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石畳に彩られた舞台――ブルージュ市場広場の物語

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月3日
  • 読了時間: 4分

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 ベルギー北西部にある中世都市ブルージュ(Brugge)は、「北のヴェネツィア」と称される運河の美しさで知られていますが、その中心に広がる**市場広場(Markt)**は、街の活気と歴史を象徴する重要なスポットです。古い石畳の上で、歴史と現代、観光客と地元民が交差する舞台。それがブルージュの市場広場なのです。

1. 街の心臓部、ゴシックの鐘楼が迎える朝

 朝早く、ブルージュの街並みがまだ静寂に包まれているころ、市場広場の中心にそびえるのが鐘楼(Belfort)。高さ83メートルのゴシック建築は、13世紀に建造されたもので、市民の誇りと繁栄を象徴してきました。 早朝には、淡いオレンジの光が鐘楼の石壁を照らし、陰影がくっきりと際立つ様子は息をのむ美しさ。ときおり鐘が鳴り響き、ブルージュの一日が静かに始まります。

2. カラフルなギルドハウスと石畳の華

 広場を取り囲むように並ぶのが、カラフルな**ギルドハウス(ギルドに所属する商人や職人の家々)**のファサード。三角形の切妻屋根が並び、その下にはレストランやカフェ、お土産物屋などが軒を連ねています。 赤や黄色、緑など、それぞれが鮮やかな色彩をまとい、屋根の形や窓枠のデザインにも個性が表れている。正面の煉瓦造りや装飾をじっくり見ていると、この街がかつて遠洋貿易で富を築いた歴史と、ギルドの存在感が今なお息づいているのを感じます。

3. 毎週の市場と地元の暮らし

 ブルージュの市場広場という名の由来でもある定期市。曜日によって開かれるフードマーケットやアンティークマーケットなどでは、新鮮な野菜や果物、ワッフルの屋台、地元産のチーズやハムなどが並び、地元民も観光客も一緒になって買い物を楽しみます。 広場に溢れる活気は、地元の人たちが日常の買い物をしている姿が見られるからこそ。鮮やかな花屋のスタンドや、屋台で揚げられるフライドポテトの香り、そして隣り合うテーブルで会話に花を咲かせる姿――すべてがこの広場を彩る愛おしい風景の一部です。

4. 馬車が描く中世の残像

 石畳をコツコツと響かせながら、**馬車(フォースキャリッジ)**が広場をゆっくりと横切っていきます。観光客を乗せた馬車は、ゴシックの鐘楼やギルドハウスの前を通過しながら、ガイドの説明を添えて中世の面影をアピール。 馬の蹄の音、車輪のきしみ、そして御者の温かい声が、広場をさらに活気づける要素です。時々、馬に人参を渡す子どもの姿もあり、そんなふとした瞬間が中世的な雰囲気と現代の暮らしを繋いでいるかのように感じられます。

5. カフェのテラスで一息

 広場を一周したら、少し疲れてきたところで周辺のカフェテラスに腰を下ろしてみましょう。晴れた日にはパラソルの下で心地よい風に当たりながら、ベルギービールやホットチョコレート、あるいはコーヒーを楽しむのがおすすめ。 目の前では観光客が写真を撮ったり、馬車が行き交ったり、地元の人が買い物袋を手に早足で通り過ぎたり――市場広場の動きを眺めていると、時の流れが穏やかに感じられます。周囲の鐘楼から時報が鳴れば、それに合わせて運河の風景や石造りの建物が一層美しく映えるのです。

6. 夜のロマンチックな装い

 日が沈むと、広場はまた違った表情を見せます。鐘楼やギルドハウスのファサードにはライトアップが施され、石畳にはオレンジ色の光が反射してどこかロマンチックな雰囲気を醸し出します。 夜の市場広場を散歩すると、昼間とは比較にならないほど人が少なくなり、静寂の中にライトの映し出す陰影が幻想的。時折、レストランのテラスから聞こえてくる笑い声やグラスの音が、古都の夜に温もりをもたらしてくれます。

エピローグ

 ブルージュの市場広場(Markt) は、中世の繁栄と現代の観光が見事に調和した空間です。石畳の下には、貿易で栄えた遠い時代の記憶が眠り、色とりどりのギルドハウスが歴史の物語を語りかけてくれます。 馬車の蹄の音、鐘楼の鐘の響き、そしてワッフルやフライドポテトの香り――すべてが複雑に絡み合って、ここにしかない“ブルージュらしさ”を形作っているのです。 もし足を運ぶ機会があれば、広場でひととき腰を下ろし、そのすべてを体で感じてください。きっと石畳の記憶が、あなたの旅の宝物となるでしょう。

(了)

 
 
 

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