2024年以降の「管理ポータル必須MFA」で情シスが燃える前に
- 山崎行政書士事務所
- 4 時間前
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Microsoft Entra 条件付きアクセス×認証強度×パスキー×例外統制で“止めない移行”を設計する
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言(紛争対応・代理交渉等)を行うものではありません。個別事情に応じた契約判断等が必要な場合は、内容により弁護士等と連携して検討してください。
「MFAを入れてるから大丈夫」が、急に通用しなくなる理由
情シスが本当に怖いのは、セキュリティ強化そのものではなく、
“一部の管理者だけ”突然サインインできなくなる
IaC/自動化(Azure CLI/PowerShell)が特定操作だけ失敗し始める
例外アカウント(ベンダー・役員・共有端末)が野放図に増えて、監査で詰む
…こういう「止まる+説明できない」が同時に来ることです。
そして今まさに、Microsoft側で“管理ポータルにMFAを必須化する流れ”が段階的に進んでいます。
まず事実:Microsoftが示している「必須MFA」適用のスコープと時期
Microsoft Learn(日本語)では、Azure などの管理ポータルにおけるMFAの義務化について、段階的な適用(フェーズ)と対象アプリが整理されています。ポイントだけ抜き出すと次の通りです。
フェーズ1:管理ポータル系(2024年10月以降〜順次)
Azure portal / Microsoft Entra 管理センター / Intune 管理センターへのサインインで、CRUD(作成・更新・削除)操作に MFAが必要
Microsoft 365 管理センターは 2025年2月以降、サインインに対するMFA適用が順次開始
フェーズ2:CLI / PowerShell / IaC / API(2025年10月1日以降〜順次)
Azure CLI / Azure PowerShell / Azure モバイル アプリ / IaC ツール / REST API(コントロールプレーン)などで、CRUD操作に MFAが必要(読み取りは不要と整理)
すでにMFAやパスキー等を適用できているなら「ユーザー影響はなし」
Microsoftの整理では、既にMFAを適用している/パスワードレスやパスキー(FIDO2)等の強い方法でサインインしている場合、基本的にユーザー側の追加変更は不要とされています。
情シスが詰む“3つの典型パターン”
① ユーザーIDを「サービスアカウント」として使っている(自動化が止まる)
Microsoftは、ユーザー アカウントをサービス用途で使っているケースに触れ、ワークロードID(マネージドID/サービスプリンシパル等)へ移行することを推奨しています。また、ワークロードIDはこのMFA適用の影響を受けない一方、ユーザーIDで自動化しているならMFA必須化後に影響を受ける整理です。
② ROPC(ユーザー名+パスワード)前提の仕組みが残っている
Microsoftは、ROPC(リソース所有者パスワード資格情報)フローはMFAと互換性がないこと、MFA有効化後に例外が出ること、移行先としてMSALのガイダンスがあることを明記しています。情シス目線では「古い連携・古いスクリプト」が突然死するところです。
③ 条件付きアクセスの“例外”が恒久化して、統制が壊れる
条件付きアクセスは、作ること自体は進みやすい一方で、現場では必ず海外出張・共有端末・役員・ベンダー作業など「例外」が出ます。そして例外が増えた瞬間に、誰が承認して、どのリスクを取っているのかを説明できず、監査や親会社レビューで詰みます。
“止めない移行”の設計:5ステップで進める(上級SE向けに具体化)
ここからは、情シスが実務で使える形に落とします。
ステップ1:影響範囲の棚卸し(アカウント×経路×操作)
まず「誰が・どの経路で・何をしているか」を分解します。
管理ポータル経路:Azure portal / Entra 管理センター / Intune / M365 管理センター
自動化経路:Azure CLI / PowerShell / IaC / REST API
アカウント種別:
人(管理者・運用者)
ゲスト(B2B・委託先)
ユーザー型サービスアカウント(要注意)
ワークロードID(マネージドID/サービスプリンシパル等)
条件付きアクセスの計画ドキュメントでも、**ロックアウト防止の緊急アクセス(ブレークグラス)**や、サービスアカウント/サービスプリンシパルの扱いを事前に整理する重要性が書かれています。
ここでのゴールは「MFAを有効化する」ではなく、“MFA必須化の波が来た時に止まる経路”を先に特定することです。
ステップ2:条件付きアクセスは「ゼロトラストのポリシーエンジン」として設計する
Microsoftは、条件付きアクセスをさまざまなシグナルを統合してポリシーを適用するゼロトラストのポリシーエンジンとして説明しています。
実務で重要なのは、いきなり“強制ON”にしないことです。計画ドキュメントには、レポート専用モードで事前検証し、サインインログで確認する流れが示されています。
ステップ3:管理者は「フィッシング耐性MFA」を標準にする(認証強度)
“管理ポータル必須MFA”に合わせるだけなら、従来のMFAでも足りるケースはあります。ただ、2026年の情シスが現実に問われるのは「フィッシング耐性」まで含めた統制です。
Microsoftには、管理者ロールにフィッシングに強いMFAを要求する条件付きアクセスポリシー例があり、認証強度(Authentication strength)で 「フィッシング耐性 MFA 強度」を要求する手順が明示されています。
認証強度は、条件付きアクセスの“許可”制御として、利用できる認証方法の組み合わせを指定する考え方です。組み込みの強度として「多要素認証」「パスワードレスMFA」「フィッシング耐性MFA」がある、という整理も公式にあります。
ステップ4:パスキー(FIDO2)を“段階導入”して、最後は強制まで持っていく
パスキーは「便利」だけでなく、情シスにとっては支援工数(パスワードリセット)とフィッシング耐性の両方に効きます。
Microsoft Learn(日本語)には、組織で パスキー(FIDO2)認証方法を有効化し、対象を全ユーザーまたは特定グループでスコープできる手順が整理されています。さらに、必要ならAAGUID制限(特定モデル/プロバイダのみ許可)なども扱えます。
また、Authenticatorのパスキーについても、管理センターで有効化し、セルフサービス登録の可否などの設定ポイントが書かれています。
推奨の現場運用(例) IT部門+特権ユーザーから開始(グループでスコープ) 認証強度で「管理者ロールはフィッシング耐性」を要求 問い合わせが落ちたら対象部門を拡張 最終的に“強い認証が必要な操作”を増やす
ステップ5:ブレークグラス(緊急アクセス)を「設計・保管・監視」までセットで持つ
MFA/条件付きアクセスの運用で最悪なのは、全管理者がロックアウトすることです。計画ドキュメントでも、ロックアウト回避のための緊急アクセス(ブレークグラス)が言及されています。
さらに、Microsoftは緊急アクセスアカウントについて、
通常の管理者と同じ認証方法に依存しない(例:通常はAuthenticatorなら、緊急はFIDO2など)
資格情報を安全に保管する
サインインログ・監査ログを監視し、利用時に通知する
PIMのロール割当の注意点(緊急アクセスは常時有効にすべき等)
といった運用の要点を具体的に示しています。
また必須MFAの文脈でも、緊急アクセスアカウントがMFA要件を満たすためにパスキー(FIDO2)や証明書ベースの認証を推奨する旨が書かれています。
そして一番揉めるのが「例外」と「委託先」:技術だけでなく“主語”を固定する
条件付きアクセスの成否は「堅いポリシー」ではなく、例外をどう統制するかで決まる――これは現場相談のあるあるとして、事務所ブログでも強調されています。
また、委託先が特権アクセスを持つ場合は、事故が起きた瞬間に「技術復旧」より先に統制不備として信用事故化しやすい領域です。そのため、PIMでJIT(必要時だけActivate)に寄せる/申請→承認→実施→報告→証跡のフローを契約に接続する、といった整理が提示されています。
行政書士として支援できる“成果物化”のポイント(非弁を避けた実務支援)
山崎行政書士事務所のクラウド法務では、Azure/M365/Entra IDを前提に、ログ・権限・運用証跡を、法務・監査・国際対応まで同じ地図で整理することを掲げています。
MFA必須化・条件付きアクセス強化の局面で、情シスが本当に欲しいのは「設定手順書」よりも、監査・取引先・委託先調整で使い回せる “説明の型”です。たとえば:
例外台帳(Exception Register):誰が、いつまで、何を、どのリスクで例外にしたか
緊急アクセス運用規程:保管場所・利用条件・利用後の報告・監視方法
特権アクセス運用(PIM/JIT)フロー:申請→承認→作業→証跡提出の主語(RACI)
委託先の特権アクセス条項の骨子:作業範囲、ログ提出、再委託、緊急時、通知期限の整合
監査・取引先向け1枚説明:「体制・証跡・手順」を先に作る
※訴訟対応・弁護士法上の業務に該当し得る領域は、内容に応じて弁護士と連携して進める旨も明記しています。
情シス向け:今日からのチェックリスト(10分で自己点検)
□ 管理ポータル(Azure/Entra/Intune/M365)に入る全管理者が、MFA要件を満たしている
□ Azure CLI / PowerShell / IaC のCRUD操作で使っている認証が、ユーザーID依存になっていない(ワークロードIDへ移行計画がある)
□ ROPC(ユーザー名+パスワード)依存の仕組みが残っていない/棚卸しできている
□ 条件付きアクセスはレポート専用で事前検証し、サインインログで確認する運用になっている
□ 管理者は認証強度で「フィッシング耐性」を要求する方針(例外は台帳化)
□ ブレークグラス(緊急アクセス)が、別方式の強い認証+安全保管+監視まで設計されている
□ 例外運用(海外・共有端末・役員・ベンダー)が“恒久化”していない(期限・解除条件・承認者が説明できる)
□ 委託先の特権アクセスは、PIM/JIT・作業フロー・証跡提出まで含めて“主語が固定”されている
まとめ:MFA必須化は「セキュリティ案件」ではなく「運用と説明責任の案件」
必須MFAの波は、単に“認証を強くする”話ではありません。**止めないための移行設計(自動化・例外・緊急)**と、**説明できるための成果物(台帳・フロー・責任分界)**がセットです。
山崎行政書士事務所では、Azure/M365/Entra ID を前提に「ログ・権限・監査に耐える形へ」整理し、オンライン相談やNDA対応も可能です(法人向け)。





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