国境なき行政書士
- 山崎行政書士事務所
- 1月6日
- 読了時間: 4分

巻之一 波瀾の序
時は令和の世といへど、海外にて生じる戦火の烟は絶えず、傷つきし人々は続々と安寧を求むる。ここに一人の男あり。名を山下邦仁(やました・くにひと)といふ。職は行政書士にして、諸外国との法手続を専門とし、四海を駆け巡り数多の悩みを解決せし猛き士(さむらい)なる。
ある折、山下が営む事務所へ、疲れ果てた面持ちの異国の一家が訪れたり。遠き紛争地に生を受け、幾多の困窮を経て日本へ逃れしという。山下はその一家の難民認定申請を請負ひ、書面を整へ法の力をもって救はんと決心す。
さりながら、その一家、秘めし事情を頑なに語らず。見れば幼子(おさなご)二人を抱へ、深く憂ひに沈みきり、常に怯へるがごとし。山下が怪しみ問い質せば、彼らが携ふる一冊の書状ありと察する。曰く、それは国際的犯罪組織の悪事を暴く「証拠」との噂。しかも、その秘密を狙ふ魔の手は、既に一家を付け狙ひ、うごめき始めたるといふ。
巻之二 追手との邂逅
山下はいよいよ事の重大さを悟り、その一家を守らんと誓ふ。されど恐るべしは国際犯罪組織の執念、手下は既に日本の入り口に忍び寄り、家族の行方を探り始む。山下は一家を安全なる隠れ家へ移さんと図り、まずは空港や港湾の監視を回避せんがため、役所に難民保護の仮手続を急ぎ願ひ出る。法知識を駆使し、複雑な条文を紐解き、条約に照らし合わせ、足止めとなる書面を整へては役人を説得し、辛くもひとまずの保護を得ることに成功せり。
しかるに安堵も束の間、夜陰にまぎれて現れし二人の刺客があり。鋭き眼光で山下と一家に迫り、書状を渡せと脅迫す。ここで山下、咄嗟に一家を庇ひつつ机上の書類束を投げつけ、短き隙をつくり逃走を試みる。かくして始まるは、想ひも寄らぬ逃亡の旅路なり。
巻之三 国境を越えて
山下は急ぎ、海外在住の法律家仲間に連絡を取り、家族の一時的な滞在先を手配す。ビザ申請の細かき要件を瞬時に判断し、各国の法制度の差異を熟知するがゆゑに、道は自ずと開かれり。斯くして一家とともに深夜の空路を発ち、次なる避難地を目指す。しかし犯罪組織の魔手はなおも長し。空港に潜む手下、或ひは海外の協力者らが、旅路の先々で待ち伏せる。危ふき瞬間ごとに、山下は行政書士の才智を活かし、在留資格や通関手続など、法の抜け道を巧みに渡り行く。
「この証拠が世に晒されれば、彼らの悪行は明るみに出る。されど、我らが安全は何処にもなきに等し……」
母親の涙ながらの訴へに、山下はただ黙して前を見据ふ。誰をも救ふ法の秩序を信じ、必ずや難局を乗り越へんと心に誓ふ。
巻之四 決戦の刻
幾度かの死地をくぐり抜け、山下と一家は、とある国際司法機関の支局に辿り着く。この地にて犯罪組織を告発し、その書状を提出しなば、一家の保護は万全とならん。されど最後の関門にて、一家の身分に疑義ありと国境管理当局が足止めをかける。敵の内通者が手を回したかと思はれるほどに、審査は厳し。だが山下、事前に整へし証明書や、難民条約に拠る特別措置の根拠を示して管理官を説き伏せ、一家の通行を認めさせしむ。
ところが、その刹那、背後より敵の刺客が襲ひ来たり。絶体絶命なる一家を守らんがため、山下は身を挺して応戦す。組織の手下らも怯まず食ひ下がるが、機関の保安官が加勢に入り、遂に残党を制圧。かくして闇の勢力は露と消えたり。
終幕
後日、一家の難民認定は正式に受理され、国際犯罪組織は摘発を受ける運びとなる。紛争地に散華せし数多の命を思ひ、母親は感謝の涙を零しつつ、山下に深く礼を述ぶ。山下もまた胸に熱きものを覚え、「法は人を縛るだけの鎖にあらず。正義を護り、未来へ橋を架くものである」とあらためて悟るに至る。
かくして物語は一段落を迎ふるも、山下の行く先には、まだ数多の国境と問題が立ちはだかるであらう。それこそが「国境なき行政書士」の宿命。正義を信じ、命を賭して顧客を護る。山下の旅路は尽きることなく、今も異国の風を切り、真の平和を求めて駆け続ける――。





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