『Velvet Ledger — ラグジュアリー・ブティック編 IV』
- 山崎行政書士事務所
- 9月21日
- 読了時間: 7分
登場人物
朝霧(ストアマネージャー):柔らかい口調で線引きを徹底。
橘(セールスアソシエイト):一次応対。誠実・丁寧。
桜庭(来店客):要求が段階的にエスカレート。
本社CS/法務(音声):窓口一本化と広報・法務連携。
館(モール)警備:共用部の安全担当。
ナレーション:要点補足。
シーン1:並行輸入品の「店頭保証」要求
桜庭「ネットの並行輸入で買った。正規店で無料修理しろ」橘「購入経路ごとに保証条件が異なります。当店販売品は店頭保証/メーカー保証、並行輸入品は購入元へのご相談が基本です。有償修理は可能です」
🔎 法令・ガイドライン要点
民法(契約不適合責任):責任は売主と買主の契約の枠内。販売者が異なる場合、正規店に無償義務はない。
PL法は欠陥と損害が要件。通常の「保証」論点とは別。
実務:経路別保証の掲示/有償修理可否表を準備。
シーン2:再販売価格と「値引き圧」
桜庭「他店より高い。最低価格で売れ。SNSに晒す」朝霧「価格は当店の裁量です。不当な“最低価格維持”の強制は行っていません。本日の価格でのご案内となります」
🔎 法令・ガイドライン要点
独占禁止法:製造業者が小売に再販売価格維持を強制する行為は原則違法。
店側は独自価格の説明を淡々と。脅し・晒しは後段の注意→打切り運用へ。
シーン3:「取置き(内金)」のキャンセル
桜庭「内金を返せ。気が変わった」橘「内金(申込金・手付金)の性質と返金可否は約款で定めています。期間内のキャンセル規定に従ってご案内します」
🔎 法令・ガイドライン要点
民法(手付金):解約手付なら放棄で解約・倍返しで解除など事前合意が基準。
特商法の通信販売と店頭は別ルール。店頭にクーリング・オフは原則なし。
掲示:手付/取置きの返金条件・期限を明確に。
シーン4:ギフトカードの「現金化」要求
桜庭「ギフトカードを現金に。残高を全部払え」朝霧「資金決済法に基づく前払式支払手段のため、原則払戻し不可です。未使用・払戻し規定該当の場合のみ所定手数料で払戻しします」
🔎 法令・ガイドライン要点
資金決済法:前払式支払手段は払戻し原則禁止、ただし廃止等の例外で払戻し義務。
実務:券面・WEBに払戻し条件と問合せ窓口を明示。
シーン5:補助犬・合理的配慮と安全配慮
(桜庭の同伴客が身体障害者補助犬を連れて入店。別の客が苦情)橘「補助犬は法的に同伴可です。座席導線を確保してご案内します」朝霧(苦情客へ)「衛生・安全基準を満たしています。ご理解ください」
🔎 法令・ガイドライン要点
身体障害者補助犬法:同伴受入れ義務(不当拒否は不可)。
障害者差別解消法:合理的配慮の提供。
消防法・避難経路:通路確保と群集安全の両立が前提。
シーン6:希少皮革の海外発送依頼
桜庭「クロコのバッグを海外の友人へ。店からDHLで送って」橘「CITES(ワシントン条約)対象の可能性があり、輸出許可やタグが必要です。当店の国際発送対象外か、条件付となります」
🔎 法令・ガイドライン要点
種の保存法/CITES:附属書掲載種(例:ワニ革)は輸出入許可・証明書が必要。
実務:素材別チェックリスト/不可・要許可・可の区分を即答できる体制。
シーン7:CCTV映像の「即時開示」要求
桜庭「昨日の映像を今すぐ見せろ。落とし物を確認したい」朝霧「防犯カメラ映像は個人情報に該当し得ます。所定の手続き・本人確認を経て本社窓口で対応します。遺失物は館の遺失物窓口に連携済みです」
🔎 法令・ガイドライン要点
個人情報保護法:第三者が映る映像は本人確認・目的限定・安全管理が必要。
遺失物法:拾得物の取り扱い・引渡し手続。
実務:館窓口/警察と三者連携の手順書を整備。
シーン8:高額現金購入とAMLポリシー
桜庭「現金で○百万円。身分証なしで領収書だけくれ」橘「防犯と会計監査上、高額現金は身分確認・複数名決裁をお願いしています。領収書は社名・但書・金額・日付での発行です」
🔎 法令・ガイドライン要点
犯罪収益移転防止法(該当事業者に限る・参考):本人確認・取引記録の義務。高額現金は内部規程でリスクベース対応が一般的。
会計実務:領収書の必須記載/不自然な要求の拒否。
シーン9:EASゲート反応—“任意確認”と退去要請
(出口でアラーム。桜庭、苛立つ)橘「任意でお手荷物の確認にご協力ください」桜庭「疑うのか。帰らない。土下座しろ」朝霧「確認は任意です。ご同意がなければ本日の販売・入店をお断りします。威迫表現はお控えください。必要に応じて館警備・警察に相談します」
🔎 法令・ガイドライン要点
任意協力が原則/現行犯(刑訴法213)を除き強制は不可。
施設管理権:入店拒否・退去要請の運用根拠(差別的運用は禁止)。
刑法(強要・威力業務妨害・不退去):継続時の相談根拠。
シーン10:長時間拘束と“上に繋げ”要求
桜庭「納得いくまで話す。役員を出せ」朝霧「説明は10分で区切ります。要点は①保証は購入経路準拠、②価格は当店裁量、③内金は約款準拠、④ギフトカードは払戻し原則不可、⑤補助犬同伴可、⑥CITESは要許可、⑦映像開示は本社経由です。以降は書面と本社CSに一本化します」(タイマーを置き、要点メモを読み上げ)
🔎 法令・ガイドライン要点
労働施策総合推進法(カスハラ防止):二人体制・時間上限・書面化が有効。
一本化:“上に繋げ”はCS/法務へ固定。
シーン11:落としどころ(後日・本社CS経由)
桜庭(メール)「有償修理で構わない。CITES書類は現地で手配する。ギフトカードは使い切りで」本社CS「ありがとうございます。有償修理の範囲・見積・納期、国際発送不可/CITES手続きは購入者側で手配、ギフトカードは払戻し対象外を合意書に記載します」
🔎 法令・ガイドライン要点
合意書:条件・費用・納期・窓口、不可事項の明確化、案件番号で履歴管理。
再燃抑止:“できる/できない”の平易明文化+FAQ掲示。
エピローグ:クローズ後の振り返り
橘「三択+タイマー+一本化、今日も効きました」朝霧「人ではなく仕組みで守る。三択提示・時間上限・書面化・一本化・退去要請・法令根拠の即答。明日も同じ台詞で」
— 完 —
付録A:即使える台詞カード(ラグジュアリー店舗・第4作)
冒頭(枠=三択で固定)
「本日のご案内は三つです。①ポリシー内の交換、②返金(条件適合時)、③修理・メンテ受付」
並行輸入の保証
「正規店の無償保証は当店販売分が対象です。有償修理をご案内します」
価格交渉・晒し示唆
「価格は当店裁量です。威迫はお控えください。以降は書面とCSで回答します」
内金(取置き)
「返金可否は約款準拠です。期限・条件をご確認ください」
ギフトカード現金化
「資金決済法により払戻しは原則不可です(例外条件のみ可)」
補助犬・合理的配慮
「補助犬は同伴可です。導線を確保してご案内します」
希少皮革の海外発送
「CITES対象は許可が必要です。店からの国際発送は対象外・または条件付です」
CCTV映像開示
「本人確認・所定手続で本社窓口が対応します」
打切り/一本化/退去
「説明は10分で区切ります。以降は書面とCSに一本化します」
「施設管理規程に基づき、退去を要請します」
付録B:現場チェックリスト(法令×運用)
掲示:保証の範囲(正規・並行)/取置き・手付の条件/ギフトカード払戻し不可/撮影制限/購入上限
人:担当ID名札(名字+ID)/私物連絡先の非開示/二人体制切替の合図
修理:有償/無償の判定表/修理同意書/納期SLA
希少皮革:素材別CITES確認票/不可・要許可・可の区分表
補助犬:受入れ手順・導線確保・他客への説明カード
CCTV・遺失物:本社・館・警察の三者連携手順/開示申請様式
決済・現金:高額現金の本人確認・複数名決裁/領収書統一ルール
記録:要点メモ(日時・要旨・注意・終了宣言)/保存期間・アクセス権限
一本化:CS・法務・広報の訂正窓口を即提示できる台詞統一
付録C:参照法令・指針(実務での使いどころ)
民法(契約不適合責任・手付)
製造物責任法(PL法)
独占禁止法(再販売価格維持)
資金決済法(前払式支払手段)
身体障害者補助犬法/障害者差別解消法
種の保存法/CITES(ワシントン条約)
個人情報保護法(CCTV映像・開示請求)
遺失物法
犯罪収益移転防止法(該当事業者のみ・参考)
刑法(私文書偽造・強要・威力業務妨害・不退去)
刑事訴訟法213(現行犯逮捕)
館/店舗管理規程(撮影・退去・入店拒否)


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