タイムスリップ夫の逆襲!? 〜坂口あやめの悲喜こもごも3:まさかの時空迷子大集合!?〜
- 山崎行政書士事務所
- 2025年1月25日
- 読了時間: 11分

1.平和な日常…のはずが
老舗出版社「米星社」の文芸編集者・坂口あやめ。 ワーカホリックと言われようが夜な夜なゲラ(校正刷り)と格闘しようが、最近はちょっと人生にゆとりが生まれていた。なにしろ未来から現れた中年トレンチコート夫・楓井裕作(未来Ver.)や、謎の筋肉配達員兼・離婚カウンセラー、さらには未来の娘・心音まで巻き込んだドタバタが一旦落ち着いたのだから。
現在の30歳・裕作との交際は順調。家にカビの生えたネギを放置しないようマメに冷蔵庫を整理し、Wi-Fiパスワードも「U_&_A-forever改」とかいう甘ったるいものに変えたけれど、ま、誰に迷惑かけるわけでもない。 「これからは、地に足のついた幸せを積み重ねていくんだ」——あやめはそう誓っていた。
しかし、その平穏はあっという間にぶち壊されることになる。 とある休日の朝、のんびりマンガを読んでいたあやめの部屋に、突然「グギャアアアアア!」という絶叫が響き渡ったからだ。
「あ、あれ? 今の声、どこから……?」
嫌な予感がしながらも恐る恐るリビングに行くと、トレンチコート姿——いや、今度は見たこともないキラキラスパンコールの派手なコートをまとった中年女性が倒れ込んでいたのだ。 彼女は背中に大きなリュックサックを背負い、ゴツいブーツを履いており、一目では人類なのか宇宙人なのか判断がつかないほどの異様なオーラを放っている。
「ひゃああああっ!! あ、あんた誰! なんで私の部屋に!?」
悲鳴を上げるあやめを見て、その女性はハッと我に返った様子。ものすごい勢いで立ち上がり、まるでオタ芸のような動きで右腕をブンブン振り回しながら叫んだ。
「やべえ、やっちまった! 時間座標ズレてんじゃん! ……あ、あんた、坂口あやめ、だよね?」
あやめは目をパチクリさせつつ、深呼吸。「まずは落ち着こう、そして通報しよう」と思った矢先、女性が意味不明な宣言をしてくる。
「初めまして! わたしは“楓井 裕子(かえでい ゆうこ)”! あなたの未来の……姑です!」
……か、姑ぁぁぁぁ!?
2.未来の姑、降臨
姑を名乗る女性・裕子(しかも派手コート着用)は、あやめがスマホを握る前にズイズイと距離を詰めてきた。どアップであやめを凝視する目には、不穏な熱気が宿っている。
「どうしても、昔のあやめさんに会いたくてね〜。私、未来じゃ“超霊感系SNSインフルエンサー”してるんだけど、そのパワーでタイムスリップを試みたら、場所がズレちゃってさー。あははー!」
あやめの脳内で“???”が渦巻く。 第一、未来の姑ということは、30歳・裕作のお母さんということ? しかし以前、未来の娘・心音が来たときには姑なんてまったく登場しなかったのに……。
「いやー、まぁいろいろあって、私、10年後には半分家出状態で海外バックパッカーやってたのよ。そんでこのたび、孫の心音ちゃんから相談を受けてね。『パパとママがケンカばかりで離婚危機なんだってば』って。だからもう一肌脱いでやろうかと思ったワケ〜!」
あやめはまたしても頭を抱える。「離婚危機、そんなに多方面に知れ渡ってんの!? しかも家出中の姑まで動員されるレベル?!」 そっとデジャヴを感じるが、問いただす間もなく、裕子は家の中をくまなくチェックし始める。
「ふーん、あやめさん、このソファとか、ちゃんと将来まで使えるようにメンテしてんの? クッションへたれてない? あとキッチン……ああ、そこに放置されてるのって……ネギぃ? カビは生えてない? チェックチェック〜!」
急に始まる姑チェックに、あやめは叫んだ。
「う、うるさいわね! 人のプライベートにズケズケ踏み込みすぎ! ひとまずそこをどいてください!」
しかし、裕子は止まらない。まるで暴走機関車だ。
3.怒涛の姑パワーに翻弄される日々
こうして“未来の姑”という謎の存在は、あやめ宅に居座ってしまう。 ちょうど数日間、あやめが在宅勤務OKをもらえたタイミングだったため、今ここに「嫁 vs 未来姑」の濃密な時間が生まれてしまったのだ。
朝5時:勝手に起床して家中の掃除。クイックルワイパーを武器に「あやめさん、ホコリ発見!」と指摘。
昼:インスタ(?)ライブ配信しながら、「あやめのランチはバランス悪い」と世界に発信。
夕方:謎のスピリチュアルセッションタイム。「部屋の隅を聖なる塩で浄化しましょう」「そこにあるマンガ本の電磁波があなたの愛を蝕むわ!」などと言い始める。
あやめが「もう本気で出て行ってほしい!」と思うのも当然。しかし、夕方にはさらに追い打ちがかかった。カチャリと玄関が開き、「ただいま〜あやめ、今日も在宅?」と入ってきたのは現在の30歳・裕作である。
「な、なにこれ!? 母さん? え、なんでここにいるの!? つか、母さんそんな派手コートいつ買ったの!?」
裕作は母親の出現に腰が抜けるほど驚く。そりゃそうだ。彼の実の母は未来ではあちこち旅しているらしいが、現在の母親はまだそこまで年を取っていないはず。今目の前にいるのは中年を通り越した“さらに未来バージョン”の母なのだ。 だが、裕子は我が息子に対してもノータイムでダメ出しを始める。
「ちょっと裕作! 未来じゃあなた、あやめさんとケンカして家出までしたって聞いてるわよ! そういう情けないことする前に母さんに相談しなさいな!」
「いやいやいや! まだそんな結婚して間もないし、家出とかしてないし……」
あやめは若干ホッとした。「さすがに未来でも今の裕作はそこまでダメダメじゃないはず……」と。 ところが裕子は険しい顔でたたみかける。
「でも、あやめさんを大事にしてないのは事実らしいのよ。誕生日を忘れて二日遅れで花買ったとか、Wi-Fiパスワードを勝手に変えたとか、なんかもういろいろ積み重なって修羅場だったって!」
「うわぁ、なんかリアル……」と裕作はガクッとうなだれる。あやめも「そうだったのか……」と胸を突かれたような気持ちに。 確かに地味にイラッとするエピソードだ。細かい不満の積み重ねが**“離婚危機”**につながってしまう——今まで散々聞かされてきた筋書きが、また具体性を増してのしかかってくる。
4.まさかの新たな「未来人」到着
その夜。あやめ、裕作、そして勝手に風呂と夕飯まで済ませた裕子の3人は、リビングに集められた。 「ちょっとごめんなさい。私はいったいどうしたら……」と、あやめは頭を抱える。今度は未来の姑に振り回されて、心が休まらない。 そのとき、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
「え……? こんな時間に誰?」
ドキドキしながらドアを開けると、見覚えのある怪しい影が。なんと、トレンチコートの中年男・未来裕作本人が再び登場したではないか!
「や、やあ……あやめ。なんだかまた厄介なことになってるみたいだね……」
さらにその後ろから筋肉配達員・カリブもひょっこり顔を出す。もうダメ押しもいいところだ。
「いや〜、また未来が大混乱してるんすよ。今度は“バックパッカー姑”が過去へ行ったって大騒ぎでさぁ。あんまり無茶すると時空警察に捕まるっすよ?」
(……時空警察って何よ?)とツッコミたいが、あやめはもう諦め気味。リビングにやってきた未来裕作と筋肉カリブが、未来姑・裕子とまさかのご対面となり、全員で壮絶な家族会議が始まったのだった。
5.姑 vs 未来夫 vs 現在夫 vs 嫁、四つ巴のカオス会議
「ちょっと母さん! 僕、君が過去に来るなんて聞いてないよ!」「だって孫のためにがんばろうと思ったのよ! あんたこそ、あやめさんと将来ちゃんと話し合ったの?」「まだ結婚したばかりで、そんな10年後のことまで……っていうか僕は“今”が精一杯なんだよ!」
もう、親子げんかが始まっている。未来裕作はというと、自分自身の母親なので「あ、どうも母さん……」と落ち着かない。あやめも訳の分からないまま、どんどん巻き込まれていく。 カリブは腕組みしながら深刻そうにうなずき、「ここは俺の離婚カウンセラーとしての腕の見せ所か……いや、既に離婚してないけど!」と自分ツッコミ。
あやめは思い切って声を張り上げた。
「ちょっと、いい加減にして! 姑さんが言ってる“未来の離婚危機”はわかったわ。でも私たちはまだそこに至ってないし、どうなるかは私たち自身が決めることじゃないの?」
ピタリと静まる一同。 勢いに乗ってあやめは続ける。
「姑さんがやってきた理由も分かりますよ。娘の心配や息子の情けなさ(?)を見ていられなかったんでしょう。でも、未来って結局は“今”の積み重ねでしょう? 勝手に介入されて、私たちの生活を荒らされるのは迷惑です! ……って言っても、もう来ちゃったんだから仕方ないけど……」
未来裕作と現在裕作は顔を見合わせる。「まあ、あやめの言うとおりだよな……」と同時にうなずく。 すると、散々暴れ散らかした裕子も思わず黙り込んだ。しばし静寂が続き——
「……そ、そうよね。私もあまりに心配しすぎたかもしれない。でも、10年後のあんたたち、本当にケンカばっかりなんだもの! そりゃ口出しもしたくなるわよ!」
年長者らしからぬ拗ね声で訴える未来姑・裕子。すると、横で聞いていた未来裕作は苦笑いしながら言った。
「確かに離婚危機までいったけど……ほら、最近はちょっと和解してきたんだよ? 母さんが旅に出ている間に、僕らも少しずつ歩み寄り始めてたのさ。だからこそ、あんまり過去に干渉されると厄介なんだ」
結局、これまた毎度おなじみのパターンで「未来から来た関係者」が自身で状況をこじらせているらしい。 あやめは呆れながらも、「……じゃあもう帰っていただけます?」と裕子に向かって尋ねる。
「うーん、そうは言っても、帰り方がわかんないのよね〜」
ああ、出た——! 自由奔放な姑、過去に来たはいいが帰り方はわからない。場がどっと疲れに包まれる。
6.親孝行(?)大作戦
結局、しばらくの間、未来姑・裕子はあやめたちと過ごすことになった。 しかしこのまま居座られては、あやめの精神も生活も破綻してしまう。それを危惧したのが、現在の裕作だった。
「……俺、考えたんだけど、母さん(未来Ver.)が落ち着いて帰るきっかけを作るには、**“今の自分がちゃんと母に孝行している”**と感じてもらうのがいいかもしれない。過去の息子が元気にやってるなら、わざわざ過去に介入しなくても安心できるはずだろ?」
なるほど。あやめも「確かに、それなら少しは安心してくれるかも」と賛成する。一方で未来裕作は「なんだか複雑だけど……まぁ何もしないよりマシか」と納得。 というわけで急遽実行されたのが、**「親孝行ドライブツアー」**である。 場所は近場ではあるが、温泉と名物うなぎが有名な観光地。そこに姑を連れ出し、精一杯もてなそうという作戦だ。
7.笑顔と涙のフィナーレ(たぶん)
ドライブ当日。 あやめ&現在裕作、そして未来姑・裕子、さらにちゃっかり便乗してきた未来裕作と筋肉カリブ。五人で乗れるワンボックスカーを借りて出発すると、車内はさながらサークルの合宿状態。 道中は「カーステレオがうるさい」「未来の曲ってこんな感じなの?」とかいちいち口うるさい裕子だったが、温泉に浸かり、おいしいうなぎを食べて大満足。夜には全員で花火を見て、「あら〜綺麗ね……」と珍しくしおらしい笑みを浮かべていた。
その時、未来裕作がポケットから取り出したのは、タイムマシン端末らしき小さな装置。どうやら再び時空を行き来できるよう、カリブが裏で整備していたらしい。
「母さん、そろそろ未来に戻ろうよ。今のあやめと僕(30歳Ver.)がこうして仲良くしてるのを見たんだ。少しは安心できたろ? 僕もあやめも、きっと未来を変えていけるからさ」
裕子は湯上がりでほんのり赤い顔を横に振ってみせながら、
「ふふっ……まぁ、そうねぇ。過去でも未来でも、息子は息子、嫁は嫁だし、私がガミガミ言っても仕方ないわよねぇ。やっぱり夫婦は本人たちが協力してなんぼ……。ああ、でもうなぎは美味しかったわ。あやめさん、今度レシピ教えてね」
未来の姑なのに「今度」って、どう考えても時空を超えたご近所感覚だが……まぁそこはツッコまないでおこう。
あっさりモードの裕子に、あやめはなんだか胸がいっぱいになった。未来では、この人も自分の“お義母さん”になる(or なっている)存在なのだ。派手で自由奔放だけど、どこか憎めない雰囲気。 裕子が端末を起動すると、スパンコールコートが妙に光を放ち始める。まるでクラブのミラーボールだ。
「じゃあ、あんたたち、またね! 次に会う時は可愛い孫でも抱かせてちょうだい。スピリチュアル的に良い波動が出るよう、ちゃんと家は清めておくのよー!」
いつもの調子で手を振りながら、姑は未来裕作と一緒に光の中へ消えていった。カリブも「おれも帰るっす」と礼儀正しく敬礼して、後を追う。 人騒がせな大集合だったが、その場に残ったあやめと現在裕作は——なぜだか、心にぽっかり穴が空いたような、不思議な寂しさを覚えた。
「でもさ、なんか、少し嬉しかったよね。母さん(未来Ver.)が、俺たちのこと心配してくれてたんだなって」「そうね。ケンカばかりの未来かもしれないけど、何だかんだで家族が一つに戻れる可能性があるのかもって思ったわ。……もう何人未来から来るんだって感じだけど!」
二人は顔を見合わせ、思わず吹き出す。 夜空にはまだ、花火の残り香がかすかに漂っていた。
エピローグ:本当の「これから」
あやめと裕作(現在Ver.)は、帰りの車の中でしみじみと未来を思い描く。10年後——本当に大ケンカをしてしまうのだろうか、それとも回避できるのだろうか。 でも、未来がどうあれ、“今”はいくらでも変えられる。姑が言うとおり、夫婦が協力しあって、積み重ねていけばいい。タイムスリップなんかしなくても、きっと二人なら乗り越えられるはず——。
「家に帰ったら、あのスパンコールコートが落ちてたりしてね」 「うわ、そのフラグやめてよ!」 楽しげに言い合いながら、あやめたちの車はゆっくりと夜道を走っていく。 こうして、またしても時空を越えた騒動はひと段落を迎えたのだった。
もっとも、数日後にクローゼットの奥から突然、スパンコールの切れ端が見つかったという噂はあるけれど……。とりあえずあやめはあまり気にせず、今夜もゲラ校正に励んでいる。 いつか遠い未来、本物の家族になっている自分たちを思いながら——。
(了)





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