膝栗毛の再来
- 山崎行政書士事務所
- 2025年1月13日
- 読了時間: 6分

第一章:低迷する観光と静岡の不安
静岡県庁。今川義元知事が記者会見で頭を下げ、「県内の観光客数が昨年比で大幅に減少……」と重々しく報告する姿がニュースに流れる。巨大なリニア新幹線計画が進んでいる今、東海道本線沿線の宿場町や名所が「通過点」でしかなくなるかもしれないという危機感は、県民にも広がっていた。
一方、徳川家康(静岡市長)は、自ら運営する観光振興プロジェクトで打開を図るが、芳しい成果が得られない。住民からは「魅力的なプランがない」「どうせリニアに客を奪われるだけ」と厳しい声が上がる。こうして、静岡県と静岡市の観光業は低迷の一途をたどりつつあった。
第二章:十返舎一九、現る
そんなある日、静岡駅前の広場で奇妙な男が声を張り上げていた。「十返舎一九、ただいま参上! 新東海道中膝栗毛を始めますぞ!」歴史上の作家と同名を名乗るその男は、時代劇さながらの旅装束にスニーカーを合わせた風変わりな姿。「旅の魅力を取り戻す秘策がある」と豪語し、集まった人々を呆気にとらせる。
今川義元はこの噂を聞いて、「面白そうじゃないか!」と興味津々。そもそも奇抜なアイデアに目がない義元としては、一九の型破りな行動が観光復興のヒントになるかもしれないと考える。一方、徳川家康は「観光を盛り上げるのはいいが、具体的な効果や住民への影響は?」と疑い、距離を保つ。
第三章:新東海道中膝栗毛、始動
一九の型破りプラン
一九が掲げた計画は、「新東海道中膝栗毛」――かつての東海道をなぞり、宿場町や名所を巡りながら、その魅力をSNSや動画配信で発信するというもの。
島田では大井川の「平成の川越え体験」を復活させ、馬や人力車で渡るショーを企画。
掛川では城下町の風情を活かし、江戸時代の一日体験イベントを実施。
浜松や三島など各地の宿場町を訪れ、その土地のグルメや文化をユーモアたっぷりに紹介する。
これに賛同する若者や地元商工会の一部は「画期的だ」と沸き立つが、守旧派や観光業者の中には「何を勝手に騒いでるのか」と冷ややかな声も。さらに「本当に十返舎一九の末裔なのか?」と疑問を持つ人も少なくない。
今川義元の期待と家康の懐疑
義元は「あの一九って奴はいい。奇抜な発想で話題を呼ぶから、県の後押しでプロジェクトを大々的に宣伝しようじゃないか!」と発表。マスコミは「県が突拍子もない計画を支援?」と面白がる。家康は「住民の理解を得る前に県が押し進めるのは危険だ。自治体の承認や安全面、地元の意見がないがしろになる」と難色を示すが、義元は「細けぇことはあとで調整すりゃいい!」と一蹴。こうして、二人のリーダーシップがまたもや不協和音を出し始める。
第四章:一九のユーモラスな旅
型破りなイベントの連発
一九はSNSで「明日、島田で川越えショーやるぜ! 見に来い!」と告知し、地元の反応は半信半疑。それでも当日になれば好奇心旺盛な観光客やメディアが集まり、ユーモア溢れるイベントに拍手喝采。続いて掛川の城下町で「江戸時代コスプレ大行進」を企画。参加費無料で大勢が扮装し、町を練り歩く姿がネットで拡散され、「意外と面白い!」と好評を博す。この盛り上がりに義元は「やはり最高だ!」とご満悦。家康は苦い顔をしつつも「住民も盛り上がっているならいいのか……」と、半ば呆れながら見守る。
住民の声と不安
しかし、一九の奇策にはトラブルもつきまとう。急増する観光客に対応できず、地元インフラが混乱したり、イベント中の交通規制で住民生活に影響が出たり。「今はいいけど、このまま続くと困る」という声も起こる。家康は「やはり計画性が足りない。本当に地域に根付く観光振興になるのか?」と不安を募らせる。そんな家康に一九は「柔らかい頭で旅を楽しめば、自ずと道は見える」とだけ言って笑う。
第五幕:リニア新幹線の影と地域活性化
リニア計画に対抗?
東海道新幹線の停車駅が減少する恐れや、リニア開通後の観光客分散問題は、静岡県内の宿場町にとって深刻な課題。多くの観光客が「速さ」や「便利さ」を求め、通過するだけで終わってしまうリスクがある。義元は「だからこそ、インパクトのある企画が必要」と考え、一九の旅企画を全面支援する構え。家康は地域住民の懸念を丁寧に聞き取り、「持続可能な観光モデルが要る」と提案する。二人のギャップは相変わらずだが、一九の人気が上がるほど、「このまま放任していいのか?」と議論が激化する。
一九の本音
家康が改めて一九と話し合いを求めると、一九はふと真顔になり、「俺は速さや効率ばかりが優先される時代に、旅の楽しさを取り戻したい。黙っていたら東海道本線沿いの町はすべて“通過地点”になってしまう。だから、馬鹿騒ぎでもいいから人を呼びたいんだ」と語る。家康はその熱意に打たれ、「目的地ではなく旅そのものを楽しむ――かつての東海道中膝栗毛が伝えたメッセージを、現代に蘇らせたいんですね」と納得。そして「ただ、そのためにも地元ときちんと話し合わないと」と助言をする。
第六幕:合意形成と新しい旅モデル
住民参加型「新東海道中膝栗毛」拡張版
家康の呼びかけで、県・市・地元住民・観光業者が集まり、一九を交えた協議会が開かれる。最初は批判や懸念が飛び交うが、一九が「さあ、みんなで“旅人の目”になりましょう!」と促し、住民がアイデアを出し合う。
宿場町連合: 沿線の町が協力し、宿泊施設や特産品をネットワーク化。
コミュニティ交通と歩き旅: リニアに乗るだけでなく、あえて在来線や徒歩を選んで味わう旅を推奨。
デジタル×アナログ: SNSやAR技術で歴史と現代を融合させ、旅を盛り上げるが、同時に昔ながらの人情を大切にする。
義元は「なるほど、派手なイベントも入れつつ、住民が主役の観光か」と感心。家康も「無理のない形で継続できそうだ」と手応えを感じる。
リニアと在来線の共存
議論の末、「リニアで速く移動した後、在来線でゆっくり各地を回る“二段階旅”を提案しよう」というアイデアが浮上。リニアを使って遠方から静岡に来てもらい、そこから在来線と徒歩、バスなどで宿場町を巡るプランだ。一九は「まさに速さとゆるやかさを融合する妙案だ!」と大喜び。
第七幕:結末と新たなる旅へ
膝栗毛の新しい出発
「新東海道中膝栗毛」が正式に県と市、そして住民の協力で始動。SNSやテレビでも大きく取り上げられ、「膝栗毛が今、令和に蘇る!」と話題沸騰。各宿場町では“下車して歩く旅”を推奨し、無料ガイドや地元のおもてなしが充実。イベントや祭りも定期開催され、地域の人々がイキイキと観光客を迎える姿が見られるようになる。
一九の別れと未来
計画が軌道に乗り始めたある日、一九が家康に「俺は次なる旅に出るよ」と告げる。家康は「えっ、せっかく静岡が盛り上がってきたのに……」と驚くが、一九は「この県にはあなたたちがいる。もう俺の役目は終わりさ。旅はいつだって続くんだよ」と笑う。義元も「お前が去ったら、誰が盛り上げるんだ?」と不満そうだが、一九は「やり方は伝えた。あとは地元の人が自ら旅の魅力を発信できるさ」と余裕の表情で答える。
新しい観光のかたち
最後のシーン、義元と家康が在来線の改札口で一九を見送る。いつもの旅姿で、愛嬌たっぷりに手を振る一九の背中が小さくなっていく。そこに、満員の観光客が降り立ち、町を散策しに出かける様子が映し出される。ゆるやかでユーモラスな旅の風景が、静岡の町に新しい活気を与えている――。そして文字タイトルが出る。「膝栗毛の再来――旅の魅力は、人と街を繋ぐ喜び」。こうして静岡は、リニアに“通過”されるだけじゃない、“ゆったりと味わう旅”で輝きを取り戻したのだ。
(終)





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