top of page

Welcome
はじめに(当ブログについて)
山崎行政書士事務所は、
事業の「はじめる」「続ける」「育てる」各段階で生じる
法律・手続きに関する課題をサポートする行政書士事務所です。
許認可申請、契約書の作成・チェック、各種相談、
個人情報保護への対応、事業承継、知的財産の登録支援など、
事業者の皆さまが直面しやすい幅広いテーマを取り扱っています。
新規開業や事業拡大の場面で避けて通れない
行政手続きや法規制について、
専門的な知識と実務経験をもとに支援しています。
当ブログの位置づけについて
当ブログでは、
動画や記事を通じて 山崎行政書士事務所の考え方や取り組みを
できるだけ分かりやすくご紹介しています。
また、
理解を深めていただく目的で、
小説・フィクション形式の記事も掲載しています。
そのため、
一部の記事には 実際の事例とは異なる表現や
創作的な内容が含まれる場合があります。
あらかじめご了承下さい。
情報の取り扱いに関する注意
本ブログで紹介している内容は、
あくまで 概要的な情報です。
制度や法令の詳細・最新情報については、
必ず 政府の公式発表や公的資料をご確認ください。
免責事項
本ブログの内容は、
一般的な情報提供を目的としたものであり、
特定の事案に対する法的アドバイスではありません。
掲載情報について、
常に最新・完全であることを保証するものではありません。
具体的な判断や対応が必要な場合は、
必ず行政書士・弁護士などの専門家にご相談ください。
本ブログの情報を利用したことにより生じた
いかなる損失・損害についても、
当ブログおよび筆者は責任を負いかねます。
検索


Copilot導入で情報漏えいを起こす会社の共通点は「LLM」ではなく“オーバーシェア”
Microsoft Purview(秘密度ラベル/DLP)×Entra(権限)×Copilotコネクタで、情シスが「止めずに守る」実装手順 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言・紛争対応・代理交渉等を行うものではありません。個別事情に応じた判断が必要な場合は、内容により弁護士等の専門家と連携して検討してください。 1. “Copilotが漏らす”のではなく「あなたの権限設計が漏らす」 まず、情シスが社内・取引先から聞かれる定番2問に、Microsoft公式の前提で答えを揃えます。 Q1:入力したプロンプトや社内データが、基礎モデルの学習に使われませんか? Microsoft Learnでは、 Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト・応答・データは、基礎LLMのトレーニングには使用されない と明記されています。 Q2:Copilotは、社内の何でも見えるんですか? Microsoft Learnでは、 Copilotは各ユーザーが少なくとも“閲覧権限”を持つ組織データのみを表示 し、SharePoin
山崎行政書士事務所
2月28日読了時間: 6分


静の字
朝の雨戸は、まだ冷たい木の音を抱えていた。 戸袋の奥に、夜の風が残した擦れ。 擦れは、鳴る前の怒りみたいに潜っている。 蝉は、まだ鳴かない。 鳴かない蝉は、町の上に薄い布をかけているみたいだ。 薄いのに、ちゃんと“静”。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 袋の中には、青い欠片。 海で拾った瓶のガラスが、波で丸くなったやつ。 青は、空みたいで、海みたいで、怒らない色。 角がないから、刺さらない。 刺さらない青は、胸の奥に座る。 ――いき。 息を入れると、耳が細くなる。 細い耳は、鳴ってない音まで聴こうとする。 鳴ってない音のほうが、ときどき胸に来る。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りが入った印。 困りは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 あめど がたがたよる こわいしずか に できたら みてください こばやし がたがた。 雨戸のがたがたは
山崎行政書士事務所
2月28日読了時間: 9分


水の字
朝の水路は、まだ冷たい音を抱えていた。 石の縁が、夜の水を離す前の静けさ。 水はそこにいるのに、まだ走らない。 走らない水は、息みたいに胸の奥に座る。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 袋の中には、竹の小さな筒。 昨日、父が切ってくれた。 筒の中に、井戸水を少しだけ入れてある。 揺らすと、こぽん、と鳴る。 鳴るのに、刺さらない。 丸い音。 ――いき。 息を入れると、胸の中に“水の道”がひとつできる。 道があると、怖さが溜まりきらない。 溜まる前に、流れる。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印。 困りごとは、口に出す前に濁るから、箱でいったん座らせる。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないと、手が取れる。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 みずみち とまったたね かわく こわいよかったら きてください たなか 水道じゃない。 水路。 田んぼへ行く水の道。 止まると、苗が乾く。 乾くと、米が痩
山崎行政書士事務所
2月28日読了時間: 8分


2024年以降の「管理ポータル必須MFA」で情シスが燃える前に
Microsoft Entra 条件付きアクセス×認証強度×パスキー×例外統制で“止めない移行”を設計する ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言(紛争対応・代理交渉等)を行うものではありません。個別事情に応じた契約判断等が必要な場合は、内容により弁護士等と連携して検討してください。 「MFAを入れてるから大丈夫」が、急に通用しなくなる理由 情シスが本当に怖いのは、セキュリティ強化そのものではなく、 “一部の管理者だけ”突然サインインできなくなる IaC/自動化(Azure CLI/PowerShell)が特定操作だけ失敗し始める 例外アカウント(ベンダー・役員・共有端末)が野放図に増えて、監査で詰む …こういう「止まる+説明できない」が同時に来ることです。 そして今まさに、Microsoft側で“管理ポータルにMFAを必須化する流れ”が段階的に進んでいます。 まず事実:Microsoftが示している「必須MFA」適用のスコープと時期 Microsoft Learn(日本語)では、 Azure などの管理ポータルにおけるM
山崎行政書士事務所
2月27日読了時間: 8分


Key Vaultを「入れた」だけで安心していませんか?
期限切れ・過剰権限・委託先/CI-CDで“秘密情報の事故”が起きる組織の共通点(情シス向け) ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言・紛争対応を行うものではありません。個別事情に踏み込む判断が必要な場合は、内容に応じて弁護士等の専門家と連携して検討してください。 情シスが本当に怖いのは「侵害」より「期限切れ+説明不能」 Azure Key Vaultを導入している企業でも、事故の引き金はだいたい次の3つです。 期限切れ (証明書/シークレットが切れて“業務停止”) 過剰権限 (開発・委託先・CIが“読める/書ける/消せる”) 属人化 (誰が更新するか、誰が承認するか、誰が監査に出すかが曖昧) 山崎行政書士事務所の「Key Vault運用設計」ページでも、Key Vaultは「入れているか」ではなく、 期限切れ・過剰権限・属人運用で事故を起こさないために、運用と説明責任(証跡)まで含めて設計できているかが重要 、と整理しています。さらに、Secrets/Keys/Certificatesを アクセス統制・ローテーション・監査
山崎行政書士事務所
2月27日読了時間: 6分


「ログはあるのに出せない」を終わらせる:Microsoft 365 / Azure / Entra ID の“監査に耐える証跡”設計(情シス向け)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言(弁護士法上の業務)を行うものではありません。個別の契約判断・紛争対応等は、内容に応じて弁護士等の専門家と連携して検討してください。 監査・取引先照会で刺さる質問は、いつも同じ 情シスが詰まるのは「ログを取っていない」からではありません。監査・取引先のセキュリティチェックシートで刺さるのは、だいたい次の3点です。 保持期間は要件に合っているか (半年?1年?7年?) 事故時に“削除停止”できるか/真正性(改ざんされていない)を説明できるか 誰が、何営業日以内に、どの形式で提出するか(主語が割れないか) 山崎行政書士事務所のクラウド法務では、まさにこの「ログ・権限・監査に耐える形へ」「“証跡の所在”を明記し、“提出の再現性”をつくる」整理を重視しています。 まずは“事実”として押さえる:Microsoft系ログのデフォルト保持は短い 「Microsoft 365を入れてるから、過去のログは出せるはず」と思いがちですが、 何もしないと短期で消えるログ が混ざっています。 1) Entra.
山崎行政書士事務所
2月26日読了時間: 6分


清の字
朝の手水鉢(ちょうずばち)は、まだ雨の冷たさを抱えていた。 石の縁に、夜の水が細く残っている。 残った水は、音まで湿らせる。 さらさら、の前の、ぬるり。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 中には、小さな白い小石。 昨日、川で拾って、家の水で洗った。 洗ったのに、まだ少しだけ砂の匂いがする。 白いのに、白くなりきってない。 白くなる途中の白。 ――いき。 息を入れると、目が“途中”を見ていられる。 急がない目。 急がない目は、濁りを怖がらない。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印。 困りごとは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないと、手が取れる。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 ちょうず の みず ぬめるきよく したい みてもらえますか きたむら ぬめる。 ぬめるは、濁りより先に来る。 ぬめるは、見えないのに、手に分かる。 分かると、怖さが胸に来る。.
山崎行政書士事務所
2月26日読了時間: 9分


夫の字
朝のちゃぶ台は、まだ湯気を抱えていた。 薄い粥の湯気。 米が少ない日の湯気は、軽いのに、鼻の奥に残る。 箸が、一本だけ、ちょっと短い。 母の箸の先が、欠けていた。 欠けは、小さい。小さいのに、口へ行く道の先にある。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 中には、竹の小さな削り屑。 昨日、父が箸を削ったときの、白い薄片。 鳴らない。 鳴らないのに、ちゃんと“尖り”の匂いがする。 ――いき。 息を入れると、尖りが少し丸くなる。 丸いと、刺さらない。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印。 困りごとは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 ふうふ ばしいっぽん おれて ささりそう こわいよかったら つくってください かねこ 夫婦箸。 二本で一つ。 一つで二本。 “ささりそう”。 箸が怖いんじゃなくて――箸のささくれが、指や口に刺さるのが
山崎行政書士事務所
2月26日読了時間: 10分


幹の字
朝の楠の幹は、まだ雨の冷たさを抱えていた。 樹皮の溝に、夜の水が細く残っている。 残った水は、光を思い出す前の黒さをしている。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 袋の中には、丸い木片。 庭で剪った枝の、輪切りの小さな木。 年輪が、渦みたいにいくつも入っている。 鳴らない。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 木の時間の重さ。 ――いき。 息を入れると、胸の中に一本の柱が立つ。 柱は、揺れても折れない場所を探す。 幹夫の名前の一文字。 幹。 木の、まんなか。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りが入った印。 困りは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないと、手が取れる。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 くす の みき われて こわいよかったら きてください やしろ くす。 楠。 みき。 幹。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、紙の「みき」が、幹夫の「幹」に触れた
山崎行政書士事務所
2月26日読了時間: 10分


間の字
雨上がりの縁側は、板の間に湿り気を残していた。 濡れた木は、音を吸う。 吸った音は、まだ外へ出てこない。 障子の白が、薄い朝の光を受けて、少しだけ青く見えた。 幹夫は縁側の端に座り、首から下げた布の袋を掌で押さえた。 中には、小さな木片。 昨日、父が鉋(かんな)で削った、ひらひらの削り花。 軽い。 軽いのに、ちゃんと“今日”の匂いがする。 湿った杉の匂い。 それは鼻の奥に、静かに座る匂い。 ――いき。 息を入れると、縁側と庭のあいだに、小さな“ま”が生まれる。 その“ま”は、雨だれが落ちきる前の、いちばん柔らかい場所。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かが“言う間”を探して、やっと入れた印だ。 母がふたを開ける。 中には、紙。 角は丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないから、手が取れる。 母の目が、文字を追って、そこで止まった。 もん が あかん あいだ なくて こわいよかったら みてください ささき あいだ、なくて。 門が開かない。 門が開かないのは、木が膨らんだせいかもしれない。
山崎行政書士事務所
2月25日読了時間: 8分
公取委が日本マイクロソフトに立ち入り検査――いま企業がやるべきは「クラウド選定」より先に“持ち込みライセンス”を説明できる状態にする
※本稿は、報道内容と Microsoft 公式のライセンスガイダンスを踏まえた 一般的な情報提供 です。個別案件の適法性判断・紛争対応・交渉代理などは弁護士業務の領域となるため、必要に応じて弁護士へご相談ください(当事務所でも連携の上、文書整備・整理支援は可能です)。 何が起きたのか(2026年2月25日) 2026年2月25日、米マイクロソフト(MS)について「他社クラウド上で Microsoft 365 などを使う事業者に高額な利用料を課して競争を阻害している疑い」があるとして、公正取引委員会が審査を開始し、日本法人への立ち入り検査を行った――という趣旨が報じられています。 現時点では “疑い” の段階であり、実態解明はこれからです。とはいえ、このニュースが示しているのは「クラウドは技術だけで選べない」という現実です。特に Microsoft 製品は “ライセンス条項” が設計・運用・コストに直結 します。ここを曖昧にしたままマルチクラウドを語ると、最後に詰まるのは決まって「説明責任」「契約」「費用」です。 技術者目線で見る「今回の論点
山崎行政書士事務所
2月25日読了時間: 7分


助の字
朝の井戸は、まだ冷たい音を抱えていた。 つるべの木が、水の重さを思い出す前の静けさ。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印だ。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は、刺さらない。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 いどの なわすれて こわいよかったらみてくださいひらた すれて、こわい。 縄がこわい、じゃなくて――縄が切れるのがこわい、ってことだ。 切れると、水が落ちる。 落ちる音は、胸に刺さることがある。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、平田さんの“こわい”が胸に届いた音。 鳴ったから、息。 ――いき。 父が縁側の端から顔を出した。 紙を読む前に、いったん置き布の上へ置いてから、指の腹で端を撫でる。 撫でると、紙が暴れない。 父の目が「いどの なわ」で止まる。 止まると、肩がふっと上がりかける。
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 9分


頼の字
朝の「まちばこ」は、ふたがほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの気持ちが入った印だ。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ふたを開けると、紙が一枚。 角が、急いだみたいに尖っている。 尖った角は、胸に刺さりやすい。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「組の紙だに。……今朝、回しとる」 父が紙を読む。 読む前に、いったん置き布の上へ置く。 置いてから、指の腹で端を撫でる。 撫でると、紙が暴れない。 さら。 父の目が、途中で止まった。 今夜 拍子木当番(○○さん) よろしく頼みます 「頼みます」。 その文字が、紙の上でちょっと重そうに座っている。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、父は懐へ触れて、丸い角のま札を撫でた。 ふう……。 「……今夜、か」 母は頷く。 頷きは、急がない。 「うん。……順番だに。頼まれたら、断れん。けど、抱えこむのも違うだに」 抱えこむ。 抱えこむと、胸が固ま
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 10分


与の字
朝の台所は、干物の匂いがいちばん先に起きていた。 火にかけた鍋の湯気より先に、あの、海と塩と日なたの匂い。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ちゃぶ台の上に、清水屋のおばさんから受け取った“端っこ”が並んでいる。 端っこなのに、きらっと小さく光る。 小さな光は、少しだけ「もったいない」を連れてくる。 母が、欠けた椀――今は塩の皿――から指先で塩をつまんだ。 つまむ指が、急がない。 急がない指は、刺さらない。 「これな、ちょっとだけ塩して焼く。……でな」 母は干物を見ながら、声を落とした。 「平田さんとこにも、少し持ってくかね」 平田。 回覧板の最後に名前があった家。 “最後”って言葉は、なんでも少しだけ重くする。 幹夫の胸がぽん、と鳴った。 鳴ったのは、うれしさと不安の混ざった音。 混ざった音は走りやすい。 走る前に、息。 ――いき。 父が縁側の端で、袖口の返し縫いを指でなぞっていた。 父の目が干物に落ちて、そこで止まる。 止まると、肩がふっと
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 11分


受の字
朝の戸口に、控えめな影が立った。 影は鳴らない。 鳴らないのに、家の空気が一枚だけ、そっとめくれる。 とん、とん。 木を叩く音。 小さい音。 小さい音は眠る。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が戸を開けると、清水屋のおばさんが立っていた。 味噌と干物の匂いが、外の風に混ざっている。 「おはようだに。昨日は回覧、助かったで」 おばさんの手には、小さな包み。 紙じゃなくて、布。 布はやさしい。 でも、布の中には“重さ”がある。 母が一瞬、受け取る前に止まった。 止まるとき、胸の中に線を引いている。 「そんな……ええよ。気にせんで」 “ええよ”は、返す言葉。 でも、おばさんは包みを引っ込めなかった。 引っ込めない手は、お願いの手だ。 「うちの干物の端っこだに。端っこでも、あると助かるだら。……受け取って」 受け取って。 その一言が、幹夫の胸の奥をぽん、と鳴らした。 ぽん。 鳴ったから、息。 ――いき。 母の手が、前へ出そうになって、でも“掴む”手
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 9分


返の字
朝の「まちばこ」は、今日は少しふくらんでいた。 空っぽの箱が、何かを抱えている。 抱えていると、家の中の空気も、ひとつ息を入れやすくなる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「みき、まちばこ、見てみ」 幹夫は箱のふたを、いきなり開けなかった。 ふたの端を、指の腹でそっと触ってから、少しだけ持ち上げる。 “門”みたいに、ちょうどよく開ける。 中にあったのは、回覧板。 きのう清水屋に置いてきたはずの板が、戻ってきている。 戻ってきた板は、少しだけ匂いが増えていた。 味噌の匂い。 干物の匂い。 人の手をいくつか通った匂い。 匂いは、届いた匂いでもある。 ――いき。 回覧板の上に、紙が一枚、折って挟んであった。 折り方が、少し硬い。 硬い折り方は、急いだ折り方だ。 紙には、短い字が書いてある。 組長さんへ返却 (最後 蒲原の平田) 返却。 返す。 返す、は、怒られる匂いが少し混ざる日がある。...
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 10分


届の字
朝の「まちばこ」は、今日は空っぽじゃなかった。 薄い板が、ひとつ――角を丸くして、そっと入っている。 回覧板。 木の匂いと、紙の匂い。 匂いは静か。静かなのに、胸の奥をくすぐる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「みき、これ……きのう夜に回すはずだっただに。黒布で手がふさがってて、うっかりした」 うっかり。 母の「うっかり」は、責める匂いじゃない。 人の手は、たまに落とす、っていう匂い。 父が縁側の端で、袖口の返し縫いを指でなぞっていた。 指が止まって、少しだけ息が遅れる。 ふう……。 「……次の家、清水屋だな」 母が頷く。 「そうだに。朝のうちに届けんと、次が動かん」 次が動かん。 次の次まで止まってしまう。 それは、糸が切れるのと似ている。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、責任の音。 責任の音は、走りやすい。 走る前に、息。 ――いき。 「……ぼく、届ける」...
山崎行政書士事務所
2月18日読了時間: 10分


伝の字
朝の光は、戸のすき間から入ってきて、畳の目を一本だけ白くした。 一本の白は、線みたいだ。 線があると、今日が始まる場所が分かる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ちゃぶ台の端の「まちばこ」に、今朝は紙が一枚入っていた。 白い紙。 白いのに刺さらないように、角が折ってある。 母の折り方。掴まない折り方。 「学校の、お知らせだに」 母が言った。声が急がない。 紙には、太い字で書いてある。 今夜 灯火管制 合図 拍子木先生より 家の人へ 家の人へ。 それは、紙が歩いていく言葉だ。 歩いていく言葉には、転びやすいところがある。 途中で、違う顔になってしまうところ。 父がその紙を見て、肩がふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、幹夫は息を入れた。 ――いき。 父は懐のま札に触れて、ふう、と吐いた。 ふう……。 「……先生から、か」 母が頷く。 「そうだに。……学校からのは、ちゃんと伝えんといかん。道中で“らしい”にせん」.
山崎行政書士事務所
2月18日読了時間: 10分


聞の字
戸の外で、紙の角がこすれる音がした。 こすれる音は小さい。 小さいのに、家の中の空気を一枚だけめくる。 ――いき。 「回覧(かいらん)だに」 母の声が、台所の境目から落ちた。 落ちた声は尖らない。尖らないと、朝が暴れない。 父が戸を少し開けて、薄い板みたいな回覧板を受け取った。 受け取る前に、いったん置き布の上へ置く。 置いてから、端をそっとつまむ。 掴まない。掴まないと、胸も紙も荒れない。 とん。 小さい音。 小さい音は眠る。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 父が回覧板の紙をめくる。 さら。 紙の音。 乾いた音。 乾いた音は、胸の奥の硬いところを起こしやすい日がある。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、幹夫の胸は勝手に鳴った。 ぽん。 鳴ったから、息。 ――いき。 父の目が、紙の一行で止まった。 今夜 警戒 灯火管制合図 拍子木 半鐘 (各組) 灯火管制。 警戒。 合図。 言葉が並ぶと、紙
山崎行政書士事務所
2月18日読了時間: 11分


間の字
踏切の向こうから、音が先に来た。 カン、カン、カン。 金属の音。 乾いた音。 乾いた音は、胸の奥の硬いところを起こしやすい。 幹夫は首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 父と並んで、踏切の手前で止まる。 止まると、音が近くなる。 近くなると、肩が上がりやすい。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、父の指が懐へ行って、丸い角の札に触れた。 ふう……。 「……踏切の鐘だ」 父が口の中で言った。 名前を置く。 置けると、音は音のままで座る。 でも鐘は、座らない。 カン、カン、カン。 小刻みに、ずっと続く。 幹夫の胸がぽん、と鳴って、鳴ったまま忙しくなりそうだったから、息を入れた。 ――いき。 そのとき、幹夫は気づいた。 鐘と鐘のあいだに、ほんのちょっと―― 音がないところがある。 カン、……カン、……カン。 ……のところ。 そこだけ、耳が休める。 幹夫は小さく言った。 「……父ちゃん。……ここ」 父が一瞬だけ幹夫を見る
山崎行政書士事務所
2月18日読了時間: 8分

bottom of page
