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修正できる条文・できない条文

(山崎行政書士事務所・生活法務サポート室/署名前チェックの現場から)

こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。契約書チェックの相談で、ほぼ必ず出てくる質問がこれです。

「これ、直せます?」「どこまで言っていいんですか?」「相手の“ひな形”って、絶対なんですか?」

結論から言うと——

契約書は“石板”じゃないので直せる条文は多い。でも、直せない(というより、直しても意味が薄い/相手が動かない/法律で制限される)条文も普通にある。

今日はその「見分け方」を、生々しく、でも笑える範囲で整理します。

※先に大事な注記です。当室(行政書士)は、契約書・合意書等の文書作成、内容確認(チェック)、条文の整理、修正案の文案作成など「書類面のサポート」を行います。相手方との交渉の代理、紛争解決の代理、裁判手続の代理は行いません。必要に応じて弁護士等の専門家相談をご案内します。

まず前提:「直せる/直せない」は法律より“現実”で決まることが多い

契約書の条文って、大きく分けるとこの3種類です。

  1. 取引条件(ビジネスの中身)

  2. 社内ルール(コンプラ・リスク管理)

  3. 法律の最低ライン(触ると無効化しやすい領域)

このどれかで、修正のしやすさが変わります。つまり、直せないのは「あなたが弱いから」じゃなくて、単に条文の種類が違うことが多いです。

1)修正しやすい条文

〜“ビジネスの中身”だから、話が通りやすいゾーン〜

ここは一言で言うと、商売の条件。双方が合意して成り立つので、修正の余地が比較的あります。

代表例

  • 業務範囲・成果物の定義(何をどこまでやるか)

  • 仕様変更(追加)の手順(増えたらどうする?見積は?期限は?)

  • 納期・スケジュール(遅れたらどうする?連絡義務は?)

  • 検収(確認)の基準と期限(何をもって完了?いつまでに確認?)

  • 金額・内訳・支払条件(いつ請求?いつ払う?前払・分割は?)

  • 交通費・実費の扱い(どこまで含む?上限は?)

  • 連絡方法・窓口(担当変更時どうする?)

  • 再委託の可否(必要なら条件を付ける)

なぜ修正しやすい?

ここが曖昧だと、将来止まるのが「現場」だからです。相手も本音では止めたくない。止まると双方が損する。だから調整が入りやすい。

生活法務サポート室的ワンポイント

「直したい」より先に、こう言語化すると通りやすいです。

  • 「揉めないために明確にしたい」

  • 「運用に合わせたい」

  • 「追加が出たときの手順を決めたい」

※「あなたが悪いから直せ」より、事故防止の提案にすると角が立ちにくいです。

2)修正しにくい条文

〜“社内ルールの門番”がいるゾーン〜

ここは、相手の会社の法務・総務・コンプラが守っている城壁です。担当者が「いいっすよ!」と言っても、門番が「ダメです」って言うやつ。

代表例

  • 反社会的勢力排除条項

  • 個人情報・セキュリティ関連(取扱・事故時の報告・管理義務)

  • 秘密保持(NDA)

  • 輸出管理・コンプラ関連の表明保証(業界による)

  • 譲渡禁止(契約上の地位・債権の譲渡)

  • 監査・報告義務(相手が大企業ほど入りやすい)

  • 損害賠償や免責の“基本方針”(上限の置き方など)

なぜ修正しにくい?

理由はシンプルで、相手の中でこう扱われているからです。

「これは取引条件じゃなくて、会社を守る安全装置」

安全装置は外しにくい。車で言うならシートベルトを「息苦しいんで無しで」って言う感じになります(そりゃ通らない)。

でも、ここにも“調整の余地”はある

「全部削除」は無理でも、次の調整は入りやすいことがあります。

  • 範囲を絞る(秘密情報の定義、対象データの範囲)

  • 期間を現実化する(永遠→合理的期間、などの見直し)

  • 例外を入れる(公知情報、事前保有、正当な第三者取得等)

  • 運用を合わせる(報告手順、連絡先、手段)

  • 責任の上限・対象を整理する(何が含まれ、何が含まれないか)

つまり「門番を殴る」のではなく、門の大きさを調整するイメージです。

3)修正しても危険・意味が薄い条文

〜“触ると無効になりやすい/違法・無効のリスクが上がる”ゾーン〜

ここは言い方が大事で、「絶対に直せない」ではなく、

  • 直しても効かない(無効になりやすい)

  • 直し方を間違えると別のトラブルになる

  • 業法や強行規定の影響を受けやすい

というゾーンです。

よくある例(一般論)

  • 法律で認められた最低限の保護を丸ごと捨てさせるような条文(例:一方に不利な免責・解除制限などが“過度”になっているケース)

  • 労働・消費者・賃貸借など、分野によってルールが強い領域での無茶な条文(※どの法律がどう当たるかは個別事情が大きいので、ここは慎重に)

  • 公序良俗に反するような内容になり得るもの

  • 現実に履行不可能な義務を押し付けているもの(例:「24時間365日、即時対応を無償で」みたいなやつ)

このあたりは、条文をいじる前に「そもそも契約の組み立て」を見直した方が安全なことが多いです。そして、個別性が強いので、状況によっては早めに弁護士相談が適切になります。

「直せる条文/直しにくい条文」を見分けるコツ

〜相手の“本音の分類”を当てにいく〜

次の質問を自分に投げると、整理が早いです。

Q1:これは“取引の中身”か?“会社の安全装置”か?

  • 中身 → 直しやすい

  • 安全装置 → 直しにくい(でも範囲調整は可能なことも)

Q2:ここが曖昧だと、誰が困る?

  • 双方が困る → 直りやすい(現場が止まるから)

  • 相手だけが困る → 相手は強く出やすい

  • あなた(自分)だけが困る → こちらから根拠と代案を出す必要がある

Q3:「運用でカバーします」で済ませられそう?

この言葉が出てきたら要注意です。運用は、人が変わると消えます。契約書は、人が変わっても残ります。

逆に「直せない」と思われがちだけど、直せることもある条文

ここ、希望が出るところです。

1)秘密保持(NDA)

削除は難しくても、範囲・期間・例外・開示手順は整えられることがあります。秘密保持は「守る」だけじゃなく「生活できる」形が大事。

2)損害賠償・責任制限

丸ごと削除は難しくても、

  • 上限を置く

  • 対象を限定する

  • 間接損害の扱いを明確にするなど、言い方の整備でバランスを取れることがあります。

3)裁判管轄・準拠法

相手が動かないことも多いですが、案件や関係性によっては調整余地が出ることもあります。(ただし、ここは“揉めた後に効く条文”なので、相手が譲りにくいのも事実です)

修正するなら順番がある

〜全部直そうとして全部失う人へ〜

契約書でやりがちな失敗:

「気になるところ全部に赤入れ」→ 相手「全部無理です」→ 交渉以前に空気が凍る

おすすめの優先順位は、だいたいこの順です。

  1. 業務範囲・成果物(揉めの発火点)

  2. お金(支払条件・検収含む)(止まると致命傷)

  3. 変更手順(“ついでに”増殖対策)

  4. 出口(解約・精算)(やめ方が地獄を防ぐ)

  5. 責任(上限・範囲)(最悪の日のダメージ調整)

  6. 秘密保持・知財(将来の生活に刺さる)

“全部を完璧に”より、地雷を減らすが現実的です。

生活法務サポート室としてできること

(行政書士の範囲内での「署名前支援」)

当室では、交渉の代理ではなく、当事者が使うための書類面サポートとして

  • 契約書の内容確認(チェック)

  • 直したいポイントの整理(優先順位づけ)

  • 代替条文・修正案の文案作成(赤入れ案、条文案)

  • “どこが空白か”の洗い出し(書いてないが怖い)

  • 合意書・覚書への落とし込み案の作成

などを行い、「直せるところに力を使う」設計をお手伝いします。※すでに紛争化している、代理対応が必要になり得る等の場合は、弁護士等の相談が適切になることがあります。

まとめ:直せる条文は“商売の条件”、直しにくい条文は“会社の安全装置”

  • 修正しやすい:範囲、金額、支払条件、検収、納期、変更手順、連絡など(現場を回す条文)

  • 修正しにくい:秘密保持、反社、セキュリティ、譲渡禁止、責任の基本方針など(社内ルールの城壁)

  • 触ると危険・意味が薄い:法律の最低ラインに反する可能性があるもの、無茶な免責や不可能な義務など(個別性が強い)

最後に一言。

契約書は「直せるか」より先に、**「直すべきところはどこか」**が勝負です。

「この契約書、どこが直せて、どこが門番案件?」「赤入れするとしたら優先順位は?」そんなときは、署名前の段階で“書類としての安全点検”をご相談ください。

 
 
 

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