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「送らない」という選択肢を取る判断基準

(山崎行政書士事務所・生活法務サポート室/文書作成の現場から)

こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。内容証明に限らず、通知文でも何でも――

「送れば前に進むはず」

と思いがちなんですが、現場では逆にこういう瞬間もあります。

「それ、今“送らない”ほうが得です」

送らない=負け、ではありません。“送らない”は、戦略です。包丁を握ったまま走らないのと同じで、落ち着くとケガが減ります(比喩です)。

※先に大事な注記です。当室(行政書士)は、事実関係の整理と、当事者が使うための通知文・内容証明・合意書等の文書作成(文案作成)支援を行います。相手方との交渉の代理、紛争解決の代理、裁判手続の代理は行いません。必要に応じて弁護士等の専門家相談をご案内します。本記事は一般的な情報で、個別事情で判断は変わります。

まず前提:「送る」って何が起きる?

文書を送ると、良くも悪くもこうなります。

  • 相手が反応する(話が動く)

  • 相手が防御姿勢になる(固くなる)

  • 相手が無視する(沈黙が続く)

  • こちらの文面が“記録として残る”(ここ重要)

つまり「送る」は、状況を動かすだけでなく、自分の発言を固定する行為でもあります。

だからこそ、固定してはいけない状態のときは、送らない方が安全です。


「送らない」を選ぶ判断基準 10個

(ひとつでも当てはまったら、一旦ブレーキ)

1)自分の感情が“原液”のまま

危険度:★★★★★

今この瞬間、文面がこうなってませんか?

  • 句点が多い

  • !が増える

  • 「常識で」「いい加減に」が出てくる

  • 相手の人格評価を書きそう

この状態で送ると、用件が前に進む前に「言い方」問題が発生しがちです。

判断:一晩寝かせて「事実・お願い・期限」に戻せないなら、送らない。

2)事実関係(日時・金額・約束)がまだグラグラ

危険度:★★★★★

内容証明や通知文は“残ります”。そこで、日付・金額・回数が間違っていると、相手にとっては反論材料の宝庫。

判断:資料と突き合わせて整理できるまで、送らない。

3)目的が「相手をビビらせたい」「勝ち誇りたい」になっている

危険度:★★★★☆

文書の目的が “対応を促す” からズレた瞬間、事故率が上がります。内容証明は勝利宣言ではなく、要件の通知・確認・記録の道具。

判断:自分の目的を1行で言えないなら、送らない。(例:「〇月〇日までに〇〇してほしい」)

4)送ることで“関係が壊れたら困る”のに、修復ルートがない

危険度:★★★★☆

家族・近隣・取引先など、関係が続く相手に重い文書を投げると、それだけで感情が固まることがあります。

判断:関係を残す必要があるなら、まずは刺激の少ない「お願い文」「確認文」レベルで済むか検討。それでも文書が必要なら、言葉の温度を落としてから。

5)相手が“危ない反応”をしそう(逆上、執拗な連絡、脅し等)

危険度:★★★★★

送ったことで相手が逆上し、連絡が過激化する可能性がある場合、文書の出し方自体を慎重に考える必要があります。

判断:身の安全や生活への影響が心配なら、送らないで、早めに専門家や関係機関に相談する方向へ。(ここは無理に自力で突っ込まないのが安全です)

6)第三者(会社・家族・取引先)を巻き込みそうな文面になっている

危険度:★★★★☆

「会社に言う」「家族に知らせる」「取引先に…」この手の要素が入ると、論点が増えて、揉めごとが肥大化しやすいです。

判断:当事者間の要件に絞れないなら、送らない。

7)文面に「断定ラベル(詐欺・犯罪等)」が混ざっている

危険度:★★★★★

断定は相手の防御力を爆上げします。本来の用件より「その表現の是非」が争点になりやすい。

判断:断定したくなったら、まず事実の列挙に戻す。戻せないなら、送らない。

8)“盛り盛り請求”で、根拠や計算が曖昧

危険度:★★★★☆

遅延損害金、違約金、慰謝料、追加費用…気持ちで積むと、相手に「全部おかしい」と言われやすくなります。

判断:請求内容を一本化して整理できないなら、送らない。(複雑な場合は早めに弁護士相談が安全なこともあります)

9)「送ったあと」の想定がゼロ(返信が来たらどうする?無視なら?)

危険度:★★★☆☆

送るのはスタート。相手が返事をしたときに、こちらが感情で返すと、文通バトルに突入します。

判断:送った後の自分の動き(返信の型、記録の取り方)が決まってないなら、送らない。

10)そもそも“送る前にできること”が残っている

危険度:★★★☆☆

内容証明は最終手段っぽく見えますが、本当は「文書化の段階の一つ」に過ぎません。

先にできることが残っているなら、順番を守った方が成功率が上がります。

  • 事実の整理(時系列・金額)

  • 短い確認連絡(感情抜き)

  • 依頼事項を1行にする

  • 通知文(内容証明ではない普通の書面)で様子を見る

判断:「いきなり重いもの」ではなく、段階を踏めるなら、送らない(今は)。


生活法務サポート室的:「送らない」を“サボり”にしない方法

送らないと決めたら、代わりにこれをやると「前に進む送らない」になります。

① まず棚卸し(事実の整理)

  • いつ何があった

  • 何を約束した

  • いくら/何を

  • 証拠(請求書、振込履歴、やり取り等)は何がある

② 目的を1行にする

例:

  • 「〇月〇日までに未払い代金〇円を支払ってほしい」

  • 「〇月〇日までに〇〇を返却してほしい」

  • 「事実関係について書面で回答がほしい」

③ “刺激の少ない文面”を先に作る(お願い文・確認文)

いきなり内容証明にせず、まず通常の通知文で様子を見るケースもあります。

(当室は、ここを“文書作成”として整える支援が可能です)

④ それでも止まるなら、内容証明を検討する

段階を踏むことで、内容証明を出すときも文面が冷静に整い、相手の防御力を上げにくくなります。


まとめ:「送らない」は“危険回避”と“成功率アップ”の選択

送らない方がいいのは、ざっくり言うと

  • 感情が強い

  • 事実が固まってない

  • 目的がズレている

  • 文面が攻撃的/断定的

  • 送ることで危険が増える

  • 送った後の設計がない

こういうとき。

内容証明は、出すと記録として残ります。だからこそ、「固定してよい文面」になったタイミングで出すのが一番強い。

「今、送るべき?送らないべき?」「送らないなら、どんな文面を先に作る?」そんなときは、生活法務サポート室として、交渉ではなく “文書の設計”の視点でお手伝いします。

 
 
 

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