アンケートに込められた真意〜エレガンスストア・評価という名のラブレター〜

プロローグ　「店長…来ました」

ある平日の午後。静岡駅前のエレガンスストアに、郵便で届いた一通の封筒。それは、常連中の常連、佐伯冴子（さえき さえこ）様からのアンケートだった。

宮本店長「あの佐伯様から…アンケート…？ これは……ヤバい」

杉山さん、在庫棚から飛び出してくる。

杉山「あの“辛口女王”の佐伯様！？ 商品よりスタッフの服装にダメ出ししたあの…？」

三浦「“笑顔が１ミリ足りない”って書かれたこともありましたよね…？」

清水「今回はレターパックで来てます。圧を感じます」

店内に流れる優雅なBGMも、一瞬ピッチが下がったように感じる。

第一章　衝撃の評価全文開示

スタッフルームに緊張が走る中、宮本店長が封筒を開け、読み上げ始める。

宮本店長「“まず、全体的にスタッフの個性が暴走している印象です”……」

杉山さん：「暴走…⁉」

宮本店長「“三浦さん：相変わらずの天然で、接客中に『このネックレス、蟹座にモテます』という意味不明なアドバイスを受けました”」

三浦さん：「……えっ！？ 蟹座って普通にモテ要素ありますよね！？」

清水さんがそっと頷きながら、「統計上、そういうデータはないです」とつぶやく。

宮本店長「“杉山さん：知識量と情熱は評価しますが、語尾がなぜか上から目線に感じる時があります”」

杉山さん：「うわっ、無意識のマウント…！？ 熱意の副作用か…？」

宮本店長「“清水さん：在庫管理や説明は完璧。ただし、たまに人間味がゼロになります”」

清水さん：「……事実ですね」

第二章　スタッフ、動揺と分析の狭間で

一同、アンケート内容の厳しさに言葉を失うが、次第に“佐伯様なりの愛”が込められていることに気づき始める。

清水「これは“改善点の指摘”というより、“あなたたちはもっとできる”という信頼の裏返しかもしれません」

杉山「え、めっちゃポジティブじゃない？ 清水さんがそんなこと言うなんて珍しい…」

三浦「私なんて、“意味不明だけど面白い”って書かれてたってことは……ファンタジー担当でいいんですよね？」

宮本店長はアンケートの最後に目を通し、微笑んだ。

宮本店長「“皆さんのチームワークと誠実さは変わらず素晴らしい。だからこそ、もっと上を目指してほしい”――だってさ」

全員：「佐伯様ァァァ！！」

第三章　“改善大作戦”会議、発動

数日後、スタッフはそれぞれの“改善アクション”を自主的に開始。

●三浦さん：「意味不明すぎない天然トーク術」を身につけるべく、“ファンタジー語彙帳”を清水さんと一緒に作成。例：「恋愛運UP」→「今日の自分がちょっと好きになる香り」。

●杉山さん：語尾チェック表を作成。「〜ですよね？」と「〜でしょ」は禁止ワードに。語尾を「〜と思います」で統一し、優しさUP作戦中。

●清水さん：接客中に1分に1回、笑顔を出す“ほほえみタイマー”を装着。杉山さんに「ロボ清水から人間清水への進化」と称賛される。

クライマックス　再び佐伯様、降臨

そして数週間後。佐伯様が来店。アンケート以降、初のご来店にスタッフ一同ド緊張。

三浦「佐伯様～！ 今日は“双子座さんにおすすめの、新作スカーフ”をご紹介します♡ …あっ、分かりやすく言うと“軽やかさ重視”です！」

佐伯様：「ふふ……言い方が、少し改善されましたね」

杉山「ご説明、丁寧さと熱量のバランスを意識してお届けします（語尾やわらかめ）」

佐伯様：「随分と耳に心地良くなったわ」

清水「当店の在庫状況はリアルタイムでご確認いただけます。なお、本日は自動で微笑んでおります」

佐伯様：「……清水さんが笑ってる…⁉」

最後、スカーフをご購入された佐伯様は、お会計後にさらりとこう言った。

佐伯様「皆さん、努力されたのね。…やはりこの店、好きですわ。次のアンケート、期待してて」

宮本店長：「（やっぱり書くんですね…！）」

エピローグ　評価は、愛情である

閉店後、店内に響く拍手。アンケートは、スタッフを傷つけるものではなく、「見てくれている」という証だった。

杉山「辛口でも、評価があるってありがたいんだなって思いました」清水「“信頼ゆえの毒”ってやつですね」三浦「むしろ“スパイス”ですよね〜！ 私のトークにもかけてみたいかも」

店長は言う。

宮本店長「どんなアンケートも、私たちを育ててくれる“声”だよ。これからも、真摯に、でも笑顔で受け止めよう」

エレガンスストアの成長は、“厳しさ”と“笑い”のハーモニーで、今日もゆっくり続いていく――。

（終）