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『法務ロワイヤル外伝4 ~時空と草薙の坂の下で~』―山崎行政書士事務所、今度は時空を超える!? 新たなる依頼編―

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 9分



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プロローグ:変わらぬ朝、しかし何かが起こる予感

 静岡市清水区、草薙の坂の下にある山崎行政書士事務所。 所長の山崎哲央は今日もゆるやかな笑顔で、スタッフたちの様子を見つめていた。 新人スタッフの斎藤夏海は電話対応に追われ、「はい…はい、それでしたら登記書類が…」と忙しく喋る。 元銀行員の丸山修はエクセル画面とにらめっこしながら「関数がエラーだ…」とこぼし、若手の森下舞は先日深海人マーレの案件で大量に増えたファイルを整理するのに大わらわ。

 幽霊物件、宇宙人騒動、深海人の就職問題。奇想天外な依頼に振り回されながらも、なんとか乗り越えてきたこの事務所。そろそろ普通の相談が来てくれてもいいのに――そう誰もが思っていた。 しかし、彼らの願いむなしく(?)、またしてもあり得ないような依頼が舞い込もうとしている。今度は“時空”にまつわる大騒動だった。

第一章:不思議な装束の来訪者

■ 「江戸時代から来ました」と名乗る女性

 その日の午後、事務所の扉が開く。驚いたことに、そこに立っていたのは着物姿の若い女性だった。さらに帯刀こそないものの、髪型もどこか古風である。「お、お邪魔いたしまする…ここが“やまさき・ぎょうせいしょし”とか申すところでござるか?」 あまりに時代がかった言い回しに、斎藤は目を瞬かせた。「ええと…はい、“山崎行政書士事務所”です。ご用件は…?」 女性は緊張した面持ちで息を整え、一気にまくし立てる。「わたし、実は江戸時代からまいりました。こちらの世で暮らしてみたいゆえ、書類を整えていただきたく…」

 事務所内に一瞬静寂が訪れる。森下が「え、江戸って…江戸時代!?」とオウム返しに聞き返すと、女性は「左様!」と胸を張る。 一方、丸山は困惑しながらも、「あ、もしもし、大丈夫かな、僕たちまたとんでもない人を相手に…」と斎藤に小声で話す。 所長の山崎は、いつもの穏やかな笑顔のまま、「まずはお名前をお伺いしてもよろしいですか?」と尋ねる。 すると彼女は深々とお辞儀をして名乗った。「拙者、お滝と申します。元は旗本の家に仕えておりましたが、ひょんなことからこの時代に迷い込んでしまいまして…」

第二章:本当にタイムトラベル? それとも…

■ どう見ても“時代劇セット”?

 まずは話を整理しようと、お滝を応接スペースへ案内する。斎藤と森下が「どこから来たんですか?」「こちらにはどうやって?」と質問を重ねるが、返ってくるのは本格的な江戸言葉。「夜半、神社の境内を歩いておりましたら、突然光に包まれ、気づけばこの町に…」 まるで時代劇のトリックのようだ。丸山は「これ、テレビの撮影とかドッキリ番組じゃないですか?」と疑い、斎藤も「ですよね~」と密かに思う。 ところが、お滝の着物や所作はどう見ても本物っぽい。しかも会話をしながら、丸山がスマホをテーブルに置いていると、それを見てお滝は「おお、これが噂の“まほうの箱”か…」と本気でビビる様子を見せる。

■ 時空を超えた“在留”? 問題山積み

 お滝の依頼は「この時代でちゃんと生活できるように、役所に名を登録してほしい」とのこと。いわば住民票のような手続きを望んでいるのだが、当然ながら不可能に近い。 山崎は苦笑いしながら、「うーん、前に“深海人”の住民登録で苦労しましたが…今回は“江戸時代から来た”かぁ。どう切り込めばいいんでしょう?」とつぶやく。 森下がメモを取りつつ、「戸籍が存在しないと、そもそも無理ですよね…」と不安げな声を上げる。

 しかし、ここは山崎事務所。あり得ない案件ほど燃えるらしい(?)。 山崎は「まずは、お滝さんがどのように生活していきたいのか、もう少し詳しく聞いてみましょう」と落ち着いた調子で提案する。

第三章:明かされる境遇と新たな騒動

■ お滝の過去(?)と悩み

 お滝は、元は旗本の娘に仕える奉公人だったが、その娘が縁談で揉めに揉め、家を出ようとした際に「共に逃げよう」と誘われ、神社へ駆け込んだという。「そこで不思議な光に包まれ、気づいたら現代の草薙の町に…。あの娘はどうなったのか、心配でなりません…」 彼女自身も戸惑いだらけで、「元の時代に戻れるのか?」も分からないが、このままこの時代でひっそり暮らすしかないと決断したらしい。「この時代には何でもそろっておるし、食べ物もまことに美味しゅうございます。でも、戸籍がなければ働くこともできませぬし…」

■ 追い打ちをかける不可解な人物

 そんな話をしていると、事務所のガラス戸の向こうで誰かが立ち聞きしている気配が。斎藤が「すみません、なにかご用ですか?」と声をかけると、怪しげな男が慌てて逃げていくではないか。「な、なんだろう、今の人…」 丸山が追いかけようとするも、あっという間に姿は消えてしまった。 山崎は「うーん、ひょっとしてお滝さんを探している江戸時代関係者…というわけはないですよね?」と首をひねるが、斎藤は「いや、それよりも本当にドッキリ番組のスタッフとか…?」と疑念を捨てきれない。

第四章:法の壁に挑む、山崎事務所のアイデア

■ 再び“研究機関”活用作戦?

 深海人マーレのときと同様、“研究機関との提携”による特別なステータスを得られないか検討される。「お滝さんを“歴史研究の被験者”として扱えれば…? いや、でも生身の人間をどう証明するんだ…」 丸山が頭を抱えるが、森下は「現代において“江戸時代の人”を証明する書類なんてないですよね」とため息をつく。 一方、斎藤は「じゃあもう日本国籍を申請してもらうしか…って、どんな国籍証明があるんでしょうか…」と行き詰まる。

■ お滝さん、アルバイトをしたい!

 そんな難問が山積みの中、お滝本人は意外と前向きだ。「いろいろな仕事があると聞きました。まずは“バイト”なるものをしてみたいのですが…」 どうやらコンビニという場所を見学したらしく、「あそこでおにぎりを売るのは面白そうだ」と興味を持ったらしい。 斎藤は思わず苦笑い。「江戸の人がコンビニバイト…想像つかないです。でも今の状況じゃ雇用契約なんて結べないし…」

第五章:怪しげなスカウトと陰謀?

■ 浮上する“時代劇テーマパーク”の影

 そんな中、以前から何やら不穏な動きを見せていた怪しい男が再び登場。今度は名刺を持って事務所にやってきた。「どうも初めまして、私**大門(だいもん)**と申します。『歴史体験テーマパーク』のプロデューサーをしております」 彼はにこやかな笑みを浮かべ、お滝に向かって「あなた、本当に江戸時代から来たんですよね? もしよかったら、うちで働きませんか?」と誘うのだ。「へ、へえ。テーマパークで働く…?」 お滝はキョトンとしているが、大門はさらに畳みかける。「宿泊も食事もこちらで用意します。給料もそれなりに出しますよ。あなたが江戸の生活を再現してくれるだけでOK! 役所の手続き? そんなのウチで全部面倒みますから!」

 明らかに甘い言葉を並べているが、どこか胡散臭い。斎藤は警戒感を募らせる。「本当に全部手続きをしてくれるんですか? そもそも法的にどうやって…?」 大門は「そこは…企業秘密ということで」とはぐらかし、にっこり笑う。山崎は「あまりに話が上手すぎる」と内心引っかかりを感じ始める。

第六章:混乱の渦、そして江戸の証明

■ お滝の決断

 大門の甘い誘いに、お滝は少し心が揺れる。「この時代で生活できるなら、ありがたい話かもしれませぬ…」 しかし山崎は「どんな契約か、ちゃんと見ないと危ないですよ」と落ち着いて忠告。丸山も「そもそも“労働契約”になるのか“出演契約”になるのか曖昧ですし。下手すれば違法な労働形態になるかも…」と指摘する。 お滝は「わたし、せっかくこちらで自由に暮らせるかと思ったのに、なんだか複雑です…」とため息をつく。

■ 一条の光!? 歴史マニアが見つけた書状

 そんな折、森下が思い出したように声を上げる。「そういえば、うちの父が大の歴史オタクで、江戸時代の古文書を集めているんです。もしかしたら、お滝さんが仕えていた旗本の家系に関する資料があるかも…」 翌日、森下が実家の倉庫をひっかき回すと、なんと見覚えのある家紋と共に、お滝の話と一致する名前の人物が書かれた古文書が出てきた。「こ、これ…もしかして、お滝さんの主人だったお嬢様の記述が…」 文面には「家を飛び出した娘が神社に消えた」というような記載があり、お滝らしき女性の名も残されている。 驚いたことに、「神社で姿を消した下女に関する噂。時空の狭間に落ちたか――」などと怪しげな注釈まで。

第七章:クライマックス、決着のとき

■ 大門の“強引な契約”と山崎事務所の反撃

 その頃、テーマパークの大門は「うちで契約しないなら、もう名誉毀損で訴えますよ?」などと言い出していた。どうやら“本物の江戸の人”という噂を独占的に利用したいらしい。 ところが、山崎事務所が徹底的に契約書を読み込んだ結果、「不当に拘束する条項」や「お滝の人権を著しく制限する文言」が含まれていることが発覚。 山崎は大門に毅然と告げる。「この契約は到底認められないし、法的にも問題だらけです。もし強行するなら、こちらもしかるべき措置をとりますよ」 斎藤や丸山、森下も一斉ににらみを効かせると、大門は「くっ…」と悔しそうな表情で退散。どうやら強引なテーマパーク売り込みは失敗に終わった。

■ お滝の再スタート

 テーマパークに行く道は断念したものの、お滝には別の選択肢が用意されていた。 山崎が以前手がけたNPO法人(遠藤柚香が運営する“わんにゃんデジタルパーク”)や、深海ダイナーなど、さまざまな地域事業を展開しているクライアントたちが興味を持ってくれたのだ。 特に、幽霊物件で成功を収めた吉本は「江戸時代から来た人がいるなら、一緒に“江戸町体験カフェ”をやりましょうよ!」と大喜び。お滝も「お菓子や甘味などを作るのは得意にござりまする!」と、目を輝かせる。

 そこで、まずは“短期ゲスト”としてビジネスに参加してもらい、お滝が必要とする住まいや収入を工面する――つまり“協力者全員でサポートする”プランが生まれた。

エピローグ:変わらぬ笑顔、続く日常

 最終的に、お滝は“江戸からの客人”という立ち位置で、地域イベントやカフェ企画の手伝いをしながら、現代に順応する道を歩み始めた。もちろん、戸籍や住民票など法的問題は山積みのままだが、山崎事務所としては「まず生活を支えつつ、必要な限り調整していきましょう」というスタンスで動いている。 お滝は、ある日ふとこぼす。「あの…もしや、あのお嬢様も、どこかの時代に迷い込んでおられるのでしょうか…」 山崎は「この件は引き続き、何かわかったら連絡しますよ」と穏やかに微笑む。いつか、また新しい展開があるのかもしれない。

 夕方、事務所を出たスタッフたちは、草薙の坂の上から広がるオレンジ色の空を見上げ、みんなで大きく伸びをする。「幽霊、宇宙人、深海人、そして江戸時代からの訪問者…ホントに何でもアリですね」 斎藤がしみじみ言うと、丸山が照れ笑いを浮かべる。「まさか行政書士って、こんなにファンタジーな職業だったなんて…」 森下は嬉しそうに口を尖らせる。「次は何が来るんでしょう? 恐竜とか、妖精とか…?」 そこへ山崎が歩み寄り、柔らかい笑みをたたえながら声をかける。「さあ、今日もお疲れさまでした。みんなで夕食に行こうか。最近、草薙駅前に“江戸風居酒屋”ができたらしいよ」

 こうして、山崎行政書士事務所の日常はまた一歩、奇想天外な未来(過去?)へ続いていく。法務と笑いと人情が交錯する限り、この事務所はどんな時空の旅人でも、きっと温かく迎えてくれるのだ。

(まだまだ続く…かもしれない)

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