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白いカルテの冬 — つるぎの谷の病院(長編フィクション)

— 2021年10月31日に発生した徳島県つるぎ町立半田病院のランサムウェア事案(深夜に院内プリンタが犯行声明を印字、電子カルテ等が暗号化され長期停止/年明け1月4日に通常診療再開、のちの有識者会議報告で LockBit 2.0 とVPN装置の脆弱性悪用が示唆)を骨格にした創作。人物・会話はフィクションです。

00|未明 0:31 「出していないのに、出ている」

徳島の山を抱く谷あいの町。半田総合(架空名)の機械室で、夏芽は深夜勤の眠気を追い払っていた。ログは平常、端末は静穏。だがEMR(電子カルテ)の応答に、針先で突いたような遅延が混ざった。「回線、混んでない……なのに遅い。」

システム一覧を開いた瞬間、プリンタが唸った。ひとつ、またひとつ——十数台同時に、白紙を吸い込み、英文を吐き出し始める。

“Your data has been stolen and encrypted…”“Pay or we will leak.”

夏芽は血の気が引いた。「やられた。」機械室の非常ボタンを押す。

山崎行政書士事務所に、至急。」

01|0:58 “止める/伝える/回す”

静岡・山崎行政書士事務所。ホワイトボードの前に**律斗(りつと)**が立ち、太字で三行を書く。

止める/伝える/回す

  • 止める院内ネットワーク電源を落とさず分断EMR セグメントから院外への線を遮断し、RAMダンプ/ディスク像一方向で吸い上げる。Outbound白(許可宛先のみ)常時特権ゼロJIT特権(必要時のみ短期貸与)へ切替。

  • 伝える三文院長/事務局/医局に同報。「確認された事実プリンタ一斉印字/電子カルテ系の障害/隔離措置)」と「可能性(仮説)ランサムウェア→横展開→暗号化)」を段落で分け朝9時/正午/17時時刻で更新する約束を置く。

  • 回す救急・新規受入一時停止外来紙カルテ口頭復唱最小運用遅いけど確実に回す。

りなが頷く。「“声は鍵”——折り返し+二名承認を全窓口に。72時間所管報告も回します。」

奏汰(そうた)は、構成図に赤を走らせた。「VPN装置の古い口、残ってない? そこから森に入られて、EMR と医事サーバ広がる線が見える。」

悠真(ゆうま)は短く言う。「電源は落とさない。証跡が道だ。」

02|1:46 紙の雨

看護師詰所にも、事務室にも、紙の雨が降り積もる。犯行声明の黒い文字、QR脅迫の期限。夏芽スイッチを引き、印刷ジョブを殺して回る。端末動く、しかしEMR応えない。「0:30に遅延、3:00までに遮断。」時刻は止めた。だが燃えている。

03|3:12 四つの数字(第一次)

律斗の白板に、**蓮斗(れんと)**が数字を書く。

  • MTTD(検知)約40分遅延→印字→遮断

  • 一次封じ込め約120分隔離/白化/証跡保全/JIT化

  • 観測EMR/医事/一部ファイル暗号化院内プリンタ一斉印字

  • 初期対応救急受入停止/外来の紙運用へ移行

律斗は短く言う。「勝ってはいない。でも**“間に合っている”**。」

04|朝 10:00 災害対策本部

院長室災害対策本部が立つ。救急搬送近隣振替手術は出来るだけ延期紙カルテ復活し、受付長机手書き科名を貼った。会計印字切れている。オーダで出す。りな一次報を読み上げる。

事実院内の一部サーバ/端末身代金要求型ウイルス感染ネットワーク遮断証跡保全JIT特権を実施。影響電子カルテ医事等が閲覧不可/停止救急/新規外来一時停止対応紙運用最小診療を継続。次報 正午

怒号はない。時刻不安終わりを作る。

05|昼 12:30 「木を、割る」

有識者ベンダが集まる。夏芽は**“森”入口を指す。「VPNの古い枝**。パッチの当たっていない季節がある。」奏汰が頷く。「LockBit 2.0手癖に似てる。プリンタしゃべらせる横展開暗号化“持ち出し”。まずはる——院外との線で絞って、隔離しよう。」

悠真EMR事業者仮システムの相談を始める。「空の箱既知良品だけ入れて、最小呼吸を戻す。」りな広報台本主語を太くする。

「当院は、いつ、何を、どう変えるか。」「帰属(誰がやったか)は当院が言わない。公的発表に歩調を合わせる。」

06|二日目 白い谷

を埋める。受付名前住所一人ずつ聞き、職員手書きカルテを綴じる。採血管ラベル手書き看護記録A4罫線外来数を絞り救急受けられない産科の女性が言う。「お産遠く行かれへん……」夏芽の裏にを当て、「戻れる速さ」を紙で作ることを受け止める。

07|一週間目 数字になるもの/ならないもの

蓮斗数字を並べる。

  • 電子カルテ参照不能約85,000人分過去分を含む

  • 端末影響約200台暗号化対象

  • 完全復帰目標年明け仮システム構築中

数字にならないものがある。ため息夜勤沈黙患者家族りな窓口台本に、一行目を置く。

「当院からATM操作や送金依頼はしない」詐欺追い打ちから守るための一行だ。

08|十一月下旬 「黒」の名乗り

闇サイト名乗りが上がる。盗んだ/暗号化した/期限所管を立て、報道ぐ。りな二段落を崩さない。

  • 確認された事実犯行声明らしき掲示の存在を把握。法執行機関と連携。

  • 未確定(継続調査)主張データの真正性・範囲

混ぜない時刻切る謝るときは主語最初に置く。

09|十二月 “空の箱”が歌い出す

仮システムを吹き返す。過去から抽出していた最小のデータ載せ新しい箱呼吸を移す。バックアップWORM二経路越境の呼吸SOC端末の微熱EDRで拾う。奏汰地図を描く。

  • “見る鍵/運ぶ鍵/署名する鍵”を分ける

  • 常時特権ゼロJIT貸与押印

  • Outboundは白だけ、DNS未知即死

  • VPN短く太く古い枝伐る

やまにゃんの札が光る。

「遅いけど確実。」

10|年明け 1月4日 通常診療

掲示板が貼られる。

「本日より通常診療を再開します」待合小さな拍手が起きる。白いカルテ続くが、戻る夏芽最初の診療終わり時刻を押した。二ヶ月は、新しい柵新しい道を残した。

11|有識者会議の春

報告書公開される。LockBit 2.0VPN脆弱性の悪用プリンタ一斉印字遮断→紙運用→再開費用億の単位完全復旧まで二ヶ月超りな講堂三つの時計を示す。

  1. 現場の時間(診療・看護・会計)

  2. 規制の時間継続報告/患者通知

  3. 経営の時間(信頼・費用・再発防止)

そして、いつもの三行。

言い切る事実可能性同じ文に置かない)期限を付ける例外48時間自動失効二重に確かめる自動前後に**“人の10分”**)

夏芽機械室引き出しに、厚い紙束を戻す。遅い。でも、戻れる速さから始まるを渡るは冷たい。だが、白いカルテは、また一枚めくられる。

——

参考リンク(URLべた張り/事実ベース・一次情報/主要報道・技術整理)

※物語はフィクションですが、骨格(2021/10/31 未明の一斉印字→ランサムウェア感染/電子カルテ等が不能→救急・新患受入停止→紙運用→2022/1/4 通常診療再開LockBit 2.0 とVPN装置脆弱性の示唆 など)は以下に基づいています。

主な点:病院公式の有識者会議報告プリンタ一斉印字/LockBit 2.0/VPN脆弱性の悪用の可能性時系列・復旧)、Mainichi/朝日/NHKの現地・時系列報道、**MHLW(厚労省)**による医療分野の整理、CyberEnso/Acronisの英語記事が、本文の骨格(発見状況、診療影響、復旧時期、被害規模の目安等)を裏づけています。

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