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静岡伊勢屋 - 「エレガンスプラザの恋 〜永遠を紡ぐ春の光〜」

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月25日
  • 読了時間: 5分



 夜桜の並木道でふたりの想いを確かめ合ってから、さらに季節は進み、桜の花びらが街を彩る静岡の春もそろそろ緑の葉をまとい始めた。ふんわりと花吹雪が舞う頃、私たちは慌ただしい準備の真っ只中にいた。そう――結婚式を挙げるための準備である。

 あれから、彼はシンガポールでの長いプロジェクトを無事に終え、日本に拠点を移せることになった。離れていた時間を取り戻すかのように、彼は忙しさの合間を縫って私のもとへ通い、家族や友人にも挨拶を済ませた。 私の方はエレガンスプラザでのデザイナー業を続けながら、結婚式の準備を進める日々。周囲のスタッフや家族の協力を得て、とんとん拍子に話がまとまり始めている。

 「ずっと応援してた甲斐があったわね」 店長の山口さんが、お祝いの言葉とともに新作の白いドレスを見せてくれた。私がちょっとした意見を出しながら形にした、ウェディングラインのサンプルだ。 「まさか自分のデザインしたドレスを、自分の結婚式で着ることになるなんて……」 そのことを考えるたび、胸が高鳴る。夢と恋を同時に叶える瞬間が、こんなにも早く訪れるなんて想像もしていなかった。

 結婚式は、静岡の街を見晴らす小さなチャペルで行うことになった。私たちふたりとも、育ててくれた場所に恩返しがしたい思いと、親や友人が集まりやすいという理由があった。 式当日の朝、私はエレガンスプラザの奥の部屋で最終的な身支度を整えていた。ドレスのウエストラインをチェックし、ビーズの輝きを確かめる。飾りすぎない気品を目指したそのデザインは、私のこれまでの歩みを象徴するように、控えめだけれど温かい光をまとっている。 「きっと似合うわよ」 山口さんが優しく背中を押してくれた。鏡に映る私は少し緊張した表情だけれど、目の奥にははっきりとした意志と喜びの光がある。指先に触れるリングが、今日この日を迎えられた幸せを教えてくれる。

 チャペルの扉を開けた瞬間、柔らかな朝の光が差し込み、白い生花の香りがふわりと鼻をくすぐった。バージンロードの先で私を待っている彼は、まるでドラマのワンシーンのように凛々しい姿で立っている。 お互いの両親や、エレガンスプラザの仲間たち、そしてこれまで私たちを支えてくれた大切な人々が、一斉に温かい眼差しを向けているのが視界に入った。頬が熱くなるのを感じながら、一歩、また一歩と歩みを進める。

 ようやく彼のもとへ辿り着き、見上げると、いつもの穏やかな笑みがそこにあった。声にならないほどの安堵と嬉しさが胸にこみあげ、思わず瞳が潤む。 「会えない時間もあったけれど、いまこうして並んで立てることが本当に幸せだよ」 彼が小さくそう呟き、そっと私の手を握る。その温もりが、今度こそ離れることはないと教えてくれる。

 指輪の交換のとき、改めて彼が私の薬指へリングを通す。遠距離の寂しさを超えて、何度も帰ってきてくれた彼。エレガンスプラザで私を育ててくれた多くの人々。そしてそれを見守る家族たち。 「ふたりが人生をともに歩むことを誓いますか?」 司式者の問いかけに、私たちは揃って力強く頷く。 「はい、誓います」

 会場のあちこちから拍手が湧き、私たちは幸せの絶頂に包まれる。花びらが舞う中、見つめ合った瞬間、自然と微笑みあっていた。夜桜の下で育んだ気持ち、家族への挨拶、遠距離を乗り越えた日々――すべてが今、私たちの“未来”へと続いている。

 式後のパーティーでは、エレガンスプラザの仲間や友人が集まり、祝福の言葉とともに大きな拍手を贈ってくれた。店長の山口さんは嬉しそうに涙ぐみながら、 「あなたのドレス姿、初めて見たときから輝いていたけど、今日はいつも以上ね。これからは新しい舞台に向けて、さらに頑張りなさい」 と語りかけてくれる。 私が「はい!」と答えると、彼が隣で「俺もずっと応援するよ」と言葉を添える。その短いフレーズに、かつて離れていた時間が嘘のように感じられ、また胸がいっぱいになる。

 披露宴の終わり、すべての祝福に感謝を伝えながら、私たちは並んで立ち上がった。優しいシャンパンゴールドのスポットライトが会場を照らし、これまでの思い出が走馬灯のように頭をよぎる。 静岡のエレガンスプラザで出会い直した日、初めてメイン担当したドレスを買ってもらったこと、カフェで過ごした何気ない時間、そして離れて過ごした日々を励まし合った夜――そのすべてが色鮮やかな宝物となって胸にしまわれている。 そして今、私たちは新しい季節、新しい人生をともに歩み出そうとしている。

 「あなたに出会えて、本当に幸せ」 そう呟きながら、私は彼の腕にそっと自分の腕を絡ませる。彼の瞳には私と同じ決意と希望が映っていた。 花嫁と花婿を送り出すフラワーシャワーに包まれ、私たちはゆっくりとバージンロードを歩く。外へ出ると、春の日差しが柔らかく祝福の光を降り注いでいた。

 こうして私たちの物語は、ひとつの大きなゴールを迎えたようでいて、実はスタートラインに立ったばかりでもある。 ふたりが繋がった指先が示す未来。それは、遠距離を経てもなお揺るぎない愛を育んだ証しであり、これからどんな道を歩んでも“ふたりなら大丈夫”と教えてくれる力。 エレガンスプラザで芽生えた小さな奇跡の種は、ここにきて大きく花開き、これからも私たちを新しい景色へ導いてくれるはずだ。

 いつか振り返ったとき、今日の春の光が鮮やかに思い出されるだろう。夢と恋を重ね合わせ、ロマンスを育んできた日々のすべてが、ふたりの笑顔を支えていく。 眩しい陽射しのもと、私と彼はそっと見つめ合い、幸せな笑みを交わした。遠く離れていた日々を超えて、今こそ“永遠”を紡ぐ誓いを抱きしめて――。

 静岡伊勢屋からはじまったこの恋は、愛という花を咲かせて、いつまでも私たちを照らし続ける。

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