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契約書は“今”より“将来”を見る文書

(山崎行政書士事務所・生活法務サポート室/署名前チェックの現場から)

こんにちは。山崎行政書士事務所・生活法務サポート室です。今日は契約書の真理を、わりと身もフタもなく言います。

契約書は「今の仲良し」ではなく「将来のモメポイント」を見る文書です。

今、相手とニコニコ握手してる。打合せもいい感じ。スタンプも飛び交う。「よろしくお願いします〜!」って言ってる。

……その“今の空気”、契約書には基本、保存されません。保存されるのは 条文 です。空気は、契約書の添付資料じゃないんです(残念)。

※先に大事な注記です。当室(行政書士)は、契約書・合意書等の文書作成、内容確認(チェック)、条文の整理、リスクの見える化など「書類面のサポート」を行います。紛争化した案件での代理交渉や裁判手続の代理は行いません。状況により弁護士等の専門家相談が適切な場合は、その旨ご案内します。


「今」しか見てない契約書は、だいたい将来で泣きます

契約書を読むとき、つい「今の気持ち」で読んじゃうんです。

  • 相手、感じいいし

  • ちゃんとした会社だし

  • たぶん大丈夫だし

  • みんなサインしてるって言うし

  • 早く進めたいし

でも契約書が出番を迎えるのは、たいていこういう日です。

  • 期限に間に合わない日

  • お金が払われない日

  • キャンセルが飛んでくる日

  • 仕様が増殖する日(“ついでにこれも”地獄)

  • 連絡が途絶える日

  • 誰かが「聞いてない」と言い出す日

契約書は、平和な日に読む“ラブレター”じゃなくて、荒れた日に開く“取扱説明書”です。


契約書が見ている「将来」=よくある未来予報

契約書チェックのとき、私たちが頭の中でやるのはだいたいこれです。


「最悪の日に、この条文で耐えられるか?」シミュレーション

では、契約書が見に行く“将来”の代表例を、現場あるあるで。


未来①:納期がズレた(ズレる、ズレる、ズレる)

「納期:○月○日」この一行で安心してませんか?

将来起きるのは、こういう会話です。

相手「遅れてます」あなた「どれくらい?」相手「ちょっと」あなた「ちょっとって何日?」相手「すぐ」あなた「すぐっていつ?」

契約書が“将来”で見るべきはここ。

  • 遅延したときの扱い(延長の条件、連絡義務)

  • 検収(確認)と完了の基準

  • 期限が守れない場合の手順(報告、代替案)

納期って、書いて終わりじゃなくて、ズレたときの着地方法まで書いて初めて意味が出ます。


未来②:支払いが遅れる(または止まる)

将来、あなたの口から出がちな言葉:

「いや、払うって言ってましたよね?」

相手はこう返します。

「検収が終わってないので」

この未来予報、めちゃくちゃ多いです。だから見るべきはここ。

  • 請求のタイミング(いつ請求できる?)

  • 支払期限(いつまで?)

  • 検収と支払いの関係(検収の期限がないと永遠に検収が来ない)

  • 分割や前払・着手金の有無

  • 追加費用が出る条件

お金の条文は、**“未来の誤解が起きない書き方”**が命です。

未来③:キャンセルが発生する(急に来る)

今は「ぜひお願いします!」でも、将来は突然こう来ます。

「やっぱりなしで」

このとき契約書が薄いと、あなたが薄くなります(体力が)。

見るべきはここ。

  • 解除・解約できる条件

  • 何日前まで?(通知方法は?口頭OK?書面のみ?)

  • 途中まで進んだ分の精算(どこまでが有償?)

  • キャンセル料・違約金の考え方(バランスも重要)

キャンセル条項は、相手を縛るためじゃなく、**“お互いの損を増やさないため”**にあります。


未来④:仕様が増える(気づいたら別プロジェクト)

最初は「これだけ」で始まるのに、将来こうなりがち。

  • 「ついでに」

  • 「念のため」

  • 「それも含まれてますよね?」

  • 「常識的に」

はい出ました、契約書界のラスボス:“含まれる”

見るべきはここ。

  • 業務範囲(どこまでが契約に含まれる?)

  • 追加変更の手順(追加の見積・承認・納期調整)

  • 成果物の定義(何を納品したら完了?)

「変更が起きる前提」で作る契約書は、将来強いです。現実は、だいたい変更が起きます。人生と同じです。


未来⑤:連絡が取れない(既読がつかない世界線)

将来、起きがちなこと。

  • 担当者が変わった

  • メールが埋もれた

  • 電話に出ない

  • 住所が変わった

  • そもそも返事がない

このときに効くのが、地味だけど強い条文。

  • 通知方法(どの手段で連絡したら「到達」と扱う?)

  • 連絡先の変更時の扱い

  • 返信期限(検収の期限などもここ)

“連絡”を甘く見ると、将来「言ってない」「届いてない」が増えます。契約書は未来の通信規格です。


未来⑥:秘密保持が現実を殴ってくる

秘密保持、必要です。ただし広すぎると将来こうなります。

  • 実績として話せない

  • ポートフォリオに載せられない

  • 他案件にも応用できない

  • いつまで秘密か分からない

見るべきはここ。

  • 秘密情報の範囲(何が秘密?何は除外?)

  • 期間(いつまで?)

  • 例外(公知情報、事前保有、第三者から合法取得など)

  • 返却・削除の扱い

“守る”は大事。でも“生きづらい”秘密保持は将来しんどいです。


未来⑦:成果物の権利が「全部相手」になっている

将来のショックあるある:

「え、これ自分が作ったのに、自分で使えないの…?」

見るべきはここ。

  • 成果物の権利の帰属(誰のもの?)

  • 再利用の可否(類似案件で使える?)

  • 素材や既存ノウハウの扱い(元から持ってたものまで吸い取られてない?)

権利条項は“今”より“将来”に効く、代表選手です。


未来⑧:事故が起きた(そして責任が無限になる)

今は「うまくいく前提」でも、将来は事故が起きます。

  • 納品ミス

  • 仕様ズレ

  • 情報漏えい

  • トラブル拡大

このときに見るべきは、責任の条文。

  • 損害賠償の範囲

  • 上限(ある?ない?)

  • 免責(片側だけ強くない?)

  • 間接損害(逸失利益など)の扱い

  • 保険の有無(必要なら)

責任条項が薄い契約書は、将来あなたの胃に刺さります。


「将来を見る」ための、超シンプルな質問7つ

契約書を前にしたら、まずこれだけ自問してください。

  1. 相手が払わなかったら、どうなる?

  2. 自分が途中で続けられなくなったら、どうなる?

  3. 相手が途中でやめたら、どうなる?

  4. 納期がズレたら、どうする?誰が何を連絡する?

  5. 仕様が増えたら、追加費用と期限はどう決める?

  6. 成果物は誰のもの?自分は再利用できる?

  7. トラブルが起きたとき、責任の範囲はどこまで?

この質問に契約書が答えてくれないなら、将来はだいたい揉めます。揉めるというか、「答えがない」ので揉めます。


「協議する」だけの契約書は、将来の自分に丸投げしている

条文にありがちな、ふわっとワード:

「協議のうえ決定する」

協議は大事です。でも、将来の現場はこうです。

  • 協議したい側:あなた

  • 協議したくない側:相手(既読スルー)

だからこそ、“協議する”ならセットで欲しいんです。

  • 協議の期限

  • 決まらない場合の扱い(次の手順)

  • 一旦の暫定ルール

「将来は話し合いで」だけだと、将来はだいたい話し合いになりません。忙しいからです。人はいつも忙しい(特に揉めてる時は)。


生活法務サポート室としての「将来を見るチェック」とは

当室の契約書チェック(署名前)の視点はシンプルです。

  • 今の取引がうまくいくことより

  • うまくいかなかったときの被害を小さくすること

そのために、

  • 条文の曖昧さを減らす

  • 用語を定義する(成果物、検収、追加業務など)

  • 将来起きるイベント(遅延・変更・解約)を想定して整える

  • バランスが片側に寄りすぎていないか見える化する

といった「書類としての整備」を行います。※交渉の代理は行いませんが、当事者が使用するための修正案の文案作成・条文案の整理など、文書面のサポートは可能です。


まとめ:契約書は“未来の自分”へのメッセージ

契約書は、今のあなたが未来のあなたに送る手紙です。

未来のあなたは、たぶんこう言ってます。

「お願いだから、今ちゃんと読んで」「“普通”って言葉で押さないで」「最悪の日を想像して」

契約書は“今”の仲良しを疑うためではなく、将来のトラブルを最小化するためにあります。

「急かされてるけど不安」「この条文、将来どうなる?」そんなときは、署名前の段階で“将来を見る文書”に整えるためのチェックをご相談ください。

 
 
 

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