生麩しるこの奇跡!? わたし、もちじゃないんです!
- 山崎行政書士事務所
- 1月23日
- 読了時間: 6分

登場人物
春田(はるた)真琴(まこと)
30代OL。和スイーツ大好き。特に餅系に目がない。
高橋(たかはし)玲奈(れな)
真琴の同僚。ツッコミ役で、ややクールなタイプ。
店主・寺田(てらだ)
老舗甘味処「みなづき庵」の店主。生麩(なまふ)推し。
“もちマニア”河合(かわい)
お餅と聞けばどこにでも現れる謎の人物。生麩と餅をしばしば混同するらしい。
第一幕:うわさの「生麩しるこ」との出会い
「玲奈、知ってる!? 最近“生麩しるこ”って和スイーツがSNSで話題になってるんだって!」昼休みのオフィス。春田真琴が興奮気味にスマホを見せながら言う。
「生麩……しるこ? しるこに麩を入れるって、味噌汁かお吸い物みたいじゃないの?」思わず眉をひそめる高橋玲奈。
「それが違うんだよ! 純粋に小豆の甘い汁に“生麩”がゴロッと入ってるらしいの。モチモチした生麩がすごく美味しいって評判で、完全に和スイーツなんだって!」「へえ、いろいろ考えるわね、最近の甘味処も。もちじゃなくて麩って、どんな感じなんだろう……」「そういうの、気になるでしょ? 今度の休日、一緒に行こ!」「まあ、いいわよ。ちょっと試してみたいかも」
第二幕:老舗甘味処「みなづき庵」へ潜入
週末の午後。老舗の甘味処「みなづき庵」は暖簾をくぐるだけでほっとする和の雰囲気。「いらっしゃいませ~」店主・寺田が笑顔で出迎える。木のカウンターとお座敷が見渡せる、こぢんまりとした店内だ。
「すみません、『生麩しるこ』ってまだありますか?」真琴が恐る恐る聞くと、寺田は「もちろんございますよ~!」と朗らかに返す。「ただ、最近とても人気でしてね。注文が立て込むと少々お待ちいただくことになるかもしれませんが…よろしいですか?」「大丈夫です、待ちます!」真琴はすかさず返事。そそくさと席に腰を下ろす。玲奈は「そこまで必死…?」と苦笑しつつ、仕方なくついていく。
第三幕:謎の“もちマニア”乱入
二人が店の雰囲気を楽しんでいると、入り口から派手なアロハシャツに身を包んだ男が、慌ただしく入ってきた。「ここに“生麩しるこ”があるって聞いたんですけど……!」男は興奮気味に周囲を見回している。
「え、なにあの人? すごく餅好きっぽい雰囲気…」玲奈が呆れたようにささやく。男はカウンター越しに店主・寺田を捕まえて言い放つ。「ネットで見たんですよ! “まるでお餅のようにトロトロで、でも餅じゃない”って噂の生麩しるこ! 是非食べさせてください!」
寺田が困ったような笑みを浮かべる。「ええ、もちろんご用意できますが……あの、失礼ですけどお餅と生麩は別物ですよ。食感や風味が違いますので」「なにを言ってるんですか! 餅に匹敵するモチモチ感があるなら、もうそれは餅みたいなもんでしょう!」「そ、そんな乱暴な……」店主・寺田もたじたじ。周囲のお客たちもクスクス笑いをこらえている。
「絶対にうまいはずだ、餅なら間違いない…いや麩か……餅…? いやまあ、どっちでもいいや!」男は勝手に一人でテンション上げている。どうやら“もちマニア”のようだ。
第四幕:ついに登場! 生麩しるこ
やがて、店主の寺田が奥から運んできたのは、湯気がほんのり立ち上る汁椀。あんこの香りがふわっと広がる。「お待たせしました。生麩しるこでございます」まどろやかな小豆のしるこに、ぷるんとした生麩が浮かんでいる。その姿はお餅とも違う、でも柔らかそうな質感がしっかり見てとれる。
「うわぁ~、めっちゃ美味しそう…!」真琴はもう目が離せない。隣の玲奈も「確かに面白いビジュアルね」と興味津々。
先ほどの“もちマニア”こと河合も興奮気味に同じメニューを受け取ると、「よし、いざ実食!」とスプーンを握りしめる。
第五幕:想像以上のモチモチ感!?
「いただきま~す…」真琴はさっそくスプーンで生麩をすくい、あんこをからめてパクリ。
「な、何これ……すっごくモチモチ! でも餅ほど噛みごたえがなくて、ふわっと溶ける感じ…」嬉しそうな声をあげる真琴。その様子を見て玲奈も一口。
「…うわ、ほんと不思議。お餅じゃないのに、モチモチしてて柔らかい。あんこの甘さとも合うわ。これアリかも!」玲奈は意外な美味しさに驚きを隠せない。
“もちマニア”河合も、早速すすってみる。「おおおお……この食感、たまらん。やっぱり餅だ! いや麩だ! いや餅だ…!」混乱しながらも「旨い!」と大声を出す。店内のお客はみな苦笑い。
第六幕:店主のこだわり、そして大混乱
そこで店主の寺田が、にこやかな笑みで説明を始める。「実はこの生麩は、もち粉ではなく小麦粉のグルテンを練り上げたものなんですよ。そこに抹茶やゴマを練り込んだタイプもありまして、当店では季節によって色とりどりの生麩を使ってるんです」
「へえ、そうなんですか。だからこんな絶妙なふわモチ感なんだ…」真琴は感心しきり。
すると突然、“もちマニア”河合が食器を置いて立ち上がる。「いや、待ってください店主! これはもはや餅の領域に近い。生麩を餅と言っても過言ではない…! いや、餅じゃないのか…? もう私の信念が……うわあああああ!」わけのわからない叫び声と共に頭を抱えてしまった。
「なにその“グルテン・ショック”みたいな…」玲奈がボソっとツッコミを入れる。店主の寺田は苦笑いして、「お餅に強いこだわりがあるようですが、あくまで“生麩”ですので、別のものです。両方美味しいということで……」とフォローを試みる。
第七幕:爆笑のフィナーレ
最初はパニックになっていた“もちマニア”河合だったが、最後までしっかり生麩しるこを平らげ、満面の笑みで店主に向き合う。「店主、どうやら私は今日から“麩”の世界にも踏み込んでしまったようです。これからは“もちマニア”改め、“モチ+麩マニア”として生きていきます…!」「いや、そこは統合するのね。ややこしい…」玲奈が容赦なく突っ込む。
一方、真琴はというと「いやぁ、お餅とは一味違うこのモチモチ感、最高すぎる…」とすっかりトリコになっている。
「ご馳走さまでした。これはリピ決定だね、玲奈!」「うん、また来てもいいかな。ここ落ち着くし、他のメニューも気になるしさ」
店を出る際、店主・寺田が笑顔で見送り。「本日はありがとうございました! 生麩しるこ、季節限定で色々アレンジしますので、ぜひまたいらしてくださいね」「はい、絶対来ます!」真琴と玲奈はほくほく顔で店を後にする。
エピローグ:生麩しるこがくれた笑いと幸せ
店を出た瞬間、“もちマニア”河合がチラッと声をかけてきた。「今度、一緒に“麩スイーツ”巡りしませんか? 他にもいろいろあるらしいんです!」「えっ……遠慮しときます!」二人は即答し、そそくさと逃げる。
なんとも騒がしい体験だったが、生麩しるこはそれを上回るほどの衝撃的な美味しさを二人に刻み込んだ。もちじゃない。でもモチモチ。その不思議な魅力に、今日もまた新たなファンがとりこにされていく……。
(終わり)





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