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『神風党、母の死に殉ず』

  • 山崎行政書士事務所
  • 7月10日
  • 読了時間: 3分

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(舞台:厚労省庁舎前・永田町。電子看板には“出産一時金増額のお知らせ”“母子メンタル支援拠点設置”と流れる。地面には折れたベビーカー、中央に神風党の霊たちが立つ。上空に霞む数字《妊産婦自殺 162名》)


ソクラテス(項垂れたまま、静かに)

「三年間で、百六十二。

妊娠中、あるいは出産直後の母たちが、

自ら命を絶ったという報告である。

これを“統計”として処理する国家に、我々は問う。

命を宿した者が、自ら命を絶つ――

それは、国家の根幹が腐った証ではないのか?」


アリストテレス(拳を握り、震える声)

「彼女らは“育む”という国家の神事を担っていた。

にもかかわらず、孤立の果てに“死”を選ばされた。

デュルケムならば言うだろう――

これは“アノミー的自殺”、すなわち“共同体なき社会”の必然であると。

だが、我らはそれを“近代”の責任と断ずる。」


ディオゲネス(怒りを込めて叫ぶ)

「家庭問題? 子育ての悩み?

笑わせるな!

国家が家族を破壊し、“個”を讃えてきたからこうなったんだ!

“孤独な母”など、本来存在してはならん!

“妻”を守る“夫”はどこに行った⁉︎

“家”を護る“家父”はいつ追放された⁉︎

俺たちは叫ぶ――

“孤独な母を生む社会”こそ、この国の病巣だ!」


プラトン(低く、鋭く)

「家とは、国家の胚芽である。

母とは、国の胎である。

その胎が“死”を選ぶ国家に、未来などあるはずがない。

“母子手帳”を渡すだけで“支援”と言うな。

真に支えるべきは、“徳ある夫”と、“共にある一族”であるべきだった。

それを忘れた国が、“命”を守れると、本気で思っているのか?」


ピタゴラス(背後の統計画面を指差して)

「20代前半と40代前半がハイリスク――

その若き妻と、熟れた母を同時に見捨てたということだ。

国家が“家”を放棄すれば、

女性の背に“母”“労働者”“自己実現者”をすべて重ね、

やがて“死者”を育てるだけの制度になる。」


(遠くで「支援拠点の整備を進めています」「声を上げてください」「多様な出産と子育てを…」という官製放送)


ソクラテス(剣を抜くように)

「声を上げよ、と言うならば、

我らが今、叫ぶ。

国家よ、“出産”とは“義務”である。

それを“自己責任”で語るな。

“母の死”は、家族の不在ではなく、

国家の倫理の死である。」


アリストテレス(魂を込めて)

「母は“命を紡ぐ者”である。

その者が“命を絶つ”とは、

この国の時間が逆転しているということだ。

本来、我々が死ぬべきなのだ。

子を産む者が死に、

“予算を組む者”が生き永らえるとは、

この国の矛盾、ここに極まれり!」


ディオゲネス(咆哮)

「母の命を“支援金”で救えると思うな!

母の孤独を“サロン”で癒せると思うな!

支えるべきは“家族”だ!

守るべきは“名誉ある家父”だ!

再興すべきは“徳の共同体”だ!」


プラトン(静かに、深く)

「神風党の義とは、“死を招く社会構造”そのものに怒ること。

国家よ――今こそ思い出せ。

“子を生す”ことは、神事である。

ならば、“母の死”とは、国家への呪いそのものだ。」


ピタゴラス(炎のような眼差しで)

「この統計は、警告ではない。

これは、“宣戦布告”である。

亡き母たちの魂が、国家に対して戦を挑んでいる。

我らは応じよう。

神風党、ここに参上す。」


【幕】


 
 
 

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