方です。個別事情で結論は変わります。)

なぜ「交渉のため」と思うのか(でも危ない)

気持ちは分かります。契約書って、読んでると腹立ちます。

  • 片側だけ有利

  • 「当社は変更できる」

  • 「当然含まれる」

  • 「検収完了後に支払う」※検収期限なし

  • 「責任の上限なし」など

で、読んだ人がこうなる。

「よし、全部直してやる」

でも、ここで目的を間違えると、契約書チェックが**“火に油を注ぐ儀式”**になります。

  • 赤入れが多すぎて相手が硬化

  • 重要じゃない修正にエネルギーを使って疲弊

  • 交渉が目的化して「結局何がしたいの?」になる

  • 一番直すべき条文(お金・範囲・出口)が埋もれる

契約書チェックは、相手を言い負かすためじゃなく、あなたが将来詰まないためにやる作業です。

契約書チェックの本当の目的は「理解→選択→記録」

交渉の前に、やるべき順番があります。これです。

1)理解:この契約で「何が起きるか」を見える化する

契約書は“今の仲良し”を読む紙じゃありません。最悪の日を読む紙です。

  • 支払いが遅れたら?

  • 仕様が増えたら?

  • キャンセルされたら?

  • 連絡が取れなくなったら?

  • 事故が起きたら?

ここを条文から読み取って、現実の運用に落とし込みます。

2)選択:あなたが取れる手は3つしかない

チェックの結果、できることは基本これだけです。

  • サインする(この条件で行く)

  • 修正をお願いする(当事者として相手に提案する)

  • 断る(今回は見送る)

契約書チェックは、この3択を冷静に選べる状態にするための作業です。

3)記録:決まったルールを“残る形”にする

運用で回しても、人が変わると消えます。契約書は人が変わっても残ります。

だからチェックは、「口約束で補う」ではなく、条文で補う方向へ持っていく。

「交渉のためじゃない」が分かる、3つの例え

契約書チェックは、イメージで言うとこれです。

  • 健康診断:医者とケンカするためじゃない。早期発見のため。

  • 車検:ディーラーを論破するためじゃない。事故らないため。

  • 家の内見:不動産屋に勝つためじゃない。住んでから泣かないため。

勝ち負けじゃなく、将来の痛みを減らす。これが目的です。

交渉は「結果」であって「目的」じゃない

ここ、誤解されやすいので丁寧に言います。

契約書チェックをすると、結果として「ここは直したい」「ここは質問したい」が出てきます。

それ自体は自然です。ただし、ここで大事なのは順番。

  • ✅ チェック:リスクを見える化して、優先順位を決める

  • ✅ 文案:代替案(修正案)を用意する

  • ✅ 当事者:あなたが相手に確認・提案する

  • ✅ 記録:合意した内容を契約書に反映する

つまり、チェックは “交渉を煽るため”ではなく、“交渉を必要最小限にするため” にあります。

むしろ、チェックが甘いまま交渉(っぽいこと)を始めると、事故ります。

  • 直すべき所がズレる

  • 代案が出せず感情論になる

  • 相手の「じゃあやめましょう」で終わる

  • 条文が複雑化して、将来さらに揉める

契約書チェックの成果物は「勝てる文章」じゃない

当室が契約書チェックで整えるのは、だいたいこのセットです。

  • 危険箇所リスト(将来どこで詰まるか)

  • 優先順位(直すならどこからか)

  • 質問事項(確認すべき点の言語化)

  • 修正案(代替条文案)(当事者が提示するための文案)

  • “断る判断”の材料(耐えられない点の整理)

つまり、チェックは“言い返すため”じゃなくて、決めるためです。

「チェック=交渉」だと勘違いすると起きる悲劇

現場あるあるを、少し生々しく。

悲劇1:赤入れが趣味になる

赤が増えるほど強いと思いがちですが、相手からすると「全部イヤなんだな」に見えます。

結果、話が進まない。大事なのは“赤の量”ではなく “赤の的中率”

悲劇2:直すべき所を落とす

本当に重要なのは、だいたい次のどれかです。

  • 範囲(どこまでやるか)

  • お金(支払条件、検収、追加費用)

  • 出口(解約・精算)

  • 責任(範囲と上限)

  • 権利(成果物の扱い)

ここを押さえず、言葉尻だけ直すと将来泣きます。

悲劇3:「勝つ」ために条件を詰めて、運用が死ぬ

条文が増えすぎて、現場が回らなくなる。契約書は“理想の文章”ではなく、運用できる文章が勝ちです。

じゃあ「交渉が苦手」な人ほど、チェックが必要

矛盾してるようで矛盾してません。

交渉が得意な人は、勢いで押し切れることもあります。でも交渉が苦手な人ほど、こうなりがち。

  • 相手の雰囲気でサイン

  • 後から「え、そんなつもりじゃ…」

  • 書いてある条文が静かに刺さる

だからこそ、チェックは感情ではなく条文で判断できる状態を作るためにあります。

生活法務サポート室としてできること/できないこと

誤解が出やすいので、ここもはっきり書きます。

できること(行政書士の範囲内:書類面のサポート)

  • 契約書の内容確認(チェック)

  • リスクの見える化(将来の詰まりポイント整理)

  • 不足条項・曖昧表現の洗い出し

  • 修正案(条文案・赤入れ案)の文案作成

  • 覚書・合意書への落とし込み案の作成

  • 当事者が相手に伝えるための「確認事項」「整理メモ」作成

できないこと

  • 相手方との交渉の代理

  • 紛争化した案件での代理的な解決行為

  • 裁判手続の代理

(必要性が高い場合は、弁護士等の専門家相談をご案内します)

まとめ:契約書チェックは「戦う準備」ではなく「事故を減らす整備」

契約書チェックの目的は、交渉で勝つことではありません。

  • 将来のリスクを見える化する

  • 受ける/直す/断るを冷静に選ぶ

  • 合意したルールを“残る形”に整える

この3つです。

最後に、生活法務サポート室からの一言。

契約書チェックは、相手に言うためじゃなく、自分が後で困らないためにやる。

「交渉が苦手だから、せめて書面だけは安全にしたい」「署名前に、地雷だけ拾っておきたい」そんなときは、当室として“書類の安全点検”でお手伝いします。


 
 
 

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