感情を書いてはいけない文章、書いていい文章
- 山崎行政書士事務所
- 1月5日
- 読了時間: 7分

(山崎行政書士事務所 生活法務サポート室/文書作成の現場から)
こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。今日は「文章に感情って、どこまで書いていいんですか?」問題。
これ、相談の現場でめちゃくちゃ多いです。
書きたいことは山ほどある(血管も浮き出る)
でも下手に書くと火に油(相手が逆ギレ、話がズレる、最悪“別の問題”が生まれる)
かといって無機質すぎても「冷たっ」ってなる
結論から言うと、こうです。
感情は“悪”ではない。ただし、置き場所を間違えると事故る。料理で言うなら、感情はスパイス。契約書にスパイスをぶち込むと、胃が荒れます(文書が)。
※先に業務範囲の大事な注記です。当室(行政書士)は、事実関係の整理と文書(契約書、合意書、通知文、内容証明など)の作成支援を行います。相手方との交渉の代理、紛争を代理して解決する行為、裁判手続の代理等は行いません。状況により弁護士等の専門家相談が適切な場合は、その旨をご案内します。
まず大前提:文章には「目的」がある
感情を書いていいかどうかは、センスではなく 目的 で決まります。
文章の目的はだいたいこの2種類。
① 事実を固定して、相手に“対応”を促す文章
(例:通知文、請求の案内、内容証明の文案、契約書、合意書、覚書 など)
このタイプは、感情を乗せると目的がブレやすい。感情が主役になると、文章がこう変質します。
“用件”が薄くなる
相手が反発・防御に入る
こちらの言葉尻を取られて論点がズレる
つまり、解決に近づくより、揉めに近づく。
② 気持ちを伝えて、理解・共感・関係を作る文章
(例:お詫び状、お礼状、お願い文、遺言の付言事項 など)
このタイプは、感情が入ってナンボ。ただし、入れ方にルールがあります(後述)。
感情を書いてはいけない文章
ここから「やらかしがちな文章」を、生々しくいきます。
1)通知・請求系の文面(“払ってください”“返してください”の類)
よくあるNG(※気持ちは分かる)
「あなたは本当に非常識だ」
「いい加減にしろ」
「逃げられると思うなよ」
これ、読み手(相手)の脳内で何が起きるかというと、“内容”ではなく“態度”に注目します。
相手の頭の中:「え、怖…」「言い方…」「うるさい」「ムカつく」→ 用件どころじゃなくなる。
✅ 書くべきはこれだけです。
事実(いつ、何が、どうなっている)
依頼・要求(何をしてほしい)
期限(いつまでに)
方法(振込先、返却方法、連絡方法など)
感情は、胸にしまえ……とは言いません。感情は 別紙(心のメモ) に避難させて、本文は業務モードにします。
2)内容証明の文案
内容証明は“怒りの特急便”ではありません。ここに感情を盛ると、文章が「証拠性」より「ケンカ」方向に寄りがち。
特に危ないのは、人格攻撃・決めつけ・拡散予告みたいな要素が混ざること。(言い回し次第で、別のトラブルの火種になることがあります)
内容証明で強いのは、怒気ではなく 整った構造。静かな文章ほど、相手に「対応しなきゃ」が刺さります。
3)契約書・合意書・覚書
ここに感情を入れると、文書が突然ポエムになります。
NG例:
「甲は乙を信頼し、誠意をもって…」が延々続く
「二度と裏切らないこと」みたいな“気持ち条項”が増える
「常識的に」「いい感じに」など曖昧ワードが入る
契約書・合意書は、将来のトラブルを減らすための設計図。設計図に「なんかイイ感じでお願いします」と書かれていたら、家が傾きます。
ここは感情ゼロでOK。むしろゼロが正解です。
4)相手の“性格評価”が混ざる文章全般
たとえば、「だらしない」「卑怯」「最低」「詐欺師」などのラベリング。
これ、スカッとするのは送る側の一瞬だけ。受け取る側は 防御態勢MAX。そして話が「事実」から「悪口」へスライドします。
文書は、相手を論破するためじゃなく、相手に動いてもらうために作ります。動かしたいなら、相手のプライドを正面から殴らない方が早い。現実的に。
じゃあ、感情を書いていい文章は?
ここからが大事。「感情=全部ダメ」ではありません。
1)お詫び状・謝罪文
このジャンルは、感情がないと逆に怖い。
ただしポイントはこれ。
感情は “反省・遺憾”の表現として短く
長文の言い訳大会にしない
事実と再発防止の姿勢を添える
NG:「だって相手も悪いし、私も忙しくて、社会が悪くて…(以下2,000字)」→ 謝罪の皮をかぶった主張書面になります。
OK:「ご迷惑をおかけし申し訳ありません。今後は〇〇の手順を徹底します。」→ 感情+行動がセットだと伝わります。
※当室では、こうした文書の“表現整理”や“文章化”の支援は行えます(交渉の代理ではなく文書作成として)。
2)お願い文・依頼文(関係を壊したくない時の文面)
「強く言いたいけど、関係は壊したくない」このときは、感情を“潤滑油”として少し入れると効果的です。
例:「突然のお願いで恐縮ですが」「ご負担をおかけしますが」「大変困っております」
これらは、感情というより 配慮の言語化。相手に「協力してもいいかな」の余白を残します。
3)行政手続の“理由”を書く文書(理由書・申立理由の説明など)
行政関連の文書では、「なぜ必要か」「生活上どう困っているか」を説明する局面があります。
このときの感情は、“お気持ち表明”ではなく“事情説明”としての感情です。
OKの例(事情としての感情):
「不安が強く、日常生活に支障が出ている」
「介護負担が増え、支援が必要な状況である」
「現状のままでは生活の継続が困難である」
NGの例(攻撃としての感情):
「担当が冷たい、ムカつく、許せない」
「役所は無能」
感情を入れるなら、相手を殴るためではなく、事情を伝えるために。
4)遺言の「付言事項」など(気持ちを残す場所)
遺言(特に付言事項)は、法的効力そのものというより、家族へのメッセージとして機能することがあります。
ここは、感情が“適切に”書ける場所。ただし、家族の火種になるような罵倒や断罪は、将来の争いを増やしがちです。
おすすめは、
感謝
理由の簡潔な説明
願い(押し付けない)
“愛の遺産”のはずが、“恨みのカセットテープ”にならないように。
感情を「書いていい場合」の共通ルール
感情を入れていい文章にも、入れ方のコツがあります。
ルールA:感情は1〜2行で止める
長くなると、用件が溺れます。感情は添え物。主菜にしない。
ルールB:感情の矢印を“自分側”に向ける
OK:「困っています」「不安があります」「残念に思います」NG:「お前が悪い」「お前は最低」
相手を刺すと、相手は刺し返します(だいたい)。文書は戦場にしない方が得です。
ルールC:感情の後に「具体」を置く
感情 → 要望/行動の順にすると、文章が現実に戻ります。
例:「大変困っております。つきましては、〇月〇日までに〇〇をお願いします。」
生活法務サポート室の“現場あるある”:感情は「下書き」には全部書いていい
ここ、今日いちばん言いたい。
感情は、下書きに全部書いてOKです。むしろ書いた方がいい。出し切った方が整います。
おすすめ手順:
まず“憤怒の下書き”を作る(スタンプも罵倒も全部盛り)
それを保存して寝かせる(冷蔵庫は不要、比喩です)
翌日、必要な事実だけ抜き出す
本文は「事実・依頼・期限・方法」に整える
感情は入れるなら1〜2行、矢印は自分へ、最後に具体
これで、文章が“攻撃”から“伝達”に変わります。
まとめ:感情の置き場所を間違えない
書いてはいけない(入れない方が強い)
通知・請求・催促系
内容証明の文案
契約書・合意書・覚書
相手評価(人格攻撃)が混ざる文面
書いていい(ただしルール付きで効く)
お詫び状・謝罪文
お願い文・依頼文
理由書など事情説明が必要な文書
遺言の付言事項など“気持ちの居場所”がある文書
感情は敵じゃない。でも、文章の目的によっては「感情=ノイズ」になる。だからこそ、感情の置き場所を分けるのがコツです。
※本記事は一般的な情報です。状況や文書の目的により適切な表現は変わります。当室では、行政書士として、事実の整理と**文書の表現・構成の整備(書類作成)**をお手伝いします(交渉代理ではありません)。「この文面、感情が出すぎてない?」「どこまで書いていい?」など、文章の“安全運転”が必要なときはご相談ください。





コメント