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情報セキュリティチェックリストを軽く見ていたせいで、取引チャンスを逃した話

「また来たよ、セキュリティチェックリスト。 どうせ“形式だけ”なんだから、営業のほうでちゃちゃっと埋めて出しておいて。」

——そんなノリで扱っていたチェックリストが原因で、大きな取引チャンスを逃してしまった会社の話です。

静岡県内の中堅企業でも、

  • 大手メーカー

  • 金融機関

  • 自治体・公共系

と取引しようとすると、ほぼ必ずと言っていいほど「情報セキュリティチェックリスト」「サプライチェーンリスク調査票」が届きます。

これを 「単なる事務作業」 として軽く扱った結果、もったいないことになってしまった実例を、少し脚色しつつ整理してみます。

登場人物:A社と、とある大手メーカー

  • A社:静岡県内の中堅IT系企業(製造業向けシステム開発・運用)

  • 相手:東証プライム上場の大手メーカー

  • 案件:グループ全体で使う業務システムの開発・保守(規模は数千万円〜億超えが見込めるもの)

技術的な評価では、A社は最終候補2社のうちの1社。営業担当も「これは本気で取りに行こう」と気合い十分でした。

そこに届いたのが、

「情報セキュリティに関する自己点検シート(100問以上)」

と、規程類の提出依頼です。

見落とし①:締切直前まで放置、「誰の仕事か」が決まっていない

営業担当はこう考えました。

「技術的なところはクリアしているし、こういうチェックシートは“お作法”だから大丈夫でしょう。」

とりあえずメールを情シス・総務に転送したものの、

  • 「とりあえず見ておいてください」

  • 「そのうちミーティングしましょう」

といった感じで、誰が責任を持って回答をまとめるのかが決まらないまま、締切の1週間前になってしまいます。

あわてて社内で回覧すると、各部署からこんな声が。

  • 情シス:「技術的な設問は答えられるけど、契約とか規程の話は分からない」

  • 総務:「セキュリティ規程はあるけど、クラウドまわりは現場任せで…」

  • 開発:「忙しいので、こういう紙仕事は後回しにしてほしい」

結局、営業がほぼ一人で、過去の資料をつなぎ合わせて埋めることになりました。

見落とし②:とりあえず「はい」と書いておけば印象がいい…は大間違い

A社には、数年前に作った情報セキュリティ規程が一応ありました。しかしクラウド利用が増えてからの見直しはされていません。

営業担当は規程をざっと眺め、

  • 「多要素認証を導入しています」

  • 「退職者・異動者のアカウントは速やかに削除します」

  • 「重要ログは◯年間保管しています」

など、**“そうあるべき”回答に合わせてチェックを入れていきました。

実際のところは、

  • 多要素認証:管理者アカウントだけ

  • 退職者アカウント:月一でまとめて削除

  • ログ保管:クラウドサービスによってまちまち(90日しか残らないものも)

といった状態だったのですが、

「まあ、将来的にはこうする予定だし、細かいところまでは見ないだろう」

という判断で、「はい」を多用してしまいます。

見落とし③:フリーテキスト欄を“空欄”で返してしまう

チェックリストのなかには、

  • 「クラウドサービスの利用状況と、データ保管場所を説明してください」

  • 「情報セキュリティに関する組織体制・責任者についてご説明ください」

といった、フリーテキストで書かせる設問もありました。

営業担当は、

「こういうのは、あんまり読まれないだろうし…とりあえず最低限だけ書いておこう」

と考え、

  • 「クラウドサービスを適切に利用しています」

  • 「情報セキュリティ責任者を任命しています」

といった抽象的な一文だけを入れて提出しました。

その頃、競合B社がやっていたこと

A社と競っていたB社は、以前から大企業との取引が多く、セキュリティチェックシートを“営業ツール”として扱う文化がありました。

B社がやっていたのは、例えばこんなことです。

  • 回答責任者を最初から明確に決める

    • 営業・情シス・法務・開発から1名ずつ

  • 過去のチェックシート回答を“ひな形集”として蓄積し、表現をブラッシュアップして使い回せるようにしている

  • フリーテキスト欄には、「うちはここまで考えてやっています」とアピールできる説明を丁寧に記載

つまり、「どう書けば相手が安心するか」を意識して、回答を作り込んでいたのです。

結果:A社は「リスクが読めない会社」と判断される

数週間後、A社に届いたのは、シンプルな1通のメールでした。

「このたびはご提案ありがとうございました。検討の結果、今回は他社様を採用することといたしました。」

営業担当がこっそり担当者に理由を聞いてみると、返ってきたのはこんな答えでした。

「技術的な提案内容はA社さんも非常に魅力的でした。ただ、グループ全体で利用するシステムという性質上、サプライチェーン全体の情報セキュリティリスクを厳しく見ています。チェックリストの内容や、その後の確認で、まだ体制が整いきっていない印象を受けまして…」

どうやら、

  • 回答に矛盾が多かったこと

  • フリーテキスト欄が抽象的で具体性に欠けたこと

  • 追加で行った数点の質問にも、曖昧な返答が多かったこと

などから、

「この会社に長期的な運用を任せて大丈夫か?」

という不安が拭えなかった、ということのようでした。

「技術では負けていないのに選ばれなかった」の裏側

A社の中では、

  • 「技術では勝っていたはずなのに…」

  • 「価格も頑張ったのに、なぜB社なんだろう」

というモヤモヤがしばらく続きました。

しかし冷静に振り返ると、

  • 情報セキュリティチェックリストを、“技術提案書と同じ重さ”で扱っていなかった

  • 自社の実態をきちんと棚卸しせず、“理想状態”ベースで回答してしまった

  • フリーテキスト欄を、差別化のチャンスではなく、面倒な「作文欄」だと捉えていた

という3つの見落としが浮かび上がってきます。

チェックリストは、

「御社と長く付き合っても大丈夫か?」

を見極めるためのツールです。そこに「なんとなく」で答えてしまうと、技術力や価格以前のところで、候補から外されることもある、というわけです。

同じ失敗を防ぐために:最低限ここだけ押さえる3ポイント

A社と同じ思いをしないために、情報セキュリティチェックリストについて「ここだけは押さえたい」というポイントを3つにまとめます。

1. チェックリストには“責任者”をつける

  • 営業だけ、情シスだけ、総務だけに投げない

  • 「この案件のチェックリストは◯◯さんが取りまとめる」と決める

  • その上で、

    • 営業:お客様の意図を把握

    • 情シス:技術的・運用面の回答

    • 法務・総務:規程・契約・体制面の回答という役割分担をしていく

「誰の仕事か」が曖昧なまま締切を迎えると、どうしても“その場しのぎ”の回答になりがちです。

2. 「理想」ではなく「現実+改善方針」で答える

  • 実態が追いついていないのに「はい」と答えない

  • 該当する対策がまだできていない場合は、

    • 現状

    • リスクの認識

    • いつまでにどう改善するかをセットで書く

例:

「現時点では管理者アカウントのみに多要素認証を導入しています。一般ユーザーへの展開を◯年◯月までに予定しており、それまでの暫定措置として、パスワードポリシーの強化とログ監視を実施しています。」

こう書いてあれば、

  • 「何も考えていない会社」ではなく

  • 「限られたリソースの中で優先順位をつけて対策している会社」

として見てもらいやすくなります。

3. フリーテキスト欄は“営業資料”だと思って書く

フリーテキスト欄は、面倒なオマケではなく、**「他社と差がつくポイント」**です。

  • 自社のクラウド構成

  • 情報セキュリティ体制

  • 日々どんな運用をしているか

を、相手がイメージしやすい言葉で、A4数行〜1ページ程度にまとめるだけでも、印象は大きく変わります。

「何を書けばいいか分からない」という場合は、

  • ネットワーク構成図やクラウド構成図

  • 情報セキュリティ規程のポイント

  • 過去に取った対策や改善事例

などを、箇条書きでも良いので整理しておくと、毎回のチェックリスト回答がぐっと楽になります。

山崎行政書士事務所がお手伝いできること

山崎行政書士事務所では、クラウド法務・情報セキュリティを専門として、

  • 取引先から届いた情報セキュリティチェックリストの回答案作成・レビュー

  • 自社のクラウド利用実態・規程・契約内容を踏まえた「現実+改善方針」での回答の組み立て

  • 一度作っておけば毎回使い回せるセキュリティ説明資料(A4 1〜2枚)の作成支援

  • 「技術は強いのに、チェックリストで損をしている」会社向けの営業視点も踏まえた回答テンプレートづくり

などを行っています。

「チェックリストは毎回その場しのぎで書いていて、正直、これでいいのか不安」 「情報セキュリティのところで足を引っ張られて、技術勝負までたどり着けていない気がする」

そんなモヤモヤがあるようでしたら、一度、実際に使われたチェックリストと回答案を見せていただければ、

  • どこで損をしているのか

  • どこを直せば「落とされにくくなる」のか

を一緒に整理していきます。

静岡県内の中堅企業さまには、オンライン・訪問どちらでも対応可能です。

情報セキュリティチェックリストを、**「単なる面倒な宿題」から「受注を後押しする武器」**に変えていきましょう。

 
 
 

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