甘美なる芸術――ベルギーチョコレートの世界
- 山崎行政書士事務所
- 2月3日
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ベルギーと聞けば、まず思い浮かぶのは、洗練されたチョコレートたち。ヨーロッパの中でもベルギーが生み出すチョコレートには、数百年の歴史と情熱が注ぎ込まれており、世界中のチョコレート愛好家を魅了し続けている。
1. グラン=プラスから始まる誘惑
首都ブリュッセルの中心部にあるグラン=プラス(世界遺産)の周辺を歩くと、煌びやかな建物と石畳の街路が、まるで絵本のような風景を生み出している。その路地に足を踏み入れれば、どこからともなくチョコレートを焙煎するような甘い香りが漂い、つい鼻をくすぐる。
“Chocolaterie” と書かれた看板を見つけたら、もうそこからは甘い誘惑への入り口だ。ガラス越しに眺めるだけでも、ショーケースに並ぶプラリネやトリュフ、ガナッシュが宝石のように輝き、じっとしていられなくなる。
2. ベルギーチョコレートの伝統
ベルギーチョコレートの起源は、アメリカ大陸からヨーロッパにもたらされたカカオを使い、17世紀ごろから徐々に普及していったとされる。特に19世紀末から20世紀初頭にかけて、ベルギーのショコラティエ(チョコ職人)たちは革新的な技法を取り入れ、豊かなカカオの風味を存分に引き出す製法を確立してきた。
ベルギーの職人たちは、 「テンパリング」 と呼ばれるカカオバターを均一に結晶化させる工程や、厳選した素材の組み合わせなどにこだわり抜き、独特のなめらかな舌ざわりや芳醇な香りを生み出すことに成功した。今ではベルギーチョコといえば、一つの芸術品とも言われるほどの評価を受けている。
3. プラリネの魔法
ベルギーチョコレートの代名詞とも言えるのが、 プラリネ(Praline) だ。チョコレートの薄い殻の中に、クリームやナッツ、リキュールなどを詰めたもので、口に入れると外側のチョコがパリッと割れ、中のフィリングがとろける至福の瞬間を味わえる。
例えば、ヘーゼルナッツのプラリネや、キャラメルクリーム入り、あるいはコーヒーやラム酒で香り付けされたものなど、バリエーションは数え切れないほど。一つひとつ小箱に詰められたプラリネを選んでいく作業は、まるで宝石を選ぶかのようにわくわくする。
4. 工房見学と職人の技
ブリュッセルやブルージュ、アントワープなどの都市では、時々 ショコラティエの工房見学 やワークショップを開いている店がある。そこで実際にカカオ豆の焙煎から、テンパリング、型入れ、フィリング作りなどの工程を間近で見ると、ベルギーチョコレートがいかに手間暇を惜しまないこだわりの結晶かを実感できる。
職人が巧みに spatula(ヘラ)を使い、溶かしたチョコレートを型に流し込んでいく様子は、見ているだけで美しいパフォーマンスのよう。やがて冷やし固められたチョコがパキッと型から外される瞬間には、ふわりとカカオの香りが空気を包む。
5. おすすめのテイスティング体験
チョコレート専門店では、 テイスティングセット として、小さなプラリネやトリュフを数種類盛り合わせにして提供してくれるところも多い。ビター、ミルク、ホワイトだけでなく、カカオ産地別の香りの違い、スパイスやフルーツの香りとの調和など、チョコレートの奥深さをじっくり味わえる。
口に入れると先に感じる甘みや、後から広がるビター感、そして舌の上に残る余韻――まるでワインテイスティングのように、チョコレートもまた奥行きのある風味を楽しめるのだ。
6. ホットチョコレートの温もり
寒い季節なら、ベルギーのホットチョコレートも見逃せない。砕いたチョコレートと温めたミルクを丁寧に混ぜ合わせ、生クリームをトッピングしたものが多く提供される。これを飲むと、体の芯から温まるだけでなく、チョコレート特有の優しい甘さと深みが胸にしみわたる。
ブリュッセルの石畳を歩き疲れて、少し冷えた体を休ませたいとき、カフェに入ってホットチョコレートを頼むと、ほっとする瞬間が訪れる。静かな店内でゆっくり味わうと、まるで時間がゆっくりと溶け出すかのようだ。
エピローグ
ベルギーチョコレート――その一粒には、職人たちの情熱と歴史が詰まっている。カカオの厳選、繊細な加工技術、そして何よりも“おいしいものを作りたい”という愛情が、ここまでの芸術性を育んできた。
手のひらでややとろけかけたプラリネを口に放り込むとき、舌の上で溶けていくチョコレートは単なるお菓子以上の感動をもたらしてくれる。ベルギーを訪れる機会があるなら、ぜひこの国が誇るチョコレートを、香り、舌ざわり、そして心で感じてみてほしい。
(了)





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