top of page

AIが自分を監査する時代に、企業は何を設計すべきか


――「自己監査クラウド」と法的責任の現実

クラウド運用の現場では、「AIに監視させる」「自動で是正する」「人は最後に見るだけ」という発想が、もはや珍しくありません。

構成逸脱を自動検知し、ログを解析し、「これは規程違反です」とAIが判断する。

一見すると理想的な世界です。しかし、クラウド法務の視点で見ると、そこには明確な“落とし穴”があります。

「自己監査クラウド」は技術的に可能か?

結論から言えば、技術的には可能です。

現在のクラウド基盤、たとえば Microsoft Azure では、

  • 構成ルールをコードで定義する

  • 構成変更を常時監視する

  • 逸脱を検知し、ログとして残す

  • 一部の是正を自動化する

といったことは、すでに実現できます。

問題は**「できるか」ではなく、「誰が責任を負うか」**です。

自己監査が壊れる瞬間

クラウド事故の多くは、設定ミスではありません。

「その判断を、誰の責任で行ったのか」が曖昧なまま自動化されたときに起きます。

典型例は次のような構造です。

  • 監査AIが「不適合」と判断

  • 自動で設定を戻す/遮断する

  • 業務が止まる

  • 誰も“判断した覚え”がない

このとき、「AIがやった」は免責になりません。

責任は、設計した企業側に残ります。

法務から見た「完全自動化」の危険性

AIによる自己監査で、最も危険なのは人の関与が消えることです。

法的に問題になるポイントは、主に次の3点です。

1. 説明できない判断

  • なぜ不適合と判断したのか

  • どの規程に基づくのか

  • どのログを根拠にしたのか

これを人が説明できない構造は、監査で詰みます。

2. 高リスク領域まで自動是正する

  • 特権権限の付与・剥奪

  • 外部公開設定

  • 通信遮断

これらを無承認で自動実行すると、業務妨害・契約違反に直結します。

3. 誰も止められない設計

  • 異常判断が出続けても止まらない

  • モデル更新の履歴が残らない

  • ロールバックできない

これは「運用事故」ではなく、設計責任の問題です。

現実的な「自己監査クラウド」の設計原則

クラウド法務の立場から推奨するのは、完全自動化ではない自己監査です。

原則①:規程は必ず「コード化」する

  • 社内規程

  • セキュリティ基準

  • 運用ルール

これを文章のままにせず、機械が評価できる形に落とします。

原則②:評価と是正を分離する

  • AIは「評価」まで

  • 是正はリスクに応じて分岐

リスク

対応

自動是正

通知+承認

人の判断必須

原則③:証跡は改ざんできない形で残す

  • 判断ログ

  • 構成差分

  • 是正履歴

後から消せない構造が重要です。

「人が主権を持つ自動化」という考え方

最新の規制やガイドラインに共通する思想は、AIは補助者であり、主体ではないという点です。

  • 判断の最終責任は人

  • AIは継続監視の道具

  • 停止できる仕組みを必ず残す

これを設計段階で入れない限り、自己監査は“便利な地雷”になります。

山崎行政書士事務所のクラウド法務が見るポイント

山崎行政書士事務所 では、クラウドの技術設計と法的責任を同時に整理します。

  • 自動化してよい領域

  • 人の承認が必要な境界線

  • 説明責任を果たせるログ設計

  • 契約・規程とのズレの洗い出し

「AIでできるか」ではなく、「事故が起きたとき、説明できるか」

それが、クラウド法務の設計基準です。

まとめ

  • 自己監査クラウドは実現可能

  • 完全自動化は法的に危険

  • 人の関与を前提に設計すべき

  • 技術と規程を同時に設計しないと破綻する

クラウドは、設計した通りに責任が返ってくる世界です。

便利さの裏にある責任まで含めて、一度、構成を見直してみませんか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
内部メールに見えるフィッシングが、なぜ防げないのか

――メール設定ミスが生む“信頼の詐称”という法務リスク はじめに 近年、フィッシング被害の相談で増えているのが、 「外部からの攻撃なのに、内部メールに見えた」 というケースです。 標的型攻撃でもなく、特定企業を狙った高度攻撃でもありません。原因はもっと身近で、 自社のメール構成そのもの にあります。 攻撃の正体は「認証突破」ではない このタイプの攻撃で誤解されがちなのは、「Microsoft 36

 
 
 

コメント


Instagram​​

Microsoft、Azure、Microsoft 365、Entra は米国 Microsoft Corporation の商標または登録商標です。
本ページは一般的な情報提供を目的とし、個別案件は状況に応じて整理手順が異なります。

※本ページに登場するイラストはイメージです。
Microsoft および Azure 公式キャラクターではありません。

Microsoft, Azure, and Microsoft 365 are trademarks of Microsoft Corporation.
We are an independent service provider.

​所在地:静岡市

©2024 山崎行政書士事務所。Wix.com で作成されました。

bottom of page