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シーズン2 第1話「封筒の中身は世界線:海外データが来た」

※本作はフィクションです。登場人物・出来事は創作であり、手続や書類に関する描写は一般的な範囲の表現です。個別の案件は事情により必要書類・手順が変わります。本作は特定の事案の結論や可否を断定するものではありません。

ホワイトボードの右上には、静鉄全駅制覇の証が貼られていた。ズラリと並ぶ駅名ステッカー。その横には、二重に書かれた呪文。

14:1514:15

そして壁の半分を占領する、プリンターの“勝手に名言コーナー”。

『残ってるか。』『運用だ。』『ズレは障害。』……などなど。

ゆいが壁を見上げて、泣き笑いみたいな声で言った。

「先生……シーズン1、終わったのに、壁が終わってないです」

「壁は終わらないよ。反省は続く」

さくらが、机の端を指して言った。

「先生。あれ、封印しましたよね」

そこには、透明ケースのUSBが鎮座している。黒い文字で。

USB『空』

みおが即答した。

「封印しました。机の上に置くのは、封印じゃありません。展示です」

「展示って言うな」

りながが、USBを見てうっとりした顔をする。

「でも…“空”って、ロマンありますよね」

「ロマンをUSBに求めるな」

あやのが小さく笑った。

「“空”って書いてあるものって、だいたい心の中に色々ありますよね」

「急に詩が来た」

封筒は、たいてい朝いちに心臓を叩く

その日の朝。玄関ポストに、封筒が一通。

差出人なし。ただ、角にボールペンで時刻が書いてある。

14:15

ゆいが封筒を持った瞬間、息を吸った。

「先生、これ…“来るやつ”です」

みおが付箋を貼る。

(① 差出人なし)(② 時刻あり)(③ だいたい危険)

山崎先生は、封筒を開けた。中に入っていたのは、紙が三枚。

一枚目:「海外データ」二枚目:「化学メーカー」三枚目:「外国人エンジニア」

りながが、目を輝かせた。

「先生!世界線が広がりました!」

「広がるな。まず落ち着け」

さくらが淡々と言う。

「先生。今日の相談、重いです。紙も、話も」

「紙が重いのは、化学メーカー案件の予感がするね」

みおが頷く。

「バインダーが来ます。確実に」

相談者は、バインダーで“重力”を持ち込む

10時。ドアが開いて入ってきたのは、スーツ姿の男性だった。穏やかな顔なのに、肩に“現場”が乗っている。

そして手には――予言通りの分厚いバインダー。

「こんにちは。○○化学の△△と申します。今日は…“海外向けの案件”と、“クラウドの話”と、“採用の話”が一緒に来まして…」

山崎先生が、心の中で小さく頷いた。

(全部来たな)

男性は、バインダーを机に置く。ドン。机が一瞬だけ沈んだ気がした。

ゆいが小声で呟く。

「紙…強い…」

みおが付箋を貼る。

(④ バインダー=物理)

男性は、申し訳なさそうに笑った。

「これ、全部“必要”って言われたんですけど…正直、どれが必要で、どれが“安心のための紙”なのか分からなくて」

あやのが、やわらかく言う。

「“全部必要”って言われると、心が止まりますよね」

男性が深く頷く。

「止まりました。…しかも、海外の取引先が“データの扱い”を気にしていて」

りながが反射で言う。

「海外データ!」

みおが冷静に止める。

「りなさん、叫ばない。現場がビビります」

「すみません!」

“海外データ”は、だいたい「誰が、どこで、触るか」の話

山崎先生は、一般論として整理した。

「海外データ、って言っても色々あります。“どんなデータが、どの業務で発生して、誰が触って、どこに保管されて、どこへ渡るか”。まずは“流れ”を見える化しましょう」

男性が、ほっとした顔になる。

「流れ…分かります。現場は流れてるんです。でも、説明ができない」

さくらが頷く。

「説明できないと、残りません」

「残るが出た」

みおが追撃する。

「残らないと、責任が宙に浮きます」

ゆいが、うっかり言う。

「宙に浮く責任…キャッチコピーに――」

さくらが目線だけで止める。

「広報、黙ってください」

「はい……」

“外国人エンジニア”が来ると、まず名前がズレる

男性は、二枚目の資料を出した。採用の話だ。

「それと…来月から、外国人エンジニアを受け入れる予定で。名前の表記が、もう段階でズレてます」

りながが真顔になる。

「出た、表記ゆれ…!」

男性が見せたのは、三つの表記。

  • パスポート:ALEXANDER O. RIVERA

  • 社内の呼び方:アレックス

  • エントリーフォーム:Alex Rivera(“O.”が消えてる)

みおが、淡々と言う。

「“同一人物”を証明する作業が始まります」

「始まるね」

あやのが、優しく言った。

「本人は一人なのに、書類上で三人になるやつですね」

「やめて、ホラー」

さくらが、紙を指でトントン叩く。

「先生。ここ、最初に揃えると後が楽です。最後に揃えると地獄です」

「それ、人生でも同じだね」

「人生に逃がさないでください」

そして、“クラウド”の話が現場を刺す

男性が、三枚目の資料を出した。クラウド移行の計画書。表紙が輝いている。

『グローバル対応のためのクラウド活用』

りながが小声で感動する。

「響きが強い…」

男性は、やや疲れた笑いで言った。

「上からは“クラウドなら世界対応できるだろ”って言われて…現場は“どこに何が行くか”で胃が痛いです」

みおが即答した。

「胃が正しいです」

「胃が正しいって何」

さくらが、静かに言う。

「“どこに行くか”と、“誰が触るか”は別です。そこがズレると、事故ります」

「事故るって言った」

男性が少し目を丸くした。

「…事故りますよね」

山崎先生は頷いた。

「一般論として、クラウドは便利だけど“放っておけば勝手に整う”ものじゃない。契約・委託・運用・証跡。そして、海外相手だと“説明”の要求も増える。だから、“説明できる形”に整えるのが一番効く」

男性は、息を吐いた。

「説明できる形…それが欲しかったです」

14:15、草薙は“もう味方”なのか

話が整理され始めた頃、インターホンが鳴った。

ピンポーン。

全員が時計を見る。

14:15

ゆいが小声で言う。

「もう来る…」

ドアが開く。草薙(監査官)が、今日は“客”ではなく“同僚っぽい顔”で立っていた。(相変わらず怖いが。)

「失礼します。少しだけ」

山崎先生が苦笑する。

「今日はステッカー、何ですか」

草薙が、机の上に二枚置いた。

『Tokyo』『Singapore』

りながが叫びそうになって、みおに止められた。

「りなさん、叫ばない」

「うっ…!リージョン…!」

草薙が淡々と言った。

「シーズン2は、駅じゃなくてリージョンです。世界線が広がったので」

男性(化学メーカー)が、目を丸くする。

「……え、リージョン?」

草薙は何事もないように続ける。

「海外データは、地理の話に見せかけて、運用の話です。そして、人名表記は、だいたい運用の話です」

ゆいが呟く。

「運用しか言わない人だ…」

草薙は、最後に小さなメモを置いた。

「14:15Z」

りながが固まる。

「……Z?」

みおが赤ペンを握りしめる。

「先生。Zが来ました」

さくらが言う。

「先生。ズです」

「ズじゃないと思う」

草薙は淡々と去り際に言った。

「それ、ズじゃないです」

「やっぱり!」

「じゃ。証跡、大事なんで」

ドアが閉まった。

オチ:プリンターが、突然英語で煽る

沈黙の中、プリンターが「ピッ」と鳴った。やめろ。今日は静かに終わりたい。

ウィーン。

吐き出された紙には、英語で一行。

『Time zone is a requirement.』

りながが震える声で言った。

「先生……プリンター、英語喋りました……」

みおが真顔で言う。

「誰が設定したんですか」

さくらが、プリンターを見て言った。

「先生。プリンター、世界対応しました」

ゆいが小声で感動する。

「グローバル…」

「感動するな」

山崎先生は、バインダーとリージョンステッカーと「14:15Z」メモを見比べて、深く息を吸った。

「……シーズン2、来たね」

今週のチェックリスト(一般論)

  • 海外データは「どんなデータが/誰が/どこで/どこへ」流れるかを先に見える化すると整理しやすい

  • 外国人エンジニアの受入れは、まず“表記の整合”(ローマ字・略称・社内表記)を揃えると後工程が軽くなる

  • クラウドは「置けば終わり」ではなく、説明できる運用・証跡が残る形に整えるのが効く

  • 新しい謎:「14:15Z」—Zはズじゃない(※ズじゃない)

ステッカー(シーズン2・リージョン編)

  • 1枚目:Tokyo

  • 2枚目:Singapore

プリンター被害状況

  • いきなり英語で「Time zone is a requirement.」を印刷(国際化)

  • ただし信用はしない(前科が多い)

次回予告

14:15Zは、誰の時間か。タイムゾーンがズレると、会議も、締切も、証跡もズレる。次回、シーズン2第2話 「14:15は誰の14:15?タイムゾーン地獄」

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