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最後の海峡

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 7分

プロローグ:波濤の予兆

二〇XX年、初夏。中国が台湾近海から東シナ海一帯へ海軍を大規模展開しているという報が国際社会を緊張させていた。日本は尖閣諸島、沖縄周辺海域への圧力を日に日に感じるようになり、海上自衛隊の艦艇を急派。イージス艦「たかつき」もその一隻として出撃の準備を整え、艦長の高橋 一政(たかはし かずまさ)は静かに覚悟を固めていた。「海峡を封鎖させるわけにはいかない。ここが、いま世界がもっとも注目する最前線だ。」――彼は艦橋でそうつぶやく。

第一章:国際連携と緊張の海

たかつきは佐世保を出港し、東シナ海への航路を進む。 そこでは既に米海軍の駆逐艦、韓国海軍の駆逐艦と合流する計画がある。合流地点には広大な海域に散在する中国軍艦隊の偵察データが届いていた。 高橋艦長は作戦室で米海軍士官、韓国海軍士官とオンライン会議を行う。

  • 米海軍: 「我々は空母打撃群を後方支援に回すが、直接介入には政治的リスクがある。」

  • 韓国海軍: 「韓国海峡付近にも中国艦艇の動きが活発だ。もしそちらの海峡が封鎖されれば国際物流が途絶し、経済打撃は甚大だ。」


    高橋は眉をひそめる。「つまり我々日本が盾を張って、最前線を守る必要があるってことですか…」


    米側は「一応支援する。だが当面、中国との直接衝突は回避したい」と慎重な表現。 高橋は心中で、**“単独行動するしかないのか……”**と苦く思う。

第二章:イージス艦の集結

やがてたかつきは米駆逐艦「ウィリアムズ」、韓国駆逐艦「インチョン」と合流。 互いに艦長同士が洋上会議を開き、情報を共有。中国海軍は最新鋭艦「海龍」(仮称)を主力に、東シナ海の一部海峡を封鎖しようとしている。 大量の対艦ミサイルを搭載し、航空機や潜水艦も支援に回っているとの情報。高橋は「協力して国際水路を守り抜こう。しかし、敵が仕掛けてくるならば……」と視線を鋭くさせる。 米・韓両艦長もうなずく。 ただし政治的に複雑であり、指揮系統をどうするかも難しい。最終的に「各艦が独立指揮のもと連携する」という苦肉の策が取られ、細かい戦術面で齟齬が生まれる懸念もあるが、今は最善策とせざるを得ない。

第三章:海峡封鎖への布石

数日後、海上自衛隊の哨戒機P-3Cが、中国海軍艦隊が特定海峡を事実上封鎖しようと出動しているのを発見。 漁船や商船が航行を妨害され、国際法に反するとして議論が巻き起こる。国際世論は分裂。 一部は中国を非難し、一部は「紛争を避けるため、迂回せよ」と消極姿勢。 だが日本は見過ごせない。「ここを許せば、南西諸島まで封鎖される可能性がある」と考える。高橋艦長はオペレーターからの報告を受ける。「敵艦の編成は大型駆逐艦2隻、フリゲート3隻、補給艦1隻。空母は後方待機だが、艦載機の射程に入る恐れがある…」深い溜息をつく高橋。「イージス艦として防空能力は高いが、敵の数が多い。米韓との連携が必須だな…」

第四章:国際作戦会議と軋轢

たかつき艦橋で米・韓両艦と衛星通信を介した作戦会議。

  • 米艦長「我々は空母からの航空支援があるが、中国を直接叩くとエスカレーションリスクが高い。指揮権をどうしましょう?」

  • 韓国艦長「我々も南北の緊張を抱えており、本格参戦には慎重だが、海峡封鎖は容認できない。」


    高橋は思案。「3隻が一斉に当たれば多勢に無勢。とはいえ、分散すれば各個撃破される。…総合的には、共同で突入し、敵主力艦への威嚇射撃か…」


    ところが米艦長が「米政府は挑発を避けろと言っている」と渋る。 韓国艦長も「うちも政治指示が曖昧…」と困惑。


    しかし最後は**「国際航行の自由を守るために、最小限で動こう」**と合意するが、その中身は曖昧。 指揮系統の不統一が不安要素となる。

第五章:激突—海峡の火線

(戦闘シーン)

  • 状況: 中国艦隊が海峡に陣取り、実質的な封鎖を実施。 国際商船が通ろうとするも追い返され、何隻か拘束されたという。

  • たかつき、米駆逐艦、韓国駆逐艦が海峡へ進軍。 互いに通信を維持しつつ、「中国艦隊への接近は慎重に」と互いに呼びかけ合う。

  • 交渉: まず通信を介して「海峡の国際航行を保障しろ」と警告するが、中国側は「ここはわが海域。直ちに退去せよ」と強硬。 交渉決裂が濃厚。

  • 開戦の火蓋: 1) 敵駆逐艦がこちらにレーダー波を照射し、対艦ミサイル準備の兆候。 2) たかつき側が迎撃用のSM-2ミサイルをアクティブにし、CIWSも起動。

    • 敵が先にミサイルを放ち、一斉に5発が海面をかすめながら接近。 たかつきが対空ミサイルを発射し、米艦・韓国艦ともに迎撃を行う。 空中で激しい閃光が連発し、何発かは破壊されるが、1発が韓国艦に命中し、甲板に火柱が上がる。

    • たかつきは正面回頭しながら、**VLS(垂直発射装置)**から対艦ミサイルを逆撃。中距離の敵駆逐艦を狙い、発射されたミサイルが海面を低空で走る。

    • 中国艦はチャフやCIWSで防御するも、1発が駆逐艦側面に命中し、爆炎が広がる。 「敵艦の速度が落ちた!」オペレーターが叫ぶが、なお敵艦は砲撃を続ける。

  • 激戦: 周囲の海面が爆発の水柱で乱れ、火と煙が混じる。 一方で米駆逐艦も空母からの航空支援を呼びかけるが、まだ時間がかかる。 韓国艦はダメージ大きく後退を始める。

    • たかつきは敵艦をさらに叩こうと近づくが、第二波のミサイルが上空から襲来。 CIWSで迎撃するも、1発が艦尾をかすめて爆発。 甲板に穴が開き、火災が発生。

第六章:国際連携の綻びと艦長の覚悟

米艦長が通信で「我々も損傷。空母支援まで時間が必要。一旦下がるか?」と言い出す。 韓国艦も被弾で戦闘力が大きく低下。高橋は「引いてしまえば、中国の封鎖は完成し、国際航行が止まる。 我々はどうにか踏みとどまらなければ…」と苦渋するが、味方が退けば孤立無援になる恐れ。部下の副長が「艦長、これ以上続ければ“たかつき”は沈むかもしれない。 でも放棄すれば海峡は敵の支配下に…」と声を震わせる。高橋は艦橋で目を閉じる。「俺にできるのは、ここで最後まで闘うことか…」 それが艦の存亡を賭ける行動だと理解しているが、それでも海峡を守りたい一心だ。

最終章:壮絶な決断と結末

(戦闘クライマックス)

  • 状況: 中国艦隊が駆逐艦2隻を前面に押し出し、封鎖を確定させようとしている。 米艦は一部後退。 韓国艦は大破し退避中。 たかつきが単艦で対峙する形。

  • 艦橋の覚悟: 高橋が「これが最後の砲弾かもしれない」と呟き、「主砲、対艦ミサイル全部使って敵を止める」と宣言。

  • 激しい応酬:

    1. 敵駆逐艦から大量の対艦ミサイルが飛来。 たかつきのCIWSが激烈な弾幕を張り、複数を破壊するが、制しきれず1発が命中。 甲板が炎上し、スパークが散る。

    2. たかつきもVLSから対艦ミサイルを連射し、敵艦に再度命中。 爆炎が艦橋を覆う敵駆逐艦がスピードを落とすが、まだ戦闘能力を残しており砲撃を放ち続ける。

    3. 艦内で火災が広がり「沈むのも時間の問題…」という報告が飛び交うなか、高橋が「最後のミサイルを…発射!」と声を張り上げる。

  • 結末:

    1. ミサイルが敵艦をまた直撃し、大破させる。海峡封鎖の要となる艦が機能停止し、敵部隊が混乱。

    2. しかし、たかつきも重度の浸水と火災で制御不能に陥る。 「艦長…! 早く退避を…」と部下が叫ぶ。

    3. 高橋は「お前たちは逃げろ。艦はもうもたん…」と静かに微笑む。 血を流しながら、副長とクルーが避難ボートで脱出するのを見届ける。

    4. 艦は大きく傾き、火が吹き上げ、最後に海面下へ沈んでいく。 砲塔から煙を吐きながら、たかつきは静かに海底へと沈む。その最期まで艦橋に立ち続けた高橋は海中に消える。

エピローグ:海峡に残る余韻

この戦闘により、中国艦隊は一時的に攻勢を鈍らせ、封鎖を完成できなかったとの続報が入る。 だが日本艦隊の損害は甚大で、たかつきは沈没し多くの乗員が命を落とした。国際社会では、米軍と韓国海軍の対応に批判も起きたが、一方で「たかつき」の奮戦が海峡を守ったとの称賛の声も。報道映像には海峡に沈んだ船体から燃料が少し漂うさまが映され、波間にかすかな泡立ちが見える。 その跡を通って商船やタンカーが命がけで航行する姿に、人々は複雑な思いを抱く。最後の海峡——そこに燃えた烈火を残して散ったイージス艦。 その犠牲は日本の意志を示す象徴となり、再び各国が協力して紛争を止める機運が高まる。しかし、それで戦争が終わるわけではない。 海にはまだ多くの火種がくすぶっている。 ただ、“たかつき”の名前は、この海峡で**“国際連携の難しさと、守るための意志”**を示す象徴として語り継がれる。

—終幕—

 
 
 

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