修正できる条文・できない条文
- 山崎行政書士事務所
- 1月5日
- 読了時間: 7分

(山崎行政書士事務所・生活法務サポート室/署名前チェックの現場から)
こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。契約書チェックの相談で、ほぼ必ず出てくる質問がこれです。
「これ、直せます?」「どこまで言っていいんですか?」「相手の“ひな形”って、絶対なんですか?」
結論から言うと——
契約書は“石板”じゃないので直せる条文は多い。でも、直せない(というより、直しても意味が薄い/相手が動かない/法律で制限される)条文も普通にある。
今日はその「見分け方」を、生々しく、でも笑える範囲で整理します。
※先に大事な注記です。当室(行政書士)は、契約書・合意書等の文書作成、内容確認(チェック)、条文の整理、修正案の文案作成など「書類面のサポート」を行います。相手方との交渉の代理、紛争解決の代理、裁判手続の代理は行いません。必要に応じて弁護士等の専門家相談をご案内します。
まず前提:「直せる/直せない」は法律より“現実”で決まることが多い
契約書の条文って、大きく分けるとこの3種類です。
取引条件(ビジネスの中身)
社内ルール(コンプラ・リスク管理)
法律の最低ライン(触ると無効化しやすい領域)
このどれかで、修正のしやすさが変わります。つまり、直せないのは「あなたが弱いから」じゃなくて、単に条文の種類が違うことが多いです。
1)修正しやすい条文
〜“ビジネスの中身”だから、話が通りやすいゾーン〜
ここは一言で言うと、商売の条件。双方が合意して成り立つので、修正の余地が比較的あります。
代表例
業務範囲・成果物の定義(何をどこまでやるか)
仕様変更(追加)の手順(増えたらどうする?見積は?期限は?)
納期・スケジュール(遅れたらどうする?連絡義務は?)
検収(確認)の基準と期限(何をもって完了?いつまでに確認?)
金額・内訳・支払条件(いつ請求?いつ払う?前払・分割は?)
交通費・実費の扱い(どこまで含む?上限は?)
連絡方法・窓口(担当変更時どうする?)
再委託の可否(必要なら条件を付ける)
なぜ修正しやすい?
ここが曖昧だと、将来止まるのが「現場」だからです。相手も本音では止めたくない。止まると双方が損する。だから調整が入りやすい。
生活法務サポート室的ワンポイント
「直したい」より先に、こう言語化すると通りやすいです。
「揉めないために明確にしたい」
「運用に合わせたい」
「追加が出たときの手順を決めたい」
※「あなたが悪いから直せ」より、事故防止の提案にすると角が立ちにくいです。
2)修正しにくい条文
〜“社内ルールの門番”がいるゾーン〜
ここは、相手の会社の法務・総務・コンプラが守っている城壁です。担当者が「いいっすよ!」と言っても、門番が「ダメです」って言うやつ。
代表例
反社会的勢力排除条項
個人情報・セキュリティ関連(取扱・事故時の報告・管理義務)
秘密保持(NDA)
輸出管理・コンプラ関連の表明保証(業界による)
譲渡禁止(契約上の地位・債権の譲渡)
監査・報告義務(相手が大企業ほど入りやすい)
損害賠償や免責の“基本方針”(上限の置き方など)
なぜ修正しにくい?
理由はシンプルで、相手の中でこう扱われているからです。
「これは取引条件じゃなくて、会社を守る安全装置」
安全装置は外しにくい。車で言うならシートベルトを「息苦しいんで無しで」って言う感じになります(そりゃ通らない)。
でも、ここにも“調整の余地”はある
「全部削除」は無理でも、次の調整は入りやすいことがあります。
範囲を絞る(秘密情報の定義、対象データの範囲)
期間を現実化する(永遠→合理的期間、などの見直し)
例外を入れる(公知情報、事前保有、正当な第三者取得等)
運用を合わせる(報告手順、連絡先、手段)
責任の上限・対象を整理する(何が含まれ、何が含まれないか)
つまり「門番を殴る」のではなく、門の大きさを調整するイメージです。
3)修正しても危険・意味が薄い条文
〜“触ると無効になりやすい/違法・無効のリスクが上がる”ゾーン〜
ここは言い方が大事で、「絶対に直せない」ではなく、
直しても効かない(無効になりやすい)
直し方を間違えると別のトラブルになる
業法や強行規定の影響を受けやすい
というゾーンです。
よくある例(一般論)
法律で認められた最低限の保護を丸ごと捨てさせるような条文(例:一方に不利な免責・解除制限などが“過度”になっているケース)
労働・消費者・賃貸借など、分野によってルールが強い領域での無茶な条文(※どの法律がどう当たるかは個別事情が大きいので、ここは慎重に)
公序良俗に反するような内容になり得るもの
現実に履行不可能な義務を押し付けているもの(例:「24時間365日、即時対応を無償で」みたいなやつ)
このあたりは、条文をいじる前に「そもそも契約の組み立て」を見直した方が安全なことが多いです。そして、個別性が強いので、状況によっては早めに弁護士相談が適切になります。
「直せる条文/直しにくい条文」を見分けるコツ
〜相手の“本音の分類”を当てにいく〜
次の質問を自分に投げると、整理が早いです。
Q1:これは“取引の中身”か?“会社の安全装置”か?
中身 → 直しやすい
安全装置 → 直しにくい(でも範囲調整は可能なことも)
Q2:ここが曖昧だと、誰が困る?
双方が困る → 直りやすい(現場が止まるから)
相手だけが困る → 相手は強く出やすい
あなた(自分)だけが困る → こちらから根拠と代案を出す必要がある
Q3:「運用でカバーします」で済ませられそう?
この言葉が出てきたら要注意です。運用は、人が変わると消えます。契約書は、人が変わっても残ります。
逆に「直せない」と思われがちだけど、直せることもある条文
ここ、希望が出るところです。
1)秘密保持(NDA)
削除は難しくても、範囲・期間・例外・開示手順は整えられることがあります。秘密保持は「守る」だけじゃなく「生活できる」形が大事。
2)損害賠償・責任制限
丸ごと削除は難しくても、
上限を置く
対象を限定する
間接損害の扱いを明確にするなど、言い方の整備でバランスを取れることがあります。
3)裁判管轄・準拠法
相手が動かないことも多いですが、案件や関係性によっては調整余地が出ることもあります。(ただし、ここは“揉めた後に効く条文”なので、相手が譲りにくいのも事実です)
修正するなら順番がある
〜全部直そうとして全部失う人へ〜
契約書でやりがちな失敗:
「気になるところ全部に赤入れ」→ 相手「全部無理です」→ 交渉以前に空気が凍る
おすすめの優先順位は、だいたいこの順です。
業務範囲・成果物(揉めの発火点)
お金(支払条件・検収含む)(止まると致命傷)
変更手順(“ついでに”増殖対策)
出口(解約・精算)(やめ方が地獄を防ぐ)
責任(上限・範囲)(最悪の日のダメージ調整)
秘密保持・知財(将来の生活に刺さる)
“全部を完璧に”より、地雷を減らすが現実的です。
生活法務サポート室としてできること
(行政書士の範囲内での「署名前支援」)
当室では、交渉の代理ではなく、当事者が使うための書類面サポートとして
契約書の内容確認(チェック)
直したいポイントの整理(優先順位づけ)
代替条文・修正案の文案作成(赤入れ案、条文案)
“どこが空白か”の洗い出し(書いてないが怖い)
合意書・覚書への落とし込み案の作成
などを行い、「直せるところに力を使う」設計をお手伝いします。※すでに紛争化している、代理対応が必要になり得る等の場合は、弁護士等の相談が適切になることがあります。
まとめ:直せる条文は“商売の条件”、直しにくい条文は“会社の安全装置”
修正しやすい:範囲、金額、支払条件、検収、納期、変更手順、連絡など(現場を回す条文)
修正しにくい:秘密保持、反社、セキュリティ、譲渡禁止、責任の基本方針など(社内ルールの城壁)
触ると危険・意味が薄い:法律の最低ラインに反する可能性があるもの、無茶な免責や不可能な義務など(個別性が強い)
最後に一言。
契約書は「直せるか」より先に、**「直すべきところはどこか」**が勝負です。
「この契約書、どこが直せて、どこが門番案件?」「赤入れするとしたら優先順位は?」そんなときは、署名前の段階で“書類としての安全点検”をご相談ください。



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